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第十話 食券

 昼休み、俺と灰崎兄妹はレクリエーションの報酬を受け取るために職員室に来ていた。

 灰崎妹は関係ないが勝手に兄についてきた。本当にただの兄妹か疑わしいほど、ずっと一緒にいるような気がするな。


「……なぁ、灰崎。お前の食券は何だ?」


「これだが」


 灰崎は俺の質問に不思議そうにしながらも食券を見せてくれた。

 ふむ、高級寿司食べ放題か。羨ましいな。


「……そして、これは何だ?」


 俺は受け取った食券を先生に突き付ける。


「何ってレクリエーションの報酬の食券だけど。もしかして先生を食べる食券がほしかったの?」


「これ、キャロライナー・リーパー入りの麻婆豆腐の食券じゃねぇか! こんなもの食べられるわけないだろ!」


 俺はらしくもなく大声でツッコむ。ここは職員室だから周りの先生の視線が痛いが今はどうでもいい。

 何の罰ゲームだよ。これを食べられるのは雨音ぐらいしかいないだろ。


「え~、先生のお気に入りだよ」


 まさか雨音以外にも食べられる奴がいるとは。やっぱり雨音と先生は似ているな。


「じゃあ、先生にあげる。俺は食べられないからな」


「え?」


 俺の言葉が予想外だったのか先生がマヌケな顔をする。そこまで驚くようなことか?


「いや、俺は食べられないから先生にあげるって言ったんだが」


「いやいや、いいよ! それは飛鳥ちゃんがレクリエーションを頑張って手に入れたものだからね! 先生がもらうのは悪いよ!」


 何だ、この焦りようは? もしかして、さっきのは嘘で本当はキャロライナー・リーパー入りの麻婆豆腐なんて食べれないのか? まぁ、食べれる方がおかしいが。

 何か先生の今の様子を見ていると、俺の中の嗜虐心がくすぐられる。


「いやいや、気にしなくて良いですよ。これから先生には色々とお世話になるんですから」


「大丈夫大丈夫! お礼なら飛鳥ちゃんのアレで返してくれれば良いから!」


 まさか、この状況で下ネタを言う余裕があるとは。逆に感心するな。


「……人前で何をしてるんでしょう、この人達は」


 俺達のやり取りを見て灰崎妹が呆れたような声を出す。

 お前のブラコン発言の方がヤバいと思うぞ。いや、ただのブラコンなら問題ないが灰崎妹の場合は近親相姦を匂わせるからな。

 俺達の会話は法律的に問題ないが灰崎妹の発言は法律的にアウトだ。







 俺は食券をもらった後、灰崎兄妹と少し遅めの昼食に来た。今日は欠席者が多くてマトモに授業をしていないから遅れても問題ないだろ。


「そうだ、灰崎妹。これ、いるか?」


 俺は処理に困っていたキャロライナー・リーパー入りの麻婆豆腐の食券を灰崎妹に渡そうとする。雨音がいたら渡しても良いんだが、もう食べ終わっているだろう。


「いりませんよ! 私は辛いのが苦手なんです!」


 相変わらずの大声で否定する灰崎妹。兄は凄くテンションが低いのに元気だな。

 そういや、初日に食堂で会った時、灰崎妹はストロベリーパフェを食べていたような気がする。うろ覚えだが。


「じゃあ、灰崎は?」


「……俺はこれがあるからいらない」


 灰崎は高級寿司食べ放題の食券を見せながら言う。

 くそっ。一位と二位で何でこんなに差があるんだよ。これなら入賞しない方が良かったぜ。


「そうだ。私のことを灰崎妹と呼ぶのはやめてくれませんか?」


 食券を買うために券売機に移動しようとしたところで灰崎妹が言ってきた。

 ちなみに俺も食券を買う。キャロライナー・リーパー入りの麻婆豆腐の食券は後で雨音にあげるか。


「何故だ?」


「いえ、何となく気に入らないので」


 まぁ、確かにあまり嬉しい呼び方じゃないか。


「じゃあ、何て呼べば良いんだ? チビッ子?」


「……その呼び方もやめてください。あの変態と被りますので」


 本当に嫌そうにする灰崎妹。レクリエーションの時に何があったのだろう? まぁ、碌な事なことではないのは確かだが。

 さて、券売機についたが何を買おうか。にしても、雨音だけじゃなくて食堂のメニューも碌なものがないな。

 とりあえず海鮮丼にしよう。さっきの灰崎の高級寿司の食券を見た時から魚を食べたい気分だったし。

 そして灰崎妹も食券を買ったところで食堂のおばさんのところに移動する。今は誰も並んでいないので並ぶ必要がない。


「普通に雫で良いです」


「じゃあ、雫。俺のことは西条で良いぞ」


「普通、そこは下の名前じゃないんですか!?」


 ナイスツッコミ。ここは変態だらけの常識が通じない学校。ツッコミ役の存在は重要だ。まぁ、雫も充分に変態だが。


「飛鳥ちゃん以外なら好きに呼んでくれ」


「じゃあ、西条さんで」


「……そこは下の名前じゃないのか?」


 雫はブラコン以外は普通だと思っていたけど、そうじゃないのかもしれない。

 食堂のおばさんのところについたので、俺達は食券を渡す。


「雫が俺以外と仲良くするのは珍しいな」


「な、何を言っているんですか、お兄様!? 私はお兄様一筋! 他の野郎と仲良くするなんて有り得ません!」


 雫が腕をブンブンと振りながら全力で否定する。別に灰崎は嫉妬的な意味で言ったんじゃないと思うぞ。


「あー! 何で私を放っておいて他の奴と食べているのよ!? 私は昼食も食べすに探していたのに!」


 雨音がいきなり現れると叫んだ。こっちは嫉妬的な意味だな。

 雫は雨音を見た瞬間に灰崎の後ろに隠れた。


「おい、これをやる」


 俺は雨音にキャロライナー・リーパー入りの麻婆豆腐の食券を見せる。


「ん? 何々?」


 雨音が一瞬で詰め寄って俺が見せたものを確認する。もしかして瞬間移動の能力もあるのか?


「これは私の大好物の食券! くれるの!?」


「ああ、やる」


「本当に!?」


 雨音がいつもと違って純粋な笑顔をする。それだけ、これが好きなのか。


「でも、何で持ってるの?」


「レクリエーションの報酬だ。俺は食べれないからやる」


「ふぅん、そうなの。ありがとう」


 にしても、こんな顔も出来るんだな。不覚にもドキッとしてしまった。

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