二十二話
最近短めです。
22・暴かれた不正②
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神創暦431年08月21日09:06
街に着いたマーリントン子爵一行はまずはこの街の代官の館へと向かう。
先触れを出して居なかった為に迎えは来ては居ない。
街の門番が既に代官代理にこの事を伝えに走って居た。
何故代官代理なのか、それは前の代官がマーリントン子爵の命令で動いて居たからだ。
その為前の代官は冒険者ギルドの手の者で既に拘束中だ。
マーリントン子爵自身は貴族なので一応まだ手出しはしてないが冒険者ギルドがその気になれば人知れず闇に葬る事は容易い。
勿論マーリントン子爵の動きや冒険者ギルドにミディア王国の動きを全てデウスことイニティウム・ビオス・タナトス・フィーニスは全て把握して居た。
既にイニティウムの手の者が深くこの地に根を張り諜報網を張り巡らせていた。
この国の裏社会の上層部は既に隷属魔法と呼ばれる呪術の一つで支配下に置いている。
取り敢えずデウスは今の所事の成り行きを見守る事にしている。
そして現在は貯まったDPの使い道を探りながらあるアイテムも手に入れた。
それはDPリングでこれを装着するとダンジョン内と同じ比率でDPが獲得出来る。
さらにガチャでDP倍化が出てこれの効果はダンジョンのレベルに応じて取得するDPが倍に増える代物だ。
ニヤリとデウスは口の端しを上げながらこれからの事について計画を立てて行く。
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マーリントン子爵が代官の館の前に来ると既に代官代理の男性が待ち構えていた。
「これはマーリントン子爵閣下。ようこそニアサイドの街へ。本日はどの様な御用件でしょうか?」とわざとらしい程の笑みを携えた男が居た。
「ん?お前は誰だガガロを出せ」
ガガロは前の代官の名前だ。
「ガガロ代官殿は現在病で伏せっております。ですので代わりに私めがこのニアサイドの代官代理を任されております」と礼儀正しくお辞儀したが何処か胡散臭い雰囲気を併せ持つ男だとマーリントン子爵は思った。
「ふん、まあ良い。それよりも派遣した討伐隊が戻らず冒険者共は戻ったらそうじゃないか。どう言うことだ?」と苛だたしげに問いかける。
「こんな所では何ですし取り敢えずは中で話をましょう」とさらりと質問をかわして中へと促す。
その態度にまた苛立ったが確かにこんな所で話す内容でもないかと怒りを鎮めて肥えた腹を震わせながら館の中へと案内される。
「それに長旅でお疲れでしょう。湯浴みの準備と軽食を御用意して居ます。話はその後でも構わないでしょう」とこの男に言われてそれもそうかと考え直し湯浴みと軽食を先に済ます事にした。
お付きの騎士達にも宿舎で休むと言いと言付ける。
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神創暦431年08月21日10:35
軽食と一緒に果実酒が出され思いの外美味しくマーリントン子爵は飲みすぎて寝てしまった。
実は果実酒の中には睡眠を促す薬草を煎じて混ぜて居たのだ。
これでこの日一日は起きる事は無いだろう。
マーリントン子爵の騎士達にも同じく食事などに混ぜて出したので今頃は夢の中だろう。
「ふぅ、やっと寝たか。この豚を寝室に運んでおけ」と代官代理の男は下男達に命じる。
この代官代理の男は実は王都から逸早く派遣された騎士で代官代理に成り済まし部隊の到着までの時間稼ぎが任務だ。
現在部隊はここから二週間も先の場所だと先程鳥便からの連絡が来た。
流石に二週間もここで足止めさせるのは困難だとわかってはいるがやれるだけの事はやろうと努力して居る。
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神創暦431年08月22日11:19
