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第17話_大臣の言い分です

年内になんとか投稿できました。

「流石に押収は困ります。あと、どこが違法なのか説明していただけますか?」


シュウが前に出ると外からやってきた職人たちの視線が一斉に向いた。

しかし今更その程度で怯むシュウではないのでその目は大臣にのみ向けられている。


「どこが違法か、ですか。それはこれから調べるのですよ。だから押収するのです。ところで貴方はこの工場とどういった関係なのでしょうか?」

「こいつは客だ。この船の依頼を持ってきた、な」


シュウが答える代わりにダンが答えた。

その瞬間シュウは大臣の目が怪しい光を増したような気がする。


「ほう・・・この船を、ですか」

「えぇ、そうです。ちなみに材料もある程度は自分たちで調達したものです」


シュウの言うとおり現在建造中の船で多く使われている木材は自分たちで別に誰が管理しているわけでもない森から採ってきた『神樹』であるし、配線のため用いている『魔鋼』の元々の鉄はこの工場の片隅でホコリを被っていた破損した武器や金具といった不用品である。

それを格安ではあるがシュウが買い取り魔鋼として生成したものなのでこれも違法に入手したのかといいがかりをつけられる言われもない。

さらにこの船の心臓部に取り付け予定の魔石は武術大会の商品であり、これも入手・使用については問題が思いつかない。

といったことを丁寧に説明したのだが大臣の目から怪しい光が消えるどころかますます増しているような気がする。


「ふむ。つまりあなた方は自分たちで材料を合法的に調達し加工しているのだから違法性に問われることはない、と」

「そうです」

「なるほどなるほど。これはその魔石も押収しないといけないですねぇ」

「はぁ!?」


唐突にも程がある大臣の言葉に思わず絶句するシュウ。

いや、シュウだけでなく工場関係者は全員自分の耳を疑っている。

ほんの少しの沈黙の後、なんとか回復したシュウはなるべく平静を装いつつ会話を続ける。


「何故魔石まで?これは武術大会の商品であり、完全のこの国とは関係ないものですよね?」


神樹と魔鋼については元々はこの国に関係有るところから調達しているので言いがかりをつけられるのは意味がわからないがなんとか関連付けはできる。

しかし魔石に関しては完全にこの国とは無関係のはずである。


「だってそれがないとこの船は完成しないのでしょう?だから押収する必要があるのですよ」


それに対して大臣の言葉は正しいものであり意味のわからないものであった。

船の完成に必要なのはその通りだが、押収される理由にはならない。


「そもそも何故押収されなければならないのでしょうか?この国では正式な理由もなく工場から製品を押収するのが当たり前なのですか?」


シュウの発言は大臣のみに向けられたものではなく、この場に集った職人たちに向けられたものでもあった。

その質問に対し明確な回答は帰ってこなかったが、外から来た職人はスッと目をそらした。

どうやらこの場に集ってはいても大臣の言葉をそのまま認めるには無理がある、という自覚は多少なりともあるらしい。

それに対しダンは回答を声に出した。


「そんなことが横行するのならワシらはこの国から出ておる」


その発言を面白くないように睨んだ大臣だが切り替えも早く視線をシュウに戻した。

シュウもそれに合わせて目を合わせ更に質問を続ける。


「これがこの国の当たり前ではないのであればどうしてこの船を押収しようと言うのでしょう?」

「はぁ、これほどまでに親切に説明しているというのにまだ分からないのですか」


理解の遅さに呆れたように大臣が首を左右に振る。

断じて分かりやすくも、そもそもまともな説明さえされていないという認識のシュウ達はどうしたものかと思い始めている。


「では正確に申しましょう。あなた方には国家反逆罪の疑い、いえもう確定しています」

「はぁ!?」


突然の宣告に今度こそ絶句したまま固まる一同。

それに気を良くしたのか大臣が得意気に続ける。


「いいですか?この国にとって技術とは宝です。その宝を独占し秘匿することは国の財産を奪っているといっても過言ではないでしょう?ですからあなた方を拘束し、この船を押収するのですよ」


船の押収に加えいつの間にか拘束されることまで決まっていたらしい。

流石に意識を強制再起動させたシュウ。


「独占って・・・。別に順番になら見学も受け入れますし、そもそも自分たちは他の工場にもこの仕事を頼むため話を持って行っています。それでその全てに断られたのでここに依頼しているだけであって後ろめたいことは一切ないですよ!?」

