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第11話_魔王からは逃げられないようです

『魔王』

昔からゲームにおいてラスボスに位置づけられることが多く、様々な能力や姿を持つ。

特に定番と言って良いのが変身能力だろう。

やっとのことで倒したと思ったら会話イベントが発生し変身してパワーアップした状態で戦闘を行わなければならない。

更に戦闘の合間には何故か体力が回復していることもあるが基本的にアイテム等は増やすすべがなく、第一形態で使い過ぎるとその後が地獄となる。

たまにその第二形態を倒してもさらなる変身を残している場合がありはっきり言ってそれまでの敵とは一線を画した強さを持っている。

しかしそんな魔王にもきちんとしたバックグラウンドが用意されている場合が多く、ただの侵略者ではなく、自身の民のためであったり崇高な使命を持っていたりするストーリーとなっていたりする。

シュウもそんなストーリーが好きで、ただ悪者を倒して終わりというわけではなくその後の展開についても色々と想像でき、プレイヤーの数だけ解釈が広がるのもゲームの楽しみだと思っていた。


さて、以上のことを踏まえて現状を見てみる。

まず見た目であるが、威厳ある姿というよりはいいところのお嬢様のような格好である。

とてもではないが森のなかで遭遇し戦闘を行ったとは思えない。

そしてその能力だが魔力の運用などシュウに近いレベルで行えるが細やかな所が杜撰(ずさん)でありシュウがあっという間に魔力を霧散させ攻撃(手刀)を加えられるレベルであった。

ついでに言えば変身能力などなさそうであるし、むしろこちら側のカエデの方がドラゴンの姿になれる分イメージに近い物がある。

この場にいた理由も単純に言ってしまえば家出であり壮大なバックグラウンドも期待出来そうにない。

結論から言えばシュウが固まる理由はやや薄いのだ。

しかしシュウ以外のメンバーは固まる理由がやや異なる。

彼女たちにとって『魔王』とは過去の戦争において中心となった魔法使いを指して言うことが多く、その末裔(まつえい)だという魔族が名乗るのであればそちらに結びつけてしまうのだ。

女性陣が声を発せないようなのでシュウが代表して口を開く。


「つまり君は『魔王』に選ばれた、っていうこと?」

「そうみたい。・・・いい迷惑」


『魔王』と言われることに心底迷惑だという表情を浮かべつつリリが答えた。

その様子に『魔王』という単語で固まっていた女性陣も復活してきた。


「リリさんは『魔王』になるのが嫌で逃げてきた、と?」

「そもそもあたしは普通に生活していたの。それがいきなり魔力が高いっていうだけの理由で城に連れて行かれて『魔王』になれって。最初は我慢してたけど戦いに連れて行かれそうになったりよく分からないことまであたしがやったことになってて嫌になっちゃったの」

「よく分からないこと?」

「何か作戦しようとしてそれを考えたのがあたしになってた。それで失敗したから責任をとれと言われた」

「それは・・・」


恐らく失敗した作戦とはシュウたちの活動により阻止された魔獣による王都襲撃やエルフの村での出来事を指しているのだろう。

自分たちに非がないことはわかりつつもリリに対して損害を与えていたことには少しだけ罪悪感を覚えた。

しかし仮にそのことを知っていたとしてもなにもしないという選択肢はありえないのだが。

リリに対してやや同情的な視線が集まる。

色々とあっての逃走劇であったのだろう、と。


「まぁそれがなくても逃げるつもりだったけど」


同情的な視線を集めた張本人であるリリが全てを台無しにしてくる。

やや空気が白けたところで本題に戻ることにした。


◇◆◇


「一緒に連れて行くにしても俺たちは冒険者だし安全な生活とは程遠いんだけど?」

「普通と比べたら冒険するあなたの側に居たほうが安全だと思う」

「・・・俺たち魔族に思いっきり喧嘩売ってるんだけど」

「あたしは他の魔族が好きじゃないし別に構わない」

「・・・・・・人間とかの街に行くことになるけど」

「魔族って言ってもあたしたちほとんど見た目同じじゃない?」

「・・・・・・・・・移動中とか同じテントになったりするよ」

「他にも女の子が一緒に行動している時点であなたがそんなに悪い人だとは思えない」

「・・・・・・・・・・・・」

「終わり?」


リリと行動を共にした場合のデメリットを上げていくがそのどれもを問題にならないと論破される。


「あたしなりに色々考えた上であなた達に付いて行きたいと言った。あとはあなた達があたしを受け入れてくれるかだけだと思う」

「・・・」


真っ直ぐな目で見られて間接的な言葉ではリリを止めることは出来ないと思い、シュウは正直なところを話すことにした。


「はぁ、分かった。連れて行くのは俺としては別に構わないと思ってる。でも俺達は冒険者のパーティだ。つまり俺の一存では決められないし他の皆が賛同したとしても君のせいで冒険者としての活動に支障が出るようなことになったとすれば追い出すことになる。それなら最初から関わらないほうが良いとも思ってる」

