本気のJK
口内全体に広がるのは、チョココーティングとバニラの絶妙な味わい。だが美味さに感動するより先に、前歯の裏で知覚過敏が反応する!
「んぐぐぉっ!? ――かぁぁぁぁ~冷たッ!! オイ! あぶねぇだろいきなりそれはやめろって!」
「ゴメンゴメーンっ! でもよかったね? わ・り・と美人なJKと間接キスできたじゃーん。今夜のオカズにしてもいーよ♥」
「お前なぁ……はぁ冷たかった……」
「アハハハ! あたしも冷たかったしおあいこじゃんね!」
「メイのはフツーに溶けて落ちただけの自業自得ミスだろ! 俺は冷たくさせられたの! おあいこじゃない!」
アイスの棒を取り出して抗議する俺だったが、メイはひたすらおかしそうに笑うだけであった。
それから辿り着いた橋の前でメイが振り返る。スカートのプリーツが綺麗に揺れた。
「もうここでいーよっ。ここからならだいぶ近いしさ」
「おう、そうか。気をつけて帰れよ」
「ハーイ。おにーさんもね! あ、この服どうしよっか? 返した方がい?」
「いや別にいいって。そんくらいやるよ」
「そう? んー、まぁ返したらおにーさんのオカズにされちゃうだろうしそうしよっかな?」
「いいからはよ帰れや!」
ケラケラとからかうように笑い、手を振りながら帰っていくメイ。
そんな彼女の後ろ姿を見送っていたら……自然と声が出ていた。
「──メイ!」
「んーっ?」
「俺、また一からやってくわ! バイトでもしながら仕事探してさー!」
「おー! その意気じゃーん! そーそーがんばれー!」
「おかげで元気出たわ! 特にメシ! 美味かったよ! ありがとな!」
俺も軽く手を振り返す。
きっと、もうメイと会うことはないだろう。
偶然の出会い。
たった一晩、数時間だけの、社会人と女子高校生との妙な関係もこれで終わりだ。
そんなことを思っていたら――メイはなぜかまたぴたりと足を止め、こっちに駆け足で戻ってきた。
「おおっ? 今度はなんだよ? 忘れもんでもしたか?」
「やっ、そーじゃなくて。あーでもまぁ忘れ物といえばそうかも」
メイは呼吸を整えると、俺の顔を見上げてこう言った。
「ねっ。あたし、ごはんつくりにいったげよっか?」
「……は?」
呆然と聞き返す俺。
するとメイはちょっとばかり照れたようにはにかんで言う。
「放課後とかさ。今日みたいにヒマなとき作りにいってあげてもいいかなーって。てゆーか! あそこまで事情知っちゃったら放っとけないっていうか? おにーさん、割とメンタル心配げ。あんな汚い部屋にいたら運気も下がりそうじゃん。あとあとっ、美味しいもの食べないとゼッタイダメ! いろいろ上手くいかないのってそのせいかもよ? 洗濯物とかもそのままだしさー、あたしあーゆーのキライなんだよね。こうみえてキレイ好きですしー」
毛先を指でくるくるさせながら後半はちょっぴり早口に、そしてどこか気恥ずかしそうに。
――社会人失格男と、現役女子高校生ギャル。
普通なら、ここはハイハイ子供が何言ってんだと突っ返すところだろう。実際、俺はそうするつもりでいた。
いたはずなのに。
「――んじゃ、ヒマなときにでもメシ作りに来てくれよ」
俺の口から出たのは、そんな言葉だった。
何を言ってんだと自分でも思う。
冗談と受け取られても構わない。
でも、きっとメイの発言は冗談ではなかった。だからなのか、自然とそんな風に返していた。
するとメイはちょっとびっくりしたような顔をして――それから、彼女らしく朗らかに笑った。
「オッケー! じゃとりま連絡先交換しとこ! で、食べたいものとかあったら教えて! 食材は……うーん忙しかったらあたしが買ってってあげてもいーけど。あとはあたしの腕に任せなさい☆」
腕まくりをしてウィンクするメイに、俺も思わず笑い出す。本気じゃんこいつ。
てなわけで、その場で連絡先を交換することになった俺たち。
スマホの画面に映る『朝比奈 愛生』の名前を見つめ、メイってこういう漢字なのかとか思っていたら、メイが「おにーさんのミナトってこーゆー漢字なんだ」とつぶやいた。考えることは同じだな。
メイがスマホをしまって言う。
「ね、おにーさん」
「ん?」
「あっちで二人一緒に海に落ちたときさ、おにーさん、あたしのことずっと離さないでいてくれてたじゃん。それに、勘違いだって笑ってた」
「ああ……それがなんだよ?」
「んー、や、だからさ~」
メイはなんだか言いづらそうにまた毛先を指で弄っていたが……いきなり両手で俺の頬をパンッと挟んできた!
「ふごっ!? お、おいなんだよ!?」
驚きと同時に戸惑っていると、メイはちょっと真剣な顔で俺を見上げる。
「あたし、けっこーちゃんと人は選んでるってことっ! じゃ、じゃーねバイバイ!」
そして俺と目を合わせることなく、メイは走り去っていく。
俺は呆然とその後ろ姿を見送り――そして笑った。
──俺とメイ。
一晩だけのはずだったおかしな二人の関係は、もう少しだけ続くようだった。
ここまでで一章が終了となります。
本作をお読みくださりありがとうございました!
今後もイチャでラブな展開をパワーアップして参りたいと思いますので、
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次回、メイちゃんがデリバリーを……!?
よろしくお願いします!