翌日昼近くにマーリントン子爵は起きたが2日酔いなのかこの日は頭が痛く考え事が出来なかったので丸一日寝て過ごした。
神創暦431年08月23日07:12
この日は頭痛も治まり体調も良好だったので漸く討伐隊の事について代官代理の男に聞いた。
「確かに冒険者の者達はそれぞれ怪我を負いながらも帰って来ましたが討伐隊の者達はまだ誰も帰って来て居ません。彼らの話によると先ず初めに彼ら冒険者がシルバーファングの捜索に乗り出しその後に討伐隊の面々もノービスの森の中へと入ったそうです」
「それと今回の騒動の中心はシルバーファングでは無く。その上位種のゴールドファングだと生還した冒険者達の調書から判明しました」との代官代理の言葉にマーリントン子爵は驚く。
ならばもしかしたら討伐隊の面々は全滅したのかも知れないと……
「そ、そうだ。後続隊はどうした?」と動揺を必死に抑えてさらなる質問をするが「はて?……後続隊ですか?その様な者達はニアサイドに訪れて居ませんが?」と代官代理の男は応える。
マーリントン子爵は後続隊はニアサイドに寄らずにそのままノービスの森へと行ったのかと勝手に納得し、そしてその後続隊ともしかしたら全滅したのでは?と疑問に思った。
マーリントン子爵は今回の事で受けた損害を頭の中で計算し確実に赤字になると答えをはじき出した。
「冒険者ギルドのギルド長に会ってくる」と代官代理の男に告げ供回りに騎士4名だけを付けて足早に向かう。
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マーリントン子爵は冒険者ギルドの中へと入り受付に「ギルド長に用がある取り次げ」と乱暴に告げる。
受付は澄まし顔で「ギルド長は現在出張中でニアサイドに居らしゃらないので代わりの者が対応致します」と告げて部屋に案内する。
マーリントン子爵は苦虫を噛み潰したような顔をするが此処まで来て帰るのも面倒なので取り敢えず代わりの者と言う奴に会うかと決めてついて行く。
案内された部屋には2人の男性が居た。
1人は見たこともある副ギルド長のユルセンともう1人は壮年だが見事に鍛え抜かれた鋼の肉体を持ち一筋縄ではいかない雰囲気を持つ男だった。
「これはようこそマーリントン子爵閣下。私めがワルセンの代わりを務めますギルド長代理のエイハブです。こちらは副ギルド長のユルセンです。……それで子爵閣下は本日はどの様な御用件で当ギルドにお越しになられたのでしょうか?」と物腰は柔らかそうだがその笑顔に薄ら寒いものを覚えてマーリントン子爵は思わず背筋が震える。
「…あ、ああ。私が派遣した討伐隊がどうなったのか確認したくてな。それで一緒に行った冒険者の者が何人か帰還したと聞いたのでなその者達から話を聞きたくてこちらに寄ったのだ」
「ああ、それでしたら此処に彼らからの調書がありますので特別にお見せ致しますよ」と言いエイハブが一枚の紙をこちらに寄越した。
それを受け取り目を通すと皆最後に見たのは討伐隊の面々がゴールドファングとシルバーファング数頭に魔獣達に襲われている光景と書かれていた。
一通り読み終えたマーリントン子爵は討伐隊の生存が絶望的だと悟りこの補填をどうするか考える。
いきなり税収を上げればこの失態を他のライバル貴族に悟られるだろう。
いや、その前にもう帰還した冒険者の口から各所へと人伝てに噂話などで流れている可能性が高いと判断する。
その後このエイハブと言う男にワルセンが帰って来たら連絡しろと伝え冒険者ギルドを後にして館へと戻る事にした。
時刻も既に昼頃なので戻る途中にあるこの街一番の高級店に寄ってから帰る事にした。
何かこの状況を打開できる策は無いかと思考を巡らせながら店へと入る。
それから数日間の間、代官代理の騎士はあれこれと理由を付けてマーリントン子爵をこの街に留め置いた。
To be continued......




