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メイちゃん特製、手作りコロッケカレー

 外がようやく暗くなってきた頃に炊飯器のご飯が炊きあがり、しっかりと煮込んだ鍋のカレーも無事に完成。相性抜群が約束されている二つの香りだけで食欲がむくむく膨れあがってきた。


 そこでエプロン姿のメイが台所から皿を運んできてくれる。


「おまた~。メイちゃん特製、手作りコロッケカレーでっす!」

「うおお!」


 ついテンションが上がってしまう俺系男子。

 食卓に置かれた皿にはツヤツヤなごはんと黄金色のカレーが綺麗なバランスで盛りつけられ、さらに隣の小皿には大きめなコロッケが一つドーンと乗っかっている。マジか!


「さっきからなんか揚げてるなとは思ったけど、まさかコロッケだったとは……!」

「男の子はこーゆーの好きっしょ? 唐揚げと迷ったんだけどねー。あ、ちゃんとサラダも食べてよね。先にちょい食べとくと健康にいいらしいよ? それと飲み物どする? お水? 牛乳? それともコーラ?」

「ここは水で!」

「りょ~」


 手際よく二人分の水を注ぐメイ。かくして準備は整った。


「「いただきます!」」


 二人向かい合い、手を合わせて声も揃った。

 スプーンでカレーをすくっていただく。その一口目は圧巻だった。

 少し硬めに炊いたごはんと軽くスパイスの利いたカレーは完璧な調和を果たし、ゴロゴロ入った牛肉や野菜たちも見事にマッチしていて、家庭的でありながらも本格的な味には最高の一言しかない。そして揚げたてコロッケのサクサクな食感やホクホク感はそれだけでも十分に美味いのに、カレーと合わさればなお美味い。すべてを水で流し込めば体が歓喜に心が蘇る。美味すぎる。感動した。


「どう? カレーもコロッケもイケるっしょ?」

「イケるイケる! 最アンド高!」

「ぷっいまどきそんなこと言わないって! ──ん~♪ 我ながら天才的美味しさ! かんぺき~!」

「んぐんぐ……カレーってお手軽料理の代名詞みたいに言われるけどさ、ぜってー全然違うよな。もし俺が作ってもこんな美味くならねぇもん。やらなくてもわかる!」

「アハハなにそれ! まっあたしのはおばーちゃん直伝のレシピと隠し味があっからね。そんじょそこらのお店にも負けないよ~ん」

「へぇ~なんだよ隠し味って?」

「ヒミツだから隠し味なんじゃん? ──アレ? ってかおにーさん、ひょっとしてトマトニガテ?」

「うっ」


 つい声がもれてしまう俺。

 俺のサラダ皿には、メイが買ってきてくれた鮮やかに赤いトマトがくし切りでのっていたがまだ手をつけていない。


 メイがジト目でこっちを見てくる。


「『うっ』ってなによ『うっ』って。図星か~??」

「……わ、悪い。正直苦手なんだ。特に生のヤツは」

「アハハやっぱ? いるよねそゆひと! も~ニガテなのあるなら早く言いなよ。代わりに食べたげる」


 メイは手を伸ばして俺のトマトたちをひょいとつまんで自分のサラダ皿に載せると、そのまま1つをぱくっと口に放った。


「んん~新鮮♪ ──ん? なにおにーさん? そんな申し訳なさそうな顔しなくていいって」

「いやぁせっかく作ってくれたもんを残すのは悪いなと。他人が食ってるの見ると美味そうに見えるんだけどなぁ……子供の頃から何度試してもダメなんだよな」

「……おにーさんさぁ、やっぱ真面目だね♪」


 メイはなぜかちょっと嬉しそうな顔をすると、水をくいっと飲んでからまたカレーに手をつけて語り出した。


「いきなりだけど小学生の頃さー、給食を残して掃除の時間まで一人で座らされてるクラスメイトがいたんだけどさ」

「うわっあったなそういうの懐かしっ。てかメイの頃にもそんなのあったのかよ。今時ハラスメントで問題になりそうじゃね?」

「ウチのガッコ割と厳しめだったからねー。で、その子はセンセから『好き嫌いするんじゃない』って怒られて、食べるまで許してもらえないからって、とうとうムリしちゃってね。そしたら──あーごはん中に悪いんだけど、すぐ戻しちゃってさ。大泣きしちゃったの」

「ああ……それは可哀想だな……」

「うん。そりゃ食べ物を残すのはよくないかもしんないけどさ、好きとか嫌いとかじゃなくて、どうしても体が受け付けないって場合もあんじゃん? なのに強引に食べさせる方がずっとよくないと思うようになってさ。あのとき、あたしが代わりに食べてあげればよかったなってずっと後悔してんだよね」

「……メイ」

「だから自分で料理するようになってさ、食べてくれる人にイヤな思いさせたくないの。ごはんって幸せなもんなんだから、みんな笑ってられるほうがいいに決まってるじゃん?」


 そう言ってカレーを頬張り、幸せそうな顔をするメイ。

 

 おいおいなんだよそれ。お前の方がずっと真面目じゃんか。


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