第15話_神樹を加工します
大変長らくお待たせしました。
更新します。
「おう、帰ってきたか。・・・ん?一人増えているが・・・まあいい。それで神樹はどこだ?」
無事街に帰り着き、ダンの工場へとやってきたシュウ一行。
出迎えてくれたのはもちろんこの工場の主、ダンである。
「神樹は俺の魔道具でしまってあります。どこに出せばいいでしょうか?」
「神樹を収納できる魔道具なんぞ聞いたことが無いが・・・まあいい。工場の方で出してもらおう・・・どのくらいに裁断してある?」
工場の方へ出すように言おうとしたが万が一のことを考え質問するダン。
懸命な判断である。
「え?根本から切ってそのままですけど?」
「・・・枝もそのままか。工場も十分な広さがあるが流石に荷が重いかもしれん。すまんが街の外へ行こう。おい、何人か連れてこい!」
船を作ろうとするだけのスペースがあるのでそのまま出しても十分だろうが効率を考えて街の外で神樹の裁断作業を行うらしい。
職人数名を伴ってシュウ達は再び街の外へとやってきた。
ついさっき街の中へ入ったばかりなので門番には少し不思議そうな顔をされたが止められることもなく街道からは外れた位置にたどり着くことができた。
「さ、ここなら誰の邪魔にもならんだろう。出してくれ」
「分かりました」
ダンの指示で収納袋へおもむろに手を突っ込むシュウ。
それを何をしているのかと疑問顔で覗く職人たち。
と、シュウが手を引き抜き始めるとそこには巨大な丸太の断面が出てきた。
明らかに袋の口より大きなものが出てきたことに驚く職人たちだが、シュウはお構いなしに取り出し作業を続ける。
ズルズルと取り出しながら自分は徐々に後退していく。
それに伴い徐々に切り倒した神樹の姿が顕になっていく。
全体を取り出すことに成功した時点でシュウは皆からかなり離れてしまっていたが、この程度の距離ならばシュウは一瞬で詰めることが可能なのですぐにダンの元へと向かう。
「はい、これが神樹です」
「「「・・・」」」
職人たちはまさに開いた口が塞がらない、という状況である。
それに対してシュウの仲間たちはと言うと。
「そういえばこれだけ大きいものを入れたのも、出したのを見るのも私達も初めてですね」
「そういえばそうっすね」
「それでも『まあ、主殿じゃし』で済む範囲じゃがの」
「これは私が切った方ですねぇ」
「早く帰りたい」
ダン達とは真逆に落ち着き払っていた。
というかリリに至っては始めて来たはずのドワーフの街に対してすでに帰属意識がついているらしい。
順応力が高すぎである。
「はっ!?いかんいかん。あんまりにあんまりなものを見せられてつい放心してしまった」
「ははは。じゃあこれを加工できる大きさに分けるんですね」
「そうだな。・・・ん?ところでこの神樹はどうやって切った?切り口がまるでたった数回で切ったようにキレイなんだが」
「あ~、それは私が切ったんですぅ。シュウさんに作ってもらったこの斧でぇ」
ダンの言葉に嬉しそうに自らの武器を指しながら答えるリエル。
「いや、普通ならどんな切れ味の斧だろうが伐採はかなり苦労するんだが。すまんがその斧を見せてもらえるか?」
「はぁい、どうぞぉ」
リエルはニコニコしながら自らの武器を差し出す。
普通であれば冒険者が街の外で自ら武器を外し仲間ではない人間に渡すなど言語道断であるがダン達とは知らない仲ではないし、そもそも武器がなくても魔法でどうとでもできるのでそれほど大事なことには至らない。
そのため軽く渡されたリエルの斧だが、受け取ったダンは目を見開いた。
「見た目に反してずいぶん軽いな。そしてこの刃の鋭さは・・・」
「そりゃ師匠。この斧も魔鋼で作られてるんだ軽いのは当たり前さ」
「ラルフよ。確かに軽いのはそれで説明が付くが斧にしては刃が尖すぎるってのは問題あると思わないのか?これじゃあ木や敵に当てた瞬間刃毀れしちまいそうだぜ」
「それが問題ないんだなぁ、これが。なんなら神樹の分割はこいつでやってもらえばいい」
ラルフの提案を受けてダンはリエルに対して「頼めるのか?」と目線で訴えてきたがリエルはニコニコとした表情を崩さずダンから斧を受け取ると逆にどの部分を切るのか促している。
