第01話_どうしましょうか
お久しぶりです。
更新を再開します。
「さて、武術大会も終わったしこの国でやることはもうないかな?」
「この国で、というかやることがないっすね」
「うーん、何も目標がないのなら一度ラグスの街へ戻るのもありかもしれませんね」
「それならば先に発ったアランたちに着いて行けばよかったのう」
「出発するならご飯一杯買わないといけないですねぇ」
武術大会から早2週間、シュウたちは未だガルムに滞在していた。
大会終了後、強制的に宴会に巻き込まれ、その宴会がまさかの三日三晩続いたのには辟易したのだが、それ以降は実に過ごしやすいものであった。
道を歩けば様々な人から声をかけられ、何かしらの手土産をもらえたのだ。
それに喜んだのがリエルであり、彼女がなかなか首を縦に振らなかったためシュウたちはこの国で滞在することになり考えつく限りの事をしていた。
名産の料理を食べたり、観光名所を回ったり、獣王に呼び出されたりと動き回っていた。
その間にアランたちやギルマスがそれぞれの街へ出発したりしたのを見送り、ようやくリエルが満足したのでシュウたちも出発の相談をしているのである。
「そういえば獣王にも確認をしたけど、やっぱりアレは魔石だったね」
「そうでしたね。ちなみに使いみちは考えつきましたか?」
「んー、一応考えはしたけど・・・ちょっとなぁ」
「あ、シュウさんが何を思いついたのか興味あるっす!」
「そうですねぇ。何か食べ物に関係していますかぁ?」
「どうしてそう思うのじゃ・・・」
リエルは相変わらずなのでスルーすることにしてシュウは思いついたことを話し始めた。
「えっと、皆で移動できる手段を作りたいなぁ、と」
「移動、っすか?」
「そう。俺達って基本的に移動は徒歩か馬車でしょ?俺は最悪飛べるからいいけど、皆と一緒にもっと早く移動できたらいいなぁ、って思ってたんだ」
「確かにそうですが・・・馬車以上に早い移動が可能なのですか?」
ティアナの言うとおり、恐らくこちらの世界には馬車以上の高速移動手段、つまり自動車などの機械的な物は存在していないようである。
つまり今後移動をスムーズに行うためには馬車は必要不可欠であり、移動の度に馬車をレンタルするのでは効率が悪い。
今まではギルド側の好意などで経費は掛からなかったのだが、今後のことを考えると持っておきたい。
しかし馬車というからには荷台を引くのに馬が必要であり、馬の世話をするという作業が発生するため、移動がメインではないシュウたちではコストパフォーマンスがやや悪い。
そのため普通の冒険者であれば経費がかかっても移動の度に馬車のレンタルを行うのが普通なのだがそこはシュウである。
「つまりシュウには馬車に変わる案がある、と」
「うん、でも優先度的にはそんなに高くないと思うから他にやることあればそっち優先で」
「でもやることなんてないっすよね?」
「じゃあ決まりですねぇ」
「主殿が今度は何を仕出かすのか楽しみじゃのう」
「では次の目的地はドワーフの国、ということでいいでしょうか?」
「ドワーフの国?」
「そうです。物づくりならドワーフに頼むのが一番ですし」
「そうなんだ。それじゃそこに行ってみようか」
やりたいことがあるくせに肝心な所が人任せなシュウである。
ちなみにシュウ個人であれば移動は転移魔法で一瞬で行える。
しかし決して万能な魔法ではないため欠点が幾つか浮かんできていた。
まずは移動できる場所である。
あくまで『一度行った場所に移動する魔法』であるため未知の場所には行くことが出来ない。
そして一緒に転移できる条件がある。
ある程度の仕様を確認してから仲間たちに打ち明けようと思っていたため、そのへんにあった石や木片などで実験した所、シュウと一緒に転移するにはシュウと直接触れ合っていることが必要そうであった。
どういうことかというと、例えばシュウと手を繋いで一緒に転移しようと思えば転移できる。
しかしそのシュウと手を繋いでいる人が他の人と手を繋いでいた場合、シュウと手を繋いでいた人は同様に転移できるがその人と手を繋いでいた人は転移できない。
3人で転移するためにはシュウの両手それぞれと手を繋いでいる必要がある、ということである。
仮に仲間全員と一緒に転移しようと思えば何人かはシュウに抱きつくようにする必要があり、それを移動の度にするとなるとさすがのシュウでも心臓に悪い。
そのためこの方法に関しては緊急事態用の手段としている。
仲間たちとも話し合った結果である。
その仲間たちは既に次の目的地へと思いを馳せているのであった。
◇◆◇
そうこうしているうちに出発したシュウたちである。
出発前夜にはどこから聞きつけてきたのか獣人達が集まってきて再び宴会となったのだが、それを察知したシュウが仲間たちを誘導し、騒ぎが大きくなる前に部屋へと撤収したのだ。
