第14話_帰り道です
神樹の伐採を終えたシュウ達はドワーフの国へ帰路についた。
勿論途中の森でもサンプルの採取は忘れない。
しかし空気が変わったことを実感できた境目と、更にその周囲の森でも同じように武器を使い伐採したのだが明らかに耐久度に差があるように感じられた。
「うーん、この辺の木は普通に魔法使っても切れるんだよなぁ」
「魔法が通じないのはあの神樹だけということでしょうか?」
「でも全体の大きさは全く違うんだけど葉の形とか同じなんだよなぁ。だから多分同じ種類の木で生えてる場所によって大きさが違うってことだと思う」
「そんなことがあるんですか?」
「そりゃそうさ。ってそうか。そんなこと試してみる人いないのか」
地球で暮らしていれば盆栽などの実例がありふれているが、植物が環境により育ち方が違うということをわざわざ検証するような人物はこの世界にはいないらしい。
というかシュウも今思い出したような実生活ではまったくもって役に立たないことなので知っているからどうだという話であるが。
「とりあえず落ち着ける所まで行ったら収納袋から出してじっくり観察してみよう」
「そうですね。まぁ、現状でも大抵のモンスターやトラブルが来てもどうとでも出来るくらいの安定性があると思いますが」
ティアナの言うことも尤もである。
彼女自身この世界ではほぼいない魔法使いであり、その中でも協力な魔法を使うことが出来る。
更には魔獣化した王亀の首を一太刀で落とせるフィアや圧倒的な腕力で戦斧を振り回す回復役のリエル、正体がドラゴンのカエデに彼女らが束になっても叶わない魔王のリリ、そしてそんな彼女をサッとあしらえるシュウがいるので仮に魔族の軍隊が襲ってきたとしても余裕を持って撃退することは可能だろう。
そのシュウであるがこの世界に来た当初はこれほどの力は持っていなかった。
シュウ自身不思議に思っているのだが、日に日に自らの中に力が溢れているような感覚がある。
一応鍛錬はしているが、成長度合いが鍛錬時間に比例どころの話ではない位高くなっているのである。
さすがのシュウも以前不安に思い仲間たちに相談したことがあるのだが、「シュウだし」と異口同音でハモられたので何の解決もしていない。
その時は特に不調や不具合があるわけでもないので何か変化が起きるまで放置ということになっていた。
閑話休題
いくら戦力的には何の不安もないと言っても今いるのは森の中であり、他の木は良いが神樹を出して観察するには場所的に狭すぎる。
その為予定通り森を抜けてから、ということにして一行は森の中を進む。
◇◆◇
「ココらへんで一旦休憩しようか」
「そうですね。この辺は比較的森も開けていますし時間的にもちょうどいいですね」
未だ森からは出られていないが開けた場所に出られたので休憩を取ることにした。
時間的にはやや遅めの昼食の時間くらいだったので食事の準備を始める。
準備と言っても普通の冒険者がこのような場所で食べるのは干し肉のような保存食であり調理が必要なものを食べたりはしない。
それはシュウたちも同じであるが、違うのは「調理が必要なもの」は食べないが「調理済みのもの」を持ち運んでいるという点である。
要するに中に入れたものの時間が進まないというシュウ特製の収納袋の恩恵がここでも発揮されるということだ。
今回の食事として選ばれたのは初めて共に食事を摂ることになるリリがいるため自分たちのパーティならではのものを食べてもらうことにしたようだ。
「リリ、これ食べてみて」
「・・・?何、この白いの」
「これは俺の故郷の食べ物なんだ。厳密に言うと少し違うんだけどね」
「あなたの・・・ん、おいしい」
「良かった」
シュウが渡したのはおにぎりである。
エルフの村「アルス」で手に入れたコメに似た穀物「ラース」で作ったそれは海水の中で育つということもあり、ただ炊いただけでほんのり塩味がついているのでおにぎりにするには最適なのだ。
シュウはこのラースを大量に確保しており何日かに一度は必ず口にしている。
