徒歩1分
テレビを見ていると死亡事故のニュースが流れていた。
ニュースの内容を見る限り、男子高校生がバスの横転事故に巻き込まれてなくなってしまったらしい。
被害男性の名前は「柳田晴」とテロップが入っていた。
自分の名前もハルという名前であるが、自分と同名の人物が亡くなったニュースを見ると少しだけ切なくなるのは俺だけだろうか。
もし、名字まで一緒であったらそれはそれこそなんだか不思議な気持ちだ。
まるで自分が死んだ時の情報を目の前の人が読み上げているような感覚になる。自分はまだ死んでいないのに。
俺は、口を開けて目の前のニュースを刻一刻と伝えるテレビの映像をを食い入るように見つめていたが、ハッとして壁に掛けてある時計に目をやった。
時刻は8時20分。
高校のホームルームは、8時40分。
高校から徒歩1分の1Kのアパートに住んでいるとはいえ、俺は、10分前には家を出ないと気が済まないタイプであった。
クローゼットの中から、ワイシャツと制服を取り出して急いで着替えた。
歯磨きをし、髪型をセットした(若干の天然パーマのため、無造作ヘアーでも、周りの同級生にはセットしたと言い張ることができる)。
玄関でローファーを履き、革製の黒い鞄を右手に持って勢い良く玄関の扉を開けた。
ダッシュをして、学校に行こうかと思ったが、鍵を閉め忘れていることにアパートの階段を降りる直前で気がつき、俺は引き返した。
財布から、家の鍵を取り出して、鍵穴に刺し、クイッとひねると、重たい音を立てて玄関のドアに鍵がかかった。
俺は、ポケットからスマホを取り出して時間を確認した。
8時32分
スマホをポケットにしまい、俺は、アパートの階段を1段とばしで軽快に下りた。
アパートの階段を降りて、左手に高校がある。本当に目の前である。
でかい時計。不思議な形をした校舎。伝統がありそうな雰囲気の校門。この高校を選んだことについて、俺は後悔はしていない。
【この高校に入らなければ俺の人生は一歩も進まない】
中学生の時に考えたことは昨日のことのように思い出す。
俺の人生は、その一歩を踏み出したのだろうか?
正直なところまだわからない。入学して1ヶ月だ。友達も出来たようなできていないような感じであるし。
校門をくぐってからしばらくして、俺は後ろを振りかえった。
目の前の大通りを、車が行き交っていた。
俺の人生は、あの大きな通りを走る車の集団の内の、車みたいなものなんだろうか。