シュウ達がいなくても宴会はつつがなく行われたのだが。
そして獣王にはこの国に引きとめようと更に物品を贈られそうになったのだが、これ以上欲しいものが無かったため辞退した。
物凄く寂しそうな顔をされたが口調こそ女性らしいのだが風貌が歴戦の猛者なので何の未練もなく出発することにした。
ちなみにこれ以上滞在すると自分たちの像が完成してしまう、というのも理由の1つだが、これが獣人の誰に言っても理解してもらえないため言わないことにしていた。
「ドワーフの国までは徒歩で2週間、だっけ?」
「そうらしいですね」
「のんびり行くっす。久々に冒険者っぽいじゃないっすか」
「そうですねぇ」
フィアの言うとおり、冒険者の活動っぽい活動は久しぶりなのである。
実は王都ハイエルでの活動以降あまり冒険者ギルドに行っていないのだ。
魔獣襲撃の後、それなりの報酬を得たシュウたちはエルフの村・アルスへと出向きラースの調達、それから王都に戻ってちょっとしてから獣人の国・ガルムへと出発。
その後武術大会を経て、少し活動を再開しようかとしたところでガルムのギルドへ行くと獣人たちに捕まり模擬戦を挑まれたり話を聞かせて欲しいと殺到されたり。
それらを躱していざ依頼を受けようとすれば受付の担当者に「この程度の雑事でお手を煩わせるわけにはいきません」と依頼を受けること事態を拒否された。
拒否というか恐らく純粋に言葉の通りの好意から出た言葉なのだろうが、いくら強者を尊ぶ獣人であったとしても少々異常である。
まぁその異常をもたらすような強さを見せたのだからしょうが無いのだが。
話を戻してフィアの発言であるが、厳密に言えばこれから行くドワーフの国へも冒険者として行くわけではない。
しかしアルスに行った時のように趣味の食料調達や、ガルムのように武術大会への参加に比べると『今後の移動手段の確保』という間接的にでも冒険者稼業に関わる事柄なので見当違いではないだろう。
と、そこで出発してから一言も声を発していなかった人物から声が掛かる。
「ところで主殿、我が元の姿に戻れば移動も楽になると思うのじゃが?」
「だからカエデが元の姿に戻るとあちこちで混乱が起きるからダメだってば」
「むぅ・・・」
アルスでのやり取り以降鳴りを潜めていたカエデの竜化欲が再燃していた。
これにはシュウも困惑顔である。
なぜここで再び言い始めたのか聞いてみたのだが、答えは単純であった。
「主殿は乗り物が欲しいという。我が元の姿に戻れば万事解決なのにそれはするなと言う。そもそも地を行く乗り物なんかより我の方が早いのじゃ」
「地を行く?」
「む?だって主殿が作ろうとしているのはそういう類の物じゃろう?」
カエデがいかにも分かりません、といった表情で見つめてきた。
どうやら自分の竜化よりも気になることを見つけたらしい。
そして仲間たちも同じようにシュウを見ている。
全員カエデと同じことを考えていたようだ。
「えっと、シュウ?そういえば確認していなかったのですが、作るのは魔道具化された馬車、もしくはそれに類似するようなものですよね?」
ここでシュウはなるほど、と思う。
確かに武術大会でもらった魔石をどうするか、という話の流れで乗り物を作ることを話した。
そしてこの世界では人工物は地を行くものしかないのだ。
それがこの世界の常識、というものである。
「そういえば言ってなかったね。そもそも自動車を作るのにこんな大きな魔石は必要ないよ。俺が作ろうとしてるのは空を飛ぶ船、『飛行艇』さ」
シュウの頭のなかでは既に作成が決定していたものの1つである。
実際に気球に存在する胴体を使って水面に着水する『飛行艇』は見た目がいかにも飛行機といったものだが、シュウの思い描くそれは帆船の形をしており、それが空を飛ぶのだ。
そして水面は勿論地面の着陸も可能といういかにもファンタジーな乗り物である。
それならば帆船の形に拘るのは無駄、というか全くの無意味で非効率的に見えるのだがそこはロマンである。
しかしそんなロマンを語る上で必須な知識がこちらの世界の住人にあるはずもなく、そもそもシュウの発言に出てきた『自動車』というのも分からないがそれ以上にシュウが何を言っているのか分からない状況なのでティアナたちはポカンとするしか出来なかったのである。
前章で手に入れた魔石をどうするのか、が今章での内容になるかと思います。
更新についてですが、リアルのほうがばたつき始めてきたため、以前と同様の毎日更新ではなく2・3日に一回の更新になるかと思います。
頻度は下がりますが、当作品をこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m




