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大魔道士シファには必殺技がある!  作者: 銀河星二号
シファと言う大魔道士

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3/3

彗星崩落《コメットフォール》

「来たか!」


 士官ドルフは顔面に喜色をあらわにし、そそくさとシファの前へ出る。


「貴方が! 鬼神シファ殿か!」


 ドルフは両手でシファの手を取り、激しく握手した。シファは少し驚いた顔をした。横から参謀ギルが、気まずそうに、その様子を見ている。


「……ああ、そう呼ばれる事もあるわね。あなたがここの大将さんね。よろしく!」


 シファの様子を見ながら、横からギルが恭しくシファに語りかける。


「シファ殿。遠路はるばる良くお越し下さいました! 参謀のギルです」

「あ、あなたが契約者の人ね。ごめーん、途中でちょっとしたトラブルがあって。まだ間に合う? 終わっちゃった?」


 シファは居並ぶ兵士と、遠くから聞こえる音に気がついた。地平線に炎が煌めき、時間差で低い音がドンと響いた。


「ああ、ちょうど良いタイミングみたいね」


 シファは地平線の様子をじっと見つめた。


 ギルが笑みを浮かべながら、シファを招く。


「それでは、シファ殿には後衛として、こちらの支援部隊に入っていただき……」


 シファが言った。


「あの炎の上がってる所が前線だろうから、その向こう側を攻撃すればオーケーよね?」

「はぁ……まぁ、そうですが」

「一発撃ってみる。多分終わるわ」

「……一発? 終わる?」


 ギルは次の言葉が続かなかった。


 そして、シファは目を瞑り、聞き慣れない奇妙な言語で、呪文の詠唱を始めた。


◇


 シファたちの遥か先には、塹壕があった。そこでは、兵士達が号令を待っていた。

 一人のヒゲの生えた上級兵が、煙草を咥え、もう一人のひょろ長い新入りに、小声で講義をしている。


「いいか、奴らソブリンはもうすぐ来る。号令が出るはずだ。用意をしておけ」

「……分かりました!」


 新入りは緊張しているらしく、オドオドと落ち着かない。二人とも長剣を体の前に構えた。


「笛だ。笛の音が鳴る! それが合図だ! そしたら動く! いいな!」

「……はいっ! 笛ですね!」


 すると、夜空が一瞬白く光った。


「ひいっ!」


 新入りは、手から剣を落とし、頭を抱えて怯えた。ヒゲ男は冷静に空を見つめた。空に巨大な光球があった。


「何だありゃ? 彗星? いや、方角からすると……味方の魔法か? ……にしてもデカい!」


 白い巨大な光が、音を立てて敵陣目指して空を走って行く。光は塹壕の上に光の粉を降り注いだ。光の粉は地面に落ちるとチリチリと小さな音を立てた。


「思い出した!」

「はい?」

「参謀殿が大魔道士が来るとか言ってた……つまりあれは魔法で間違い無い……そしてあの大きさ……まずいぞ……!」

「何がでありますか?」

「衝撃だ!」


 光は敵陣深くに落ち、ひときわ明るく閃光を放った。周りが一瞬昼のようになり、青空さえも見えた。


「やばいっ! 伏せろっ!」

「えっ」


 ヒゲの男はバッとその場に伏せた。新入りは理由が分からず、呆然と突っ立ったままだった。そして激しい振動がドンと駆け抜けた。


「うわァ!」


 新入りは宙に浮いて尻もちをついた。


「だから伏せろって。今回の味方の魔道士は超級だと聞いている。普通とは違う。立ってらんねぇぞ」

「……超?」

「次、音と風が来るぞ。伏せろ!」

「えっ?」


 耳をつんざくような轟音が鳴り響いた。そして一陣の突風が塹壕の上を走り抜けた。ひょろ男は風に煽られながらも、塹壕の柱にしがみついて止まった。


「うわあああぁぁあぁっ、助けてーっ!」

「だから言ったろう。普通じゃ無いんだよ」


 ヒゲ男は新入りを掴んで地面に下ろした。爆風は徐々に収まった。新入りも落ち着きを取り戻した。


「ふう、出番は? 出番まだですか?」

「だから、笛だ。笛が来る! しばし待て!」


 塹壕の中で兵士たちは出番を待ちに待った。しかし笛は鳴らなかった。そしてヤケに静かだった。


「どうなってんだ? ……いや、とうなった?」


 ヒゲ男は塹壕からそっと頭を出し、様子を伺った。遠くに燃え盛る炎が見えた。


◇


 丘の上では将軍の傍らに、シファが全身から紫色の光を放っていた。上げた右手の先に紫の稲妻が迸っている。

 その後ろには口をあんぐりと開けた側近達が並んでいた。


「こんなもんでいい?」

「か、観測兵ーっ! 状況はーっ?」


 観測兵は望遠鏡を前に、何度も望遠鏡を覗き、あたふたとしている。


「暫くお待ちを! 煙があり、状況が良く分かりません」

「大丈夫よ。ソブリン共は今頃揃って消し炭になってるわ」


 暫く後、風で煙が晴れた。


「見えました!」


 観測兵が見たそこには何も無く、ただ炎が燃えて揺らめいているだけだった。


「報告! ……動く敵影は見当たりません!」

「でしょ」

「何と言う威力……」

「じゃあお仕事はお終いね。報酬……ちょうだい!」

「は、はい……」


 参謀ギルが合図をすると、側近の一人が小さな革袋を手に持ってきた。


「まさかと思うけど、一応中身確認するわね」


 シファは革袋の中身を確かめた。ジャラジャラと金貨が見えた。


「毎度あり! また何かあったらギルド経由か、伝書バトでも飛ばして。テレパシーでもいいわよ。あ……デバイスは持ってないわ」

 

「素晴らしい! 鬼神シファ殿!」


 ドルフがまたブンブンと両手を握って振った。


「鬼神はやめといて? 大魔道士シファと呼んで……」

「おっと」


 そう言うと、シファは少しフラついた。ドルフはそれを支えた。




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