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大魔道士シファには必殺技がある!  作者: 銀河星二号
シファと言う大魔道士

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2/3

サブリナ王国辺境

 夜空にひときわ大きく宵の明星が煌めく。


 西の空はまだ薄明るく、地平線にはまだ赤みが残っている。

 遠くの山々が暗いシルエットで地平線に広がっている。

 辺りには、見渡す限りの赤い荒野が広がり、岩がゴロゴロと転がっている。

 荒野の丘の上には多数の天幕が張られていた。そこはサブリナ王国の前線陣地であった。


 ここは惑星デッドストック、テラー帝国の北東の小国、サブリナ王国の辺境。隣の蛮族の国、ソブリン国と接する場所。

 そこに建てられた監視塔の上では、兵士が一人、ソブリン国へ向けられた望遠鏡を覗き込んでいた。


「敵、未だ動かず!」


 兵士は一言叫んだ。それを地上で聞いていた伝令兵が、並ぶ天幕を縫うように走り出した。走る先にはひときわ大きな天幕が一つ見えた。伝令兵はそこへ向かって真っ直ぐ走り続けた。


「伝令ー!」


 伝令兵は長く叫ぶと、そこへ飛び込んだ。


◇


「伝令! 前方にソブリン族の敵影多数を確認! まだ動いてはいません」


 伝令兵は敬礼をしながら、そう伝えた。


「うむ」


 報告を受けて、大きな椅子に座る男が頷いた。

 男の名は士官ドルフ。貴族の出身で、特にこれと言った能力は無い男だ。単に縁故で今の地位についたと噂される人物だった。

 もっとも人格的には申し分なく、それなりに人望はあるようであった。


 サブリナ王国は小規模な国で、常日頃から亜種族ソブリン族の度重なる侵攻に悩まされていた。そのため、常時国境に兵を配備しているのだった。


「失礼します」


 参謀のギルが入って来た。


「おお、ギル。首尾はどうか?」

「はっ、それがドルフ閣下……」

「どうした?」

「斥候によると、敵の数は万を超えていると言う話でして、再度確認したところ、間違いでは無いとのことです」

「それは、こちらの数倍ではないか?」

「はっ」

「……どうしたものか……」

「こんな事もあろうかと、事前の手は打ってあるのですが……」

「……でかした! してその策とは?」

「援軍を呼んであります。その……傭兵です」

「なるほど。……しかし、よく軍資金が足りたな」

「買い叩きまして」

「ほう」

「しかし腕の方は確かと聞いております。ネームドです」

「それは凄い。なんという部隊だ?」

「いえ、部隊ではありません。個人です」


 ドルフはギルをじっと見つめた。


「……個人が数人来たところで万の軍勢を何とか出来るとは思えんが……」

「数人でも御座いません。一人です」


 ドルフは笑った。


「ははは、ギル、冗談を申すな。一人で何が出来る?」

「魔道士です。魔法を使えば十人力ぐらいにはなりましょう。その魔道士……名はシファと聞いております。」

「シファ……その名は聞いたことがある。確か……ダンジョンを崩壊させた鬼神……」

「そのような噂もありますな。真偽のほどは分かりませんが、しかし鬼神ではなく人間だと聞いております。同様に山を吹き飛ばしたとも」

「魔法でか?……まさか詐欺師ではあるまいな?」

「いえ、顔と姿が知られていまして。名のある魔道士であることは確かなようです。なんでも銀色の髪に紫の瞳、鎧がオリハルコンと。確かにそのような容姿であったとのこと」

「ほう……有名なのだな」

「はい……」

「では一度会っておこう。ここへ」


 ギルは黙った。


「それが……まだ来ておりません」

「来てない? いつ来るのだ?」

「それが……途中までは連絡があったのですが、現在連絡が途切れておりまして……こちらに向かっていることは確かなのですが」

「ふーむ」


 ドルフは軽くため息をついたその時。辺りが騒がしくなった。そして、もう一人の伝令兵が、息を上げて天幕にやって来た。


「敵が動き出しました!」


 ドルフは少し考えた。


「どうしますか? 閣下?」

「前線には多少部隊がいたな」

「はっ、しかしそう長くは持ちますまい。敵の数が数です」

「仕方がない、ここにいる兵を増援で向かわせるしかあるまい」

「はっ」


 ギルは天幕の外へ出ると声を上げた。


「迎撃の用意ーっ! 前へーっ!」


 ギルの号令と共に、武器を手に各々の天幕から出て来る兵士たち。ラッパが吹かれ、兵士が次々と並んで行く。兵士たちに緊張が走る。


 遠くから聞こえる小さな爆音。かすかな閃光。


 その時だった。


◇


 慌てふためく兵士たちの頭上を、一つのシルエットが優雅に大きく丸く弧を描いた。それは連絡用のグリフォンだった。その背には小さなシルエットがあった。

 グリフォンは羽ばたき、発着場に舞い降りた。そして、小さなシルエットが地上に降りた。

 マントが翻った。


「お待たせ」


 青い暗闇に、彼女の紫色の目が輝き、銀色の髪が風にたなびいていた。




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