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完結お礼小説  温泉に行きましょう!

遅れてしまった完結お礼小説です。

あとは、ブログの番外編をこちらに掲載を少しずつupしていったり、

また気まぐれ番外編を書いたりしていきたいと思います。

「ヒスイさん。何処に行きたいですか?」

僕の膝の上に座っている最愛の妻は、『厳選! 温泉案内』という本を手に持ち目で追っている。

そんな彼女のお腹へ後ろから両手を回し、首元に顔を埋めるようにして大切に抱きしめていた。


可愛い。小さくて本当に可愛い。存在自在が愛おしい。

もうそこにいるだけでいい。こんなに可愛い妻がいてくれるなんて幸せすぎる。

暖炉に煌々と焚かれている薪のように、僕の心もヒスイさんへの溢れる愛で燃えていた。


妻は寒さが苦手。

従って、白銀の世界にかえてしまっている今の季節は彼女にとって最も過ごしにくいもの。

そのため今度の休みに、二人で温泉にでも出向いて温まろうと計画を立てている最中だ。

長期休暇シーズンではないため、宿泊は一泊の予定。

それでもヒスイさんとならば、楽園だ。


「何処にしましょうか? ……というより、旦那様。重くありませんか? 私、やはり一人で座った方が宜しいのでは?」

「重くなんてありません! この重さが心地いいんですよ。それに、ヒスイさんが僕の膝から降りたら、心が寒くなります」

「え? 心? 太ももじゃなくてですか? よくわかりませんが、旦那様さえよければ、私は……」

「では、このままで。温泉、良い所ありましたか? 何処でも連れて行きます。国外にしましょうか?」

「寒いから、国内がいいです。それに私もそうですが、旦那様にもお仕事がありますし……近辺でお勧め場所はありますか? 私、温泉って行った事がなくてよくわからないんです」

「そうですねぇ。それならメルン村の温泉はいかがですか? ここから近いですし。それに王族の保養所がありますよ」

と、僕はそう口にした。

実にさりげなく伝えておいたが、そこは露天風呂。しかも混浴。

僕も男であるため、無論下心ありの模範解答に決まっている。

雪景色の中でその肌を染めるヒスイさん。これは絶対に一緒に入らねばなるまい。


「メルン村にも温泉あるんですねぇ。ここからですと、一時間半ぐらいですか? そこにしましょう!」

体を捻らせ、こちらを向いたヒスイさんはそう言うと微笑んだ。

その笑顔にまた惚れた。いとも容易く。

僕は何度ヒスイさんに惚れるのだろうか? そんなのは、決まっている。何度でもだ――


ああっ、早く次の休みになって欲しい。

もう待ちきれない。こんなに可愛い妻。

ヒスイさんと混浴。背中を流し合いしましょう!


「旦那様。温泉、そんなに楽しみなんですか? 顔が緩んでいますよ?」

「……あっ」

ヒスイさんにそう言われて、きりっと引き締めた。

どうやら下心が溢れてしまっていたようだ。



「さぁ、どうぞ」

「ありがとうございます」

馬車から降りるヒスイさんにそっと手を差し伸べると、可愛くて小さな手が触れた。

手まで可愛いなんて、さすがヒスイさん。

やはり、彼女は可愛いという成分で出来ているのではないだろうか?

ああっ、手袋越しじゃなくて直に触りたい。頬ずりしたい。


「無事に着いてよかったですね」

「えぇ」

やっと休日になり、僕とヒスイさんは目的の保養所へとやって来た。

ここは元々、三代前の国王の手により湯治場として利用されてきたため、良質な源泉がかけ流しになっている。


珍しいのか、目の前の建築物を眺めているヒスイさん。

王都では見かけない丸い球体のような屋根を持つ建物が目印だが、これはこの雪深い地域では良く見かける様式だ。

王都では雪は積るが、数センチ程度。ここではメートルが普通だ。

そのため屋根の雪下ろしをしないで済むように半球状態になっている。

そんな説明をしてあげたいが、今はそれよりも何よりも温泉が先。


――混浴!


心躍る中、混浴へのカウントダウンが近づいて来ているため、僕のテンションは上がりまくっている。

この寒さなんて全く感じないまでに。


ここ数日、仕事が捗って仕方がなかった。

ヒスイさんとの温泉旅行のエネルギーを、仕事にぶつけたからだ。

イオに「新婚パワーですね」とからかわれたが、実は混浴パワー。


「ようこそお越し下さいました。ライト様、ヒスイ様。お元気そうで何よりです」

玄関ホールにて待っていてくれた白髪交じりの初老の男性は、微笑みながら僕とヒスイさんを歓迎してくれている。彼はハンツと言って、長年ここで働いてくれている管理人だ。

同敷地内にある離れに住んでいて、彼の家族と共にここを維持してくれている。


料理人やメイドなどは城から一緒に同行。

そのため食事や身の回りの世話、城からの使用人が行っているので、ハンツはあくまでここの管理をお願いしている。人の手が加えられないと傷みが早くなってしまうからだ。


そのため僕もヒスイさんも、屋敷からアイリス達を連れこの一泊二日の旅行には参加する予定。

けれども彼らが気を利かせてくれて、一時間程時間をずらして遅れて来てくれる事になっている。


「ハンツも元気そうですね。最後にここを訪れたのは、五年前でしたか? 貴方が手入れをしてくれた庭、とても素晴らしかったですね。ネイ達の姿がみえませんがどうしましたか?」