やや怪訝そうな顔をしながらもダンは最初の切断位置である部分を指差した。
するとリエルはなんの躊躇いもなく切断位置まで行き、斧を振り上げそして振り下ろした。
ドゴオォォン
轟音を轟かせリエルの斧は神樹の半ばまで食い込んだ。
顎よ外れろ、とばかりに口をあんぐり上げているダンたちには構わずリエルは第二波を放つ。
かなりの太さを持つはずの神樹はダンたちの目の前できれいに両断された。
「はぁい、これでいいですかぁ?」
「・・・あ、あぁ。普通なら斧で斬りつけるなんて素材として使えない部分を増やすだけだから本来はやらないんだが・・・これなら問題なさそうだな」
神樹の分割のためだろうノコギリなどを持ってきた職人たちが自らの存在意義を見失いやや遠い目をしているのはご愛嬌だろう。
彼らの真髄は丸太を切ることではなくそれを加工することなのでその段階になったら復活するだろう。多分。
こうなれば作業は早く、ダンが支持した場所でリエルが斧を振るいその他の職人たちは余計な枝などを払う作業をすすめる。
そこにシュウたちの入り込む余地もなくほぼ見学状態である。
リリに至ってはすでに飽きたのか近くをフラフラしている。
作業がほぼ完了したところでようやくシュウの出番がやってきた。
といっても分割した新樹を再び収納袋へとしまい運搬するという作業だが。
この時おそらく船造りでは使わないだろう払った枝も回収しておく。
いくら街道から外れた場所と言っても適当に放置するには神樹というのは色々と面倒くさい代物らしい。
「よし、回収は終わりかな。じゃあ街に戻りますか」
「そうだな。おう、お前ら!こっからが俺たちの領分だ!いつまでも腑抜けた面してるんじゃねぇぞ」
ダンが枝払いをしながらもどこか心ここにあらずだった職人たちに活を入れつつ一行は街の中へと戻っていく。
この時も門番に行くときとなんの変化もなく、時間としても微妙な時間しか経っていないため怪訝そうな顔で見てきたが気にしてはいけないのだ。
ちなみにリリはまだ冒険者登録をしていないが街を出る時に証明書をもらっていたのでそれを見せることで今は手数料無しで通過できた。
しかしいちいち証明書を発行してもらうのも面倒なので後で登録は必須であろう。
放心している職人たちに考え事をしているシュウ、三人寄れば姦しいを体現したようにおしゃべりに興じながらついてくる女性陣といった一見なんの集団か分からないのも門番が不思議そうな顔をしている理由の一つだったりする。
◇◆◇
「そういえばノコギリで神樹が切れるんですか?」
「あぁ、普通の木に比べればかなり時間はかかるがな。丈夫だから今回の作成にはもってこいなんだ」
「あー、やっぱりそういう認識だったんですね」
「・・・これ以上何かワシらを驚かせる情報があるのか?」
「実は・・・」
ダンの工場へ戻ってすぐシュウは気になったことを口にした。
内容は森のなかで気づいた神樹の特性である。
「魔法もしくは魔力に反応して硬度が増す、ねぇ」
「現に先程の切れ味を持つ斧でも魔力で強化すると全く切ることが出来なかったんですよ」
「むぅ・・・大体において魔法を使えるやつ自体が少ないし、その魔法を神樹に向けて使うやつなんざ皆無だからなぁ」
今まで誰も気づかなかった理由はダンの言うことが全てである。
ダン以外のこの街の職人すべての認識として神樹は普通の木よりも固く、強度の必要なものを作る場合に用いる材料、という認識しか持っていないのだ。
シュウのもたらした情報は革新的といっていい内容である。が、しかし。
「まぁだからといってすぐにはどうしようもないんだがな。魔力を与えるっていっても普通なら小さい装飾品がせいぜいだろう?そんなものが硬度を持ってもどうしようもあるまい」
「そうなんですけどね。でも今回はちょっとおもしろいことを考えまして」
「・・・聞かせて見せろい」
ダンはやや諦めの境地が入った表情でシュウに話の続きを促した。
それに対してシュウは得意気に飛行艇の追加機能を話しだしたのであった。
出張から帰って速攻体調を崩したため更新期間が大きく空いてしまいました。




