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好感度が見えても上手くいくとは限らない  作者: かませ犬


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18/25

17.それはそれとして

「具体的にはどのような?」


『家の人に頼んで、ウイングさんの住んでる場所とか探して貰って⋯⋯あの隠し撮り的な⋯⋯』


「なるほど⋯⋯」


 思っていたよりガッツリ、ストーカーをしていた。ネットストーカーとかそういうレベルではない。


 正直、頭の痛い問題だ。


 俺はなんて返すのが正解なのだろうか?現状、実害という実害は出ていない。


 よく聞くストーカー被害で言えば家がバレてからの、住居に侵入されたり待ち伏せにあったり等があるが、今のところされた形跡はない。


 猫大福さんの言葉を信じるなら俺の事を隠し撮りしたくらいだろう。それにしたっていつ隠し撮りをした?


 俺が外に出たのはつい最近だ。三年間ずっと引きこもっていたからな。隠し撮りするチャンスはかなり限られていた筈だ。


 可能性があるとすれば、窓を開けて外を見たり、妹から頼まれて洗濯物を取り込んだり⋯⋯何らかの用で部屋を短時間出た時くらいか?


 それこそ、ずっと張り込んでいないと不可能だ。猫大福さんは一日の大半を俺と遊んでいたので彼女が盗撮するのはまず不可能。


 となると、俺の家を探し出したように猫大福さんの家の人間が近くに張り込んで隠し撮りをした。週刊誌に張りこまれる芸能人もこんな気分なんだろうか?


「それは分かったんですけど、どうして?」


 肝心の動機だが、聞かなくても思い当たる節はある。自惚れでなければ、俺は猫大福さんに好意を持たれている。


 とはいえ、俺と猫大福さんはゲーム───言ってしまえばネットの繋がりしかない。仲良くなるにつれて、どんな人か気になったとかそんな感じではないだろうか?


 ネットの友達に対して少しでも好意を持てばどんな人か気になるのは自然だ。俺も猫大福さんと同じように相手の事が気になりはする。


 けど、実際に会おうという気はないし写真交換となると⋯⋯抵抗がある。そのため、気にはなるけど無理して知る必要はないというのが、俺の結論だ。


 猫大福さんの場合は俺と違って財力があった。おそらく探偵か何かを雇って俺の事を調べた上で、盗撮したんだと思う。


 彼女を動かしたのが俺に対する純粋な好意か、好奇心か判断は出来ないが⋯⋯正直やりすぎではある。


 猫大福さんと同じくらいお金を持っていたとしても、俺ならやらない。それくらいの倫理観は持っている。


『ウイングさんと仲良くなるにつれて⋯⋯どんな人かなって気になって』


「それは、俺も同じなんで気持ちは理解できますけど⋯⋯」


 とはいえ!人の住所を探し出したり隠し撮りをするのは流石にやりすぎではある。その事を告げると分かりやすく落ち込んでいる。


『好奇心に負けたボクのせいです、すみません』


 ゴンっと大きな音がした。


 謝罪の言葉と共に勢いよく頭を下げた結果、机に頭をぶつけた音だと推測する。


 これが形だけの謝罪でないのであれば、反省しているとは思うのだが⋯⋯。とはいえ、ストーカーなんかされた事ないからな。どう判断したらいいか分からないな。


 他の人に相談しようにも、ストーカーの被害に合うの女性が多数だ。男性がストーカー被害に合うのは稀で、提示版やSNSで相談している男性を見た事はあるが⋯⋯同性から羨ましいとか、実にならない反応をされていたな。


 これが全くの赤の他人なら対処は簡単だな。警察に被害届を出して、毅然とした態度で拒絶する。


 けど、今回の場合は親交の深い猫大福さんだ。人の家を調べたり隠し撮りをしていたのは、いくら猫大福さんとはいえいい気分はしない。


 猫大福さんを拒絶する事は簡単だ。ストーカーされて気分が悪いのでもうやり取りはしませんと言えばいい。


 けどなぁ⋯⋯。


 いや、こうして迷っているのが答えじゃないか?