今回は森への探索なので数日分の食料として多くの食事を用意しており、その中にもおにぎりが入っていた。
「今はこっちの持ってたものを渡したけど欲しいものがあったら言ってもらえたらある程度は考慮するから」
「人族の食べ物はあまり食べたことがないから興味がある。とりあえず色々と食べたい」
「わかった。・・・もぐもぐ」
ひとまずおにぎりを堪能することにしたらしい。
それを見届けた一行は自分達も食事を摂ることにする。
「やっぱり外で食べるならおにぎりだよねぇ」
「そういうものなのですか?」
「俺のいたところじゃ遠足って言って子供たちが遠出して遊ぶ習慣があるんだ。その時の定番のメニューだね」
「遊びっすか?どんな遊びをするんすかね」
「うーん、例えば山に行ったら登ったあと開けた場所で走り回ったり海に行ったら泳いだり?特定の遊びっていうかその場でできる遊びをそれぞれやる感じかな。で、お腹が空いたらみんなでお弁当を食べるんだ」
「それは楽しそうじゃのう。今度みんなでやってみるかの?」
「いいですねぇ。お弁当いっぱい持って行きましょうねぇ」
「それだったら船ができたらそれで遠出してみようか。試運転も兼ねて、さ」
「それはいいですね。今から楽しみにしておきましょう」
「・・・船?」
「あ、リリには言ってなかったね。『飛行艇』っていう空を飛ぶ船を作るために神樹を取りに来たんだ」
「船?船が空を飛ぶの?」
「飛ぶんじゃなくて飛ばすらしいですよ」
「やっぱりあなたは面白い。付いていくことにしてよかった」
「あはは・・・」
シュウは『飛行艇』に関して自分の思いつきでの活動なので面白いと評価されても強く反論できない。
一応は移動手段などの効率を真面目に考えてのことなのであるが。
「まあ遠足の行き先はその時までに各自考えておくことにしようか」
「そうですね。今はそのための準備をしているんですものね」
「・・・別に遠足のための船じゃないんだけどなぁ」
最後のシュウの呟きは行き先で盛り上がる女性陣の耳には届くことがなかったようだ。
◇◆◇
「ようやく着いたぁ」
街と神樹の生えている森は徒歩で片道2日強かかるためリリが加わった一行も参加後初めての野営を行ったのだが特にトラブルもなく順調に街の近くまでたどり着いていた。
仮に魔物や盗賊の襲撃があったとしても元からの戦力に加え魔王であるリリが参加した一行であるので戦力過剰という言葉では足りないほどのパーティとなっているため問題にすらならないのだが。
しかしすんなりと街の中に入る、ということは出来なかった。
なぜならばリリは身分証明証の類を持っているはずもなく、その代わりに街へ入るための保証金を支払う必要があった。
だがそもそも魔族間では貨幣という概念すら無いようで無理矢理押し通ろうとしたため少しだけ騒ぎが起こったのだ。
本来であればそういったことを予測し予め対処しようと考えていたシュウ達ですら反応する間もない、流れるような問題発生だったため慌てたのは言うまでもない。
結局リリは目的地で保護した人物であり、元々山の奥深くの集落で生活していたため少し常識に疎く、森で道に迷ったため集落にも帰りつけなさそうなので連れてきた、ということにした。
強引にも程があるがなんとか信じてもらい、保証金を建て替えてなんとか街へと入ることに成功した。
保証金の建て替え、という行為にシュウは少しだけこの世界に来た最初の頃を思い出す。
ラグスの街へ入る際に銅貨3枚をアランたちに建て替えてもらったのだ。
今でこそその位を支払っても懐が大きく痛むようなことはないが最初の頃は本当に無一文だったため感謝してもしたりないのである。
あの時は助けて貰う立場だったが今は助ける側になっていることについてほんの少し感慨深くなるシュウであった。
ようやくPC関連が落ち着いたので投稿しました。
が、仕事の関係で少なくとも一週間は時間が取れなくなるため再び間が空きます。
早く落ち着きたい・・・




