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ささっと

 試験が終わった後に鮮明に内容を覚えているものではない。

 しかし、余裕で終わった場合は鮮明に覚えているものである。

 それでは、僕はというと、今回ばかりは覚えていなかった。3級の時は結構覚えていたのだが、今回はなかなか手ごわく、内容が一部欠如していた。そして、簿記3級の時と比べると、1年の秋に2級を受けているのは僕ら簿記部だけであった。簿記部に入った頃によってちょっとばかりの優越感を味わうことができたのだった(しかし、そのちょっとした優越感と引き換えに支払った時間は決してコスパの良いものであるとは言い難かったが)

 進に簿記2級の試験が終わった後に感想を聞いてみた。

「まぁ、難しかった。今回は難しかった。3級とは違うね」

 進もそのようなリアクションであったので、僕は少し安心した。僕だけできていなかった時のことを考えると僕は不安だったからだ。

「でもまぁ、受かったかな。70点前後で」

 不安の中にも、少し垣間見える余裕を、彼は僕にアピールしてきた。しかし、僕も負けじと「まぁ合格はしたかな」と負けず嫌いを発揮した。


 もはや、僕らは2級にも落ちなかった。確かに、成績としては3級よりも落ちたが、全員70点を少々超える点数で合格できたのだった。

 簿記2級という科目は、実は難しくなかった。先生に聞いた話だが、有名大学の経済学部などでは、入学前の2週間で簿記2級を取る学校もあるほどである。受ける前から、合格率を意識して受験していては多分受からない。結局合格できるか否かは「自分が合格点を超える」に尽きるのだ。自分が超えるか否かはゼロかイチでしかない。


 先生は、珍しく部室にケーキを買って持ってきてくれた。僕のクラスメイトの両親が自営でやっているケーキ屋のケーキだった。イチゴは大きく、生クリームがとても甘いと近所では評判のケーキだ。

「んまいっ!んまいっ!」

 奇声を発しながら橋本は食べ続けた。なんだか、橋本の印象がはじめにあった頃からだいぶ変わったように思えた。最初は、どこかのお嬢様風な感じだったが、気づいたらその辺のおてんば娘であった。これも、高校デビューなのか。

 鮎川は、生クリームが苦手なのか、ケーキの上にのったイチゴを口の中でゆっくり頬張っていた。橋本は、鮎川が生クリームが苦手としるやいなや、音速の速さでケーキを奪って口の中に放り込みはじめた。鮎川は両手をあげて、「やれやれ」と呆れていた。

 また、桜の食べ方も面白かった。ケーキのまわりについている透明なプラについたケーキのクリームを丁寧に丁寧にフォークにつけて食べていた。「プラスチックのところについているクリームが一番美味しい理論って知りませんか」と桜は不思議そうな顔で僕を見つめていた。もちろん、僕は知らない。

 簿記2級を合格してわかったのは、やはり御多分に洩れず女子たちはケーキが好きだということだ。僕らの能力に上限などないということよりも、ケーキのインパクトが勝ってしまうあたりが、僕ら簿記部の特徴といえよう。それで、いいのかと尋ねてもきっと、誰も答えは語るまい。

 僕は、ゆっくりとイチゴのショートケーキをフォークで一口サイズに切り、一刺しして、口の中に放り込んだ。口の中に優しい甘さが広がった。勉強頑張ってよかった。

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