 猫大福さんにストーカーをされたと分かっても怒りが込み上げてこなかったし、嫌な気持ちはあるが関係性を断ちなくない。


 だって、猫大福さんは友達だから。


 今の俺には猫大福とレオさんくらいしか友達がいない。たった二人の友達。そのうちの一人を失うのは嫌だ。


 レオさんも気まずいだろうしな。


 俺が折れたら、全て丸く収まる。


「⋯⋯⋯⋯」


 とはいえだ!猫大福さんも反省しているようだし、釘を刺す意味合いで叱ってはおこう。今後、同じ事をしないようにだ。


「猫大福さんが反省しているのはわかりました」


『⋯⋯うん』


「一応聞きますけど、俺の事を調べたり、隠し撮りをする為に張りこませたりなんて事を今もしていますか?」


『いや、今はしてないよ。満足したから撤収させてる。⋯⋯お金もかかるし』


 それが事実なら一安心かな? どこから撮ったか、どこに張り込んでいたかも俺に分からないが人にずっと見られているのは、監視されているような感じがして不快感がある。


 ないと分かっただけで十分だな。今の言葉が嘘じゃないかと疑い出すとキリがないので本当だと信じる事にする。


「今はしていない⋯⋯けど、やった事が許される訳ではないのは分かりますよね」


『うん、⋯⋯ごめんなさい。いや、申し訳ございませんでした!』


 また、ゴンっと先程より大きな音がした。


「結構大きな音しましたけど、大丈夫ですか?」


 流石に心配になって声をかけてしまった。


『こんなボクにも⋯⋯まだ優しくしてくれる。ウイングさん⋯⋯⋯⋯すき』


「なんて言いました?」


『大丈夫だよって!』


「それなら良かったです」


 声自体はかなり小さかったから、聞こえるようには言っていないと思うが⋯⋯猫大福さんが使ってるマイクの性能がいいせいで拾っているんだよな。


 猫大福さんが俺に好意を持ってくれているのは確定。これは⋯⋯まぁ、素直に嬉しい。恋愛的な意味で猫大福さんとどうこうしたいとかはないんだが⋯⋯嫌われるよりはずっといいから⋯⋯うん。


 未だに幼なじみの事は引きずってる自覚はある。


 あれはキツかった。だから女性に好意を寄せられるというのは、満更もない気分だ。


 男というのは単純なもので、女性から好意を向けられるだけで嬉しかったりはする。


「話を戻しますね。これが知らない人だったら、俺は許していなかったと思います。警察に届出を出して対処して貰う、そういう選択を取ります」


『うん⋯⋯』


「猫大福さんとはなんだかんだ半年くらい仲良くしていますからね⋯⋯正直、猫大福さん以上に仲の良い友達はいないです。こんな事で関係を断ちたくない。だから約束してくれますか?」


『約束?』


 俺も猫大福さんとは友達のままでいたい。けど、しっかり釘を刺しておかないといけない。許してくれた、なんて間違っても思わないように。


 ストーカーの心理までは分からないけど、一度許すと行為はエスカレートするって昔読んだネットの記事に書いてあった。その記事によると、最終的にストーカー被害にあっていた女性は住居に侵入され襲われたそうだ。


 猫大福さんが、同じようなるとは思いたくないけど⋯⋯念の為に、しっかりと釘を刺す。どういう言葉選びがいいか悩んではいるけど、俺の事が好きなら⋯⋯。


「猫大福さんが俺の事が気になるのは分かりますど、勝手に色々調べられたり⋯⋯隠し撮りされていい気はしません」


『はい』


「また、同じことをされたり⋯⋯それ以上の事をされたら俺は⋯⋯()()()()()()()()()()()()()()()()


『っ───!』


 好きな人に嫌われるのが一番キツイのは俺自身が良く分かっている。


 俺の場合はどうしようもなかったが、猫大福さんにはこれ以上ストーカー行為をしなければ良いだけだ。難しくない、筈。


「だから約束してください。もう、二度としないって。俺も猫大福さんの事を嫌いになりたくないので」


 重要なのはできるだけ悲しそうに言う事だ。正直、演技力があるとは言えないのだが今の流れなら十分に効力を発揮するだろう。


『はい!ここに約束します!ボクは!もう二度とウイングさんにストーカー行為をしません!』


 力強い宣言。その約束が守られる事を願おう。


「約束しましたからね」


『うん。もう二度としない。ウイングさんに嫌われたら、ボク⋯⋯もう生きていけないから』


 最後の言葉は聞かなかった事にしたい。思っていたより猫大福さんからの好意が重たいか、これは⋯⋯。


 うん、いったん聞かなかった事にしよう。


「それじゃあ改めて、これからも()()()()()よろしくお願いします」


『うん!よろしくねウイングさん!』











 ───その日の夜の事だ。


 猫大福さんとレオさんの二人と合流する前に飲み物を準備しようと1階に降りた際、リビングでテレビを見ていた飛鳥に呼ばれた。


「お兄ちゃんこれ見て」


「うん?」


 飛鳥が指さすテレビを見ると高校生が暴漢に襲われて意識不明だと、アナウンサーが読み上げていた。


「近いな⋯⋯」


「怖いねー」


 犯行現場は家から10kmも離れていない。


 ニュースによると高校生が部活終わりに一人で帰宅している最中に襲われた可能性が高いようだ。


 近くで起きた事件なので気が気ではない。


「え?」


「どうしたの、お兄ちゃん?」


 テレビの画面に被害にあった高校生の名前が表示されていた。




 ───佐々木 純平。




 その名前は忘れもしない。


 俺の元クラスメイトであり、ありもしない噂を広げて中学での俺の居場所を奪った張本人。スポーツ推薦で地元の高校に進んだとは聞いていたが、その帰りにどうやら佐々木は暴漢に襲われたらしい。


「佐々木が⋯⋯」


 ざまぁみろと、心中で思ってしまった自分の浅はかさが嫌になった。

 

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