ハンツだけとは珍しい。いつも家族総出で出迎えてくれるのに。

何か病気や怪我をしているのでは? そう思い、尋ねてみた。


「孫が熱を出してネイは看病しております。息子夫婦は温泉のチェックに。お出迎えせず、申し訳ございません」

「いえ、構いませんよ。それより、子供の様態は?」

「えぇ。大分いいです。熱も下がり始めたので」

「それはよかった……あぁ、そうでした。まだ言ってなかったですね。遅れて屋敷の使用人達が来ますので、よろしくお願いします」

「はい、畏まりました」

「それから、ご紹介が遅れましたが、こちらが僕の妻であるヒスイさんです」

僕はヒスイさんの肩に手を添え、ハンツへと紹介した。


接客業をしているせいか、ヒスイさんは初対面の人が相手でもあまり緊張が顔に出ないらしい。

いつもの可愛らしい笑顔を浮かべながら、「よろしくお願いします」とお辞儀をして挨拶。


それも可愛い。ボキャブラリーセンスが無いように思われそうだが、もうそれしか言えない。

愛らしい妻は、きっと可愛いという成分で出来ている。

そうイレイザ兄さん達に言った事があるが、「お前、理系だろ? 研究者だろ?」と嘲笑われた。

兄さんもヒスイさんの魅力に気づけば、きっと理解出来るだろう。


「お噂通り可愛らしい奥方様で。管理人をしております、ハンツと申します。よろしくお願いします。長旅でお体が冷えてしまわれましたよね? どうぞ中にてお休みになって下さい」

「えぇ。ヒスイさん、大丈夫ですか?」

「はい!」

と元気に答えてくれたが、寒いらしくガタガタと体が震えている。

可哀想に……温泉は中止して、家でゆっくりの方が良かっただろうか?

弱ったリスのようで心配になってしまう。


「早速、温泉入ってあったまりましょう」

「そうですね。早く温泉入りたいです!」

震えるヒスイさんの手を繋いだ。

顔色がいつもより白く、唇が紫に近い。やはり寒さが限界らしい。

ハンツの手前、気をつかっていたのかもしれない。


「さぁ、どうぞ。ご案内致します。みなさんお揃いですよ」

「そうですか。みんな揃っているなんて、早いで……――はぁ!?」

荷物を持って先へ進むハンツに促され、踏み出した足が止まった。

というか、止めざるを得なかった。


「待って下さい。みなさんって、アイリス達ですか!?」

「いいえ。国王様達でございますが……?」

小首を傾げながら、怪訝そうな声をハンツが上げた。

もうその名前を耳にしただけで、頭痛がした。

二人だけの温泉。父上には言ってない!! それなのに何故!?


――ちらっとイレイザ兄さんの前で口を滑らせた事しかない。もしかして、あの人かーっ!


「国王様達もいらっしゃっているんですね」

隣にいるヒスイさんが、にこりとこちらに向かって微笑んでいる。

だが、それには首を左右に振りたかった。

そして今すぐヒスイさんを担いで、引き返したかった。




「遅いですよ、ライト兄様。ヒスイ姉様」

「おっ、ようやく到着かー。かなり待ったぞ?」

「ヒスイちゃん、久しぶりね」

「やだっ! 相変わらず可愛いーっ! って、大丈夫!? 唇が紫よ?」

「こっち来て! ほら、暖炉!」

リビングに辿り着けば、そこには目を背けたくなるような光景が待っていた。

そこに居たのは、なんと家族全員だったのだ。

まるで約束していたかのように出迎えられ、僕は顔が引き攣って仕方が無い。


「イレイザから、貴方達の温泉旅行の事をちらっと耳にしてたの。私達もヒスイと温泉入りたかったから、来てしまったわ。ほら、私達ヒスイを含めての家族旅行まだだったでしょ?」

王妃がソファから立ち上がると、そう僕へ口を開いた。


「入りたかったって……」

そんな簡単に言わないで欲しい。

もしかして、下心全開だったバチがあたったのか……?


「さぁ、ヒスイ行きましょう」

「寒かったでしょ? 早速、お風呂入りましょうよ」

「ここの温泉温まるのよ。それに肌もしっとりするの」

と、王妃を先陣に女性達はぞろぞろとこちらにやってくると、ヒスイさんを囲んで連れ去ろうとしてしまう。それにはすかさず妻の腕を掴んで阻止。


僕の混浴計画を邪魔されるわけにはいかない――!


「ちょっと待って下さい! ヒスイさんは僕と……」

「あら? ライト知らなかったの? ここ、去年温泉を改装したついでに男湯と女湯に分けたのよ?」

「え」

「だから、ヒスイは私達と仲良く温泉に入るの。残念ね」

そう告げると、今度こそ王妃達はヒスイさんを連れ去って行ってしまった。

しかも、「背中流してあげるわ」等と、僕が頭の中で色々と妄想した事を言っている。


「なんて事……っ!」

あまりの衝撃の大きさにがくりと膝から崩れ落ち、その場に伏せてしまう。

その背に突き刺さる男達の「あーあ」という憐れみを含んだ視線。


――わかっています。でも、僕だってここに来るのは、五年ぶりなんですって。しかも、誰も教えてくれなかったじゃないですか。


こうして混浴の夢は儚く消えた。





☆おまけ☆

イレイザ「今回の件、お前も悪いんだぞ? なかなか城にヒスイを連れて来ないから。ヒスイが仕事をしているからって、休日は休ませたいと屋敷にも訪ねずらいだろうし」

ライト「連れて行くと、すぐに母上や王妃達がヒスイさんを攫っていくじゃないですか……温泉折角楽しみにしていたのに……」

イレイザ「まぁ、たまにはお兄様達と親睦を深めようじゃないか。ほら、俺達も温泉行くぞ?あっ、女風呂覗くなよ~」

ライト「僕の事をなんだと思っているんですか? 毎回、人を不審者扱いして。覗きませんよ。母上達家族がいるのに。ヒスイさん一人ならわかりませんが」

アクセラ「……兄上。今日はずっと見張っていますから」











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