「あぁ、それも調べは付いていますよ。あなた方は低ランクの冒険者らしいじゃないですか。そんな者の話をまともに取り合っていては仕事が進まないですからね。だから断るのは当然であって依頼を受けたこの工場は違法性が高まるのです」


本格的に会話が続かなくなってきた。

どうあっても大臣はこちらに非を押し付ける気である。


「いいですか?この国の制度には一切の非がありません。そしてあなた方は制度を無視して依頼を出した。それも罪状に加えなければなりませんね」

「黙って聞いていればぬけぬけと・・・。!あの制度は客のランクで仕事を受けるかどうかを決めるんじゃなく仕事の難易度で決めるはずだぞ!」


我慢ならんとばかりにダンが声を上げるが大臣はダンを一瞥した後ため息を付きつつ答える。


「だからそこが問題なのです。このような仕事は本来一工場のみで行っていいものではないはずです」

「他の工場が受けなかったのだから仕方がないだろう!」

「それは先に説明したとおりこの方達が低ランク冒険者であることを理由として上げたはずですが?」


どうやら自己完結しているらしい大臣の思考回路は外部からの批判を一切受付けないようだ。

そもそもシュウたちのことを低ランク冒険者と言っているが冒険者ランクDというのはそこまで低いものではない。

冒険者の間では一人前として認められるランクではあるし、あくまで冒険者としての仕事の受注可否を判断する指標なので職人への依頼は全くの因果関係がない。

あくまで「大臣の中では」という注釈がつく。

こんなに自分に都合のいいようにしか理解しようとしないものが大臣という要職についていることには疑問しか残らない。

が、今はそんなことは関係なく事態はさらなる展開を見せる。


「まったく、ここまで話が通じないとは」


やれやれと首を振りつつ大臣が言葉を吐き出す。

どっちが、と言いたい一行である。

ちなみに大臣が引き連れてきたらしい職人たちも大臣の発言により自分たちが悪者になりつつあることを理解し始めており、大臣を擁護するような意見を言うものはいない。

だからといってシュウたちを擁護するということもしていないのだが。

しょうがありませんね、と呟きつつ大臣はスッと右手を上げた。

すると今まで職人の後ろに居たらしい兵士らしい者たちが武器を構えつつ前に出てきた。

流石に目の前で武器が抜かれてはダンの工場前に集まっていた職人たちも数歩後ろに下がる。


「兵士たちよ、この者たちを捉えなさい。そこに冒険者もいるが低ランクだ。この人数にはどうすることもできん」


その言葉をきっかけに兵士たちがジリジリと前に出てきた。

ダン達職人は汗を流しながら現状の打破を考えている。

一方のシュウ達はというと。


「これはマズイですね」

「いや、ティアナさん。言葉の割にあわててる様子が無いんすけど?」

「フィアよ、それはお主も同じであろう」

「流石に三桁以上になるとシュウさんのほんの少し苦戦するかもしれませんけどねぇ」

「負ける要素がない」


女性陣は多少警戒しつつも取り乱してはいない。

そもそも自分たちはランクよりはるかに上の実力を有している自覚があるし、リーダーたる人物はランク等関係なしにたかが兵士に遅れを取るようなことは考えにくい。

しかし仮に自分たちの誰かが人質にでもされようものならどうなるかはわからないので油断はしないでおく。

そしてそのシュウであるが頭のなかでは目まぐるしく考えをまとめている最中である。


(おとなしく捕まるっていう選択肢はない。

実力行使ならまずこの人数相手に負けはない。

かといって下手に手を出せば相手の言うことの信憑性が上がる・・・。

手を出されたら反撃しないわけにはいかないけど反撃すると自分たちの首をしめるなぁ。

どうしようか・・・)


ほぼ確実に勝てるが手を出すにはためらわれるというこの世界に来てから初めての状況にシュウの考えは無限ループを続けるのであった。


この投稿で今年の更新は最後になります。

予定では年内で完結させる予定でしたが思ったより筆が進まず完結まではたどり着けませんでした。

飛行可能な移動手段というゲームで言えばラスト近くに入手するものの話ですのでこの物語も実はラストが近かったりします。(あと数話で終わる、ということではありませんが)


最後に、今年の春から投稿を始めたこの作品をここまでお読み下さりありがとうございます。

来年も引き続きよろしくお願いします。

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