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第一三話 二度目の死の訪れ

 俺はさくらの手を掴みながら廊下内をひたすら走る。

 息を切らせながら、あの刃物女が気づかれないように別の教室へと向かった。

 孝は膝に手を置き、桜は胸元に手を当てながら呼吸を整える。


「はぁ、はぁ……ここまでくれば誰も来ねえだろ」

「う、うん……たぶん」


 俺たちは三階の教室にやって来た。

 毛むくじゃらにも遭遇しなかったから、心からほっとしてしまう自分がいる。

 けど、今回は前回と違う。前回のさくらと俺はあの時に二人とも死んでいるのだから。

 月もさっきまで数時間経ったと思うのに微動だにしない。

 まるで、本当の閉鎖空間とやらに俺らは囚われていると錯覚してしまうほどに。


「はぁ……、っ!?」


 (ぬめ)った音がだんだんとこの教室に近づいている。

 前回、俺とさくらを襲った毛むくじゃらだ。

 アイツの出現パターンがまだわかっていないし、色々探るために俺がさくらを一人にさせるというのも愚策だ。俺は意を決し、さくらに問いかける。


「……さくら、我慢はできるか」

「? うん、私は我慢は得意だよ?」


 さくらのその言葉で確認が取れた俺は膝に置いていた手をどける。


「ちょっとこっち来い」

「え!? たかくん!?」


 孝は桜の手を掴んで、抱きしめるという形でロッカーの中に入る。

 桜は慌てた様子で声を荒げた。

 

「た、たかくん!? これって、」

「静かにしろ、やべぇ奴が来そうな音がした。あの刃物女みたいにやばい奴かもしれねえ」

「…………わ、わかった」


 孝は小声で桜に忠告する。

 むさくるしい男と一緒になんて、こいつも嫌だろうけどお互い生きるためだ。

 ぴちゃり、ぴちゃりと水滴が滴り落ちる音が向こうに行くのを感じた。


「…………もう、行ったかな?」

「わからねぇ、もう少しこうしてよう」

「う、うん」

 

 さくらの呼吸が服越しに当たるのを感じる。

 彼女の身体から優しい石鹸みたいな匂いがする。

 ……初恋の相手とは言え、こういう明らかな漫画展開の状況に、少し居心地が悪い。


「さくら、汗臭かったら言えよ」

「……我慢って、そういう意味の我慢だったの?」

「…………ちげぇ、けど」


 しどろもどろになる自分が少し情けない。

 喧嘩慣れしていても、女子に対しての免疫は俺にはなかったらしい。

 毛むくじゃらの存在は、この世界のさくらは知らないんだ。

 だから、俺が気づいて守ってやらねえと意味がねえ。

 コツコツ、と、革靴の音が近づいてくるのを感じる。


「……私たちと同じ子、かな?」

「わからねえ、一旦出てみ――――――」


 硬くて冷たい何かが腹を突き刺すのを感じた。


「っは……っ!」

「さ、く、ら……っ!」


 気が付けばさくらと俺は吐血していた。

 俺とさくらは、冷たい何かが引き抜かれる振動でロッカーから二人仲良く飛び出た。

 さくらを押し潰す形で俺は、こんなことをした人物の顔を見ようと顔を上げる。


「お、ま……え……!!」


 さっきの刃物女が、そこに立っていた。

 ナイフ、というより鉈と言ってもいいだろう。

 滴り落ちる血が、新たな現実を突きつける。

 

『縺輔▲縺輔→豁サ繧薙〒』


 刃物女は理解できない言葉を口にすると、俺の頭を真っ二つにした。

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