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魔王教習所【毎日1話投稿、全24話完結済】  作者: 隣之 芝生


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第十六話 崩壊する設定

 びっくりして勇者が飛んでいった方に向かったら、ボロボロになって倒れてた。

 兜も鎧も割れて千切れて外れて、鎖帷子だけになってる。

 成長途上の勇者って大変なんだな。

 あれぐらいで、こんなになっちゃうなんて。


 でも、さすが勇者。

 大胸筋がすごい。

 強そう。

 あと、ロン毛。

 古い。

 呼び出された元の時代が違うのかな。

 それとも一周まわって新しいのかな。


「……聞こえた。……ノンちゃんって呼んだ。……ニイなんだろ」

「ニイは死んだことになってるから、僕はケイだよ」


『もう滅茶苦茶ですが、モタモタしてると勇者が死にます』


 勇者が何か言おうとして血を吐いた。

 エリクサーみたいな薬を飲ませたら良いのかな。


『そういうのは有りません。あなたの心臓を勇者に食べさせれば死にません』


 へえ、それはすごい。

 一石二鳥っていうやつだね。

 魔王は死んで、勇者は生きて帰れる。

 最高だ。


 早速、自分の手を胸にグサっと突き刺して、ぐりぐり動かして心臓をさがして、引っ張り出した。

 取り出した心臓を勇者の口に押し込んでみたけど、上手くいかない。

 どちらかというと窒息死させようとしてる感じ。


『あなたが噛み砕いて、口移しで飲ませてください』


 えぇー、口移しぃ?

 それは勇者が嫌がると思うし、僕もちょっと、どうかと思う。

 でも、そろそろ僕も死にそう。

 仕方ない。

 フルフェイスのヘルメットを脱いで、自分の心臓を噛み砕いて、勇者の顔を見たら、ニコニコしてる。


「……やっぱり、ニイだ」

「ごめんね、ノンちゃん。ちょっと我慢して」


 もう抵抗する力も無いのかな。

 勇者はされるがままで、何とか飲み込ませて。

 そしたら、勇者は血を吐かなくなって。

 僕にもやっと何か出来たと思って、満足して目を閉じた。

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