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✧幕間、日常を辿る。:土御門綾姫。


――

 創葉たちを見送ったあと。誰彼堂の帳場を整えながら、ふと思う。――頼光四天王軍。あやつらが動き始めたとなれば、少しばかり、いや……かなり、ぼくは行く先が怪しくなる。否、ぼくだけで済めばまだ良かろう。だがこの店も……と考えると、如何せんどうしたものか。大江の鬼どもを創葉に預けたのは、悪しへと向かわんだろうか。実際はそれしかやりようがなかったというのもある。

 ぼくが勝手気ままに暴れてしまえばぼくの存在が露見してしまう。ほぼ確実に、土御門の過去の罪やらもが頼光の奴に流れるだろう。ともすればそれを黙認した倉橋家は正義の名の下に裁かれる。……泰嗣に至れば陰陽頭の身でそれを許してたと知られ、四天王軍らは泰嗣を諸悪として粛清を下す。それは、あまりにも避けたい。そんなことは、あってはならぬ。

 ――

 実際のところ、創葉が鬼どもを匿ってくれると言ったときは驚いた。あまりにも無謀で、あまりにも愚直で、そしてあまりにも、痛いほどに……優しかったから。創葉は、何も知らぬ。何も知らぬからこそ、無垢な心を古きもの(ぼくたち)に向けて、与えてくれる。それがどれだけぼくを、皆を救っているか、ぼくたちのほつれてしまったやわな所を縫い止めてくれるかを、あやつは知らぬ。きっと、言うたとて、そんな大層なことはしておらぬと笑うほどに、あどけない。

 もし、その無垢さをつけ込まれ傷つけられてしまえば、ぼくの不手際によって心を痛めてしまったら。

 どうしよう。なんて柄でもないことを、思ってしまう。どうもこうもない、そんなことは分かっている。ぼくの少しばかりしか残らなかった、そして創葉が繕ってくれたものを、無碍にすることは出来ぬと分かっている。

 故に、隣に居ることしか、ぼくにできることは無い。隣に座り、時折支え、見守り、側を歩く。それしか、今のぼくになせることは無い。じゃが、それがどれほどに人の支柱となるかを、ぼくはこのニヶ月ほどで、ひしと身を持って感じた。術にも、策にも、物理的な防壁にも、なる事ができぬとしても、そばに居ることは出来るのだと、己を奮い立たせる。物思いに耽っていては、何も進まぬ。

 明日も、創葉が綴る日々に佇むために、帳場を背にして私室に戻る。

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