「・・・」

「それに君は自分で嫌だと言っていても魔族だ。いらないトラブルを呼びこむ可能性があるし、パーティリーダーとしてはそんな人物を迎え入れるのに躊躇(ちゅうちょ)もする」

「どうすればいい?」

「付いてくるとすればしばらく監視させてもらう。それと下手な動きを見せたら俺が全力で相手をすることになる。はっきり言って君の言う自由はしばらく手に入らないけど?」

「いずれ手に入るならそれでいい。お願い。連れて行って」


いくらマイナス材料を提示してもリリは一向に躊躇いを見せない。

さすがにこの条件でも戸惑いすら見せないのは少し怪しい。

勘ぐるなという方が難しいような状況である。


「どうしてそこまで俺たちと一緒にいたいの?はっきり言えば君にとって酷すぎるといっても良い条件だし、そもそも君ほどの力があれば俺達と一緒に居なくても大丈夫だと思うんだけど・・・」

「・・・」

「そこだけは答えて欲しい。無理ならこの話は無かったことに」

「・・・分かった」


少女は先ほどの質問攻めの時とは全くと言っていいほど違う反応を示しつつゆっくりと答え始めた。


「言ったと思うけどあたしは魔族。でも人族や他の種族に対して敵対したこともないし何かしたこともない。普通に家族と暮らしていたの」


リリの話は自身の心の中を吐き出しているようであった。

普通に暮らしていたはずのリリだが、魔族という種自体がゆっくりと、だが確実に追い詰められていたのはリリも知っていることだった。

その打開策として打ち出されたのが昔と同じく他の種族への侵攻である。

しかしこれを唱えたのはいわゆる急進派というやつでリリのようなごく普通の生活を送っていた者にとっては過去の遺恨を含め賛同するにはあまりに極端すぎる結論であった。

だが急進派は全く譲らず、むしろ仲間であるはずのリリたちを弾圧し始めたらしい。

勿論黙ってやられるはずもなく自分たちの生活を守るためにもしっかり反論はしたらしい。

しかしそれだけでは魔族の陥っている状態の解決出来るわけもなく、最終的には半ば無理矢理納得させられた。

それでもリリは彼らに従うつもりは無かった。

あくまで積極的な反対はしない、というスタンスに落ち着いたのだ。

だがそれだけではリリに舞い降りるトラブルは回避できない。

どうやって調べたのかリリが無自覚であった自身に宿る膨大な魔力を感知され利用されるために通称魔王城へと連れて行かれたそうだ。

それからは魔力を完全に操るための訓練をさせられ魔王として他の魔族を扇動するために祭り上げられた。

こうなれば彼女に自由はない。

魔力は以前に比べれば格段に操れるようになったがシュウの指摘通り細やかな調整などが出来ず、監視の目を盗んで逃げ出すことが難しかった。

しばらくはリリにとって地獄のような日々が続いたが、ある時シュウ達によってボロボロにされた戦士たちが一気に帰還してきたため場内は大きな騒動になったためリリが逃げ出す隙が生まれ、それを活かして逃げて来たらしい。


「どうして住んでた家に戻らなかったの?」

「戻ったって場所がわかってるからすぐに連れ戻される。それに家族にも迷惑をかけるかもしれない。それなら1人で居なくなったことにすれば家族への被害は少なく済むはずだと思った」

「それでもう家に戻れなくなったとしても?」

「あたしのせいで家族に迷惑をかけるくらいなら我慢する」


リリの目は決意に満ちていた。

自分が一切悪く無いとしても家族の迷惑になるのであれば進んで自分を切り捨てる。

そんなことを出来るのは世界に何人いるだろうか。

しかもそれがシュウたちに何度も襲いかかってきたトラブルの原因である魔族であるということも衝撃である。

仮にここでリリを見捨ててしまえば、例え彼女がどれほど強くてもシュウが自分自身を外道であると思ってしまうだろう。

最早シュウにとって彼女は『警戒すべき魔族』ではなく『信念を持った女性』としてしか見れなくなっていた。

節々の言動こそ軽い時があるが一本通った芯だけは曲げないようである。

内心では連れて行くことに賛成し始めている。

チラリと仲間を見れば彼女らも否はない、というか進んで賛成しているように頷いていた。


「最後に。どうしてそこまで俺たちに拘った?確かに俺達は強いかもしれないけど、今の話を聞く限りそれだけが原因とは思えない」

「それは・・・あなたが死んでしまったお父さんに雰囲気が似ていたから・・・」


やや言いにくそうにチラチラとシュウを見ながら告げるリリ。

どうやら赤面しているようである。

最初に会った時は威圧感漂う敵として、戦いが終わればいきなり告白してくる可愛らしさが、かと思えば芯の通った強い女性らしさを、最後には庇護欲を誘う殺し文句まで使ってきた。

どうやら最初からシュウが断れる未来は無かったようである。

シュウは1人心のなかで呟いた。


そういえば魔王って絶対逃げることが出来なかったよな、と。


もう少しスマートにまとめるつもりでしたがまとめきれませんでしたorz

もっと読みやすく書けるように精進します。

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