「おにーさんの、えっち♥」
「……よっしゃ、再挑戦だ!」
「わっ!? えっ急になにっ?」
俺はメイのサラダ皿に手を伸ばすと、トマトを一切れだけ掴みその半分くらいを囓ってみた。メイがキョトンとした顔でパチパチをまばたきしながら俺を見ている。
「………………ずま゙ん。やっばむ゙り……」
思わず吐きそうになってしまい、慌ててカレーを口にぶっ込んで誤魔化す俺。おかげでなんとか吐き出さずに呑み込むことができた。はぁはぁ……やっぱキツイもんはキツイ……!
するとメイは、そんな俺を見て思いきり笑った。
「──ぷっ。アハハハハ! びっくりしたけどエライじゃんおにーさんっ! けどムリしなくていーって。ほらもー、口にトマトの汁とかカレーとかついてるから」
「はぁ、はぁ……ん? どこだよ?」
「ここ、ここ。いいよ、ほら拭いたげるから動かないでー」
テーブル向こうのメイが軽くこちらに身を乗り出し、ティッシュで俺の頬の辺りを拭いてくれる。
「…………!」
無言のまま固まってしまう俺。
こちらの視線は自然とメイの胸元に──ブラウスの隙間へと向いてしまっていた!
「──ハイ、キレイになりましたっ♪ ん? おにーさんどして変な方見てるの? それになんか顔赤くない?」
「い、いや別に? そ、それよりさっさと食っちまおうぜ!」
「? ……ああ~そゆこと?」
下を向いて得心したような笑みを浮かべるメイ。やべぇバレたと思わずドキリとする俺!
メイは小悪魔モードのジト目になってこちらを見つめると、微笑を浮かべながらブラウスの隙間――開いていた第一ボタンの辺りを両手で抑えてささやく。
「おにーさんの、えっち♥」
完全にバレていた。
しかしすぐに取り繕う俺。
「み、見たくて見たわけじぇねぇぞ! 不可抗力だ不可抗力! たまたまそういう体勢になっただけだろ!」
「ふーん。じゃ見たくないわけ?」
「ぐっ!」
「アハハ反応素直すぎじゃん! はーおにーさんってめちゃくちゃわかりやすいから面白いんだけど。ま、おにーさんのエプロンだからおっきいし、胸元開いちゃうからしょうがないでしょ」
「だ、だよな。仕方ないよな!」
「で? JKのナマ谷間覗けて嬉しかった?」
「はぁ覗いてねぇし! 嬉しくねぇし!」
「素直に言えよ~顔赤いぞ~? このムッツリスケベ~♪」
「ぐぬぬ……!」
「アハハハなにも言えなくなってんじゃん! テキトーに誤魔化せばいいのにそこで認めちゃうのがおにーさんってカンジ。ホントからかいがいあるよね~♪」
もはやこれ以上の抗議は無意味であり、見てしまった時点で男の弱みであると心外な評価を甘んじて受け入れることにした俺。ちくしょう。メイの方はまったく気にしないで笑ってるもんだから俺だけ恥ずかしくなってくるじゃねぇか!
そこで存分に笑い終えたメイがちょいちょいと手招きする。
「おにーさん、おにーさん」
「ん? な、なんだよ」
「先に言っとくけど、誰にでもするわけじゃないかんね?」
「は……?」
意味がわからないが、少し警戒気味に顔を近づけた俺にメイがその唇を寄せてささやくように言う。
「ニガテなトマト食べられたご褒美、ね♪」
メイは胸元を隠していた両手を一瞬だけパッと外し、ついそこへ視線が向いてしまった俺の反応を見てまたおかしそうに笑った。
こうしてだいぶ溶け出した二本のペットボトルが健気に汗をかきながら役目を果たす中、俺たち二人の夕食タイムは過ぎていったのだった。




