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やがて君を魔女にする  〜異能ゼロの俺、最弱魔法少女を世界最強に育てる〜  作者: 蒼久保 龍
第十部 他部隊の夜襲、関係の警告

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121話 敵部隊の警告無視、対立激化

【前エピソードのあらすじ】

買い物に出かけた夜、フィナと俺は他の魔法使いたちの奇襲攻撃を受ける。

 が、運よくその弾は外れた。


「やっば……」


 フィナは思わず声を漏らし、手足が震え出す。


 が、怯えている暇はない。


「囲まれてるから、隙を見て抜けるぞ」


 俺はチラリと後方、上空を順に見る。


 上空は小石魔法を使ってくる魔法使い。

 さっきは見えかけていた姿が今は見えない。


 逃げたか、高度を上げたか……。

 なんとなく、後者だと思う。


 俺たちの背後は片手鎌魔法を使って切り掛かってきた魔法使い。深い青色の髪をショートカットにしていて、かなり細い一重だったように見えた。


 そして、前方は弾丸魔法を使う魔法使い。グレーの髪の毛で目元は見えなかったが、あの風貌とこの魔法は鮮明に覚えている。


 クロエの協力者である小林を3人で撃退した後、いきなり現れて俺へ弾丸魔法を撃ち込んできた女。


 そのあと、アカリに一瞬で気絶させられていたっけか。 


 しかし、瞬間で分かったことはこれだけ。


 ただ、他の魔法が使える可能性もあるし、宝具を持っていることも確実。

 さらに、もっと他の魔法使いが控えているかもしれない。


 かなり、まずい状況だ。


 フィナと俺は背中を合わせて前後を見る。

 そして、フィナは棍棒を構えたまま、深呼吸をしてーーやや怯えたような声音で弾丸の魔法使いの方を見て言う。


「いきなり襲ってくるなんて、マナー違反でしょ!?」


 フィナのその言葉に対し、弾丸の魔法使いが静かな声音で言う。


「ごめんごめーん。あなたから宝具を奪うつもりはないわ。決闘をしに来たわけじゃない」


 表情は見えないが、声音から、おそらくフィナを相手に完全に舐めていると分かる。


 かなり上から目線の口ぶり。


「って、あなた、あの時の!」


 フィナは思い出したように声を上げる。

 すると、弾丸の魔法使いは煽るような口ぶりで言う。


「思い出した? この間、魔女狩りの密会現場で会ったわね」


「あの時は……!」


「ごめんごめん。本気で悪気は無かったの。隊長が言ってた通り、あなたたちが気絶させていたあの凡夫に、私たちの同門が何人か被害に遭っていてね」


 弾丸の魔法使いがそう言うと、フィナは叫ぶ。


「……あなたたちの隊長って、あの時、私の目の前で人を殺そうとしていたーー」


 まずい。


 フィナはあの時のことを思い出しながら、ふつふつと感情が熱くなっているように感じる。

 

「私は形の魔女の弟子、六〇〇一二番隊隊員、弾丸の魔法使いアナ。水の魔法使いへ警告」


 警告?

 しかし、部隊名が異様に長いことが気になる。六万番台の部隊とかあるのか。


「昨日、法則の魔女の弟子、忠犬の魔法使いアカリと接触したでしょ」


「接触? 私とアカリちゃんは友達なだけでーー」


 そう言ったフィナの言葉を遮るよう、俺の正面に立つ片手鎌の魔法使いが言う。


「私たちの部隊の方針として、忠犬の魔法使いアカリを殺すことが決定した。忠犬の魔法使いと接触する魔法使いには忠告するよう隊長から指示があってね」


「なっ!?」


 背中合わせで立つフィナの動揺した声音。


 いや、まずい。

 こんな囲まれた状態でフィナのスイッチが……。


「調べたところ、忠犬の魔法使いはあなたと仲が良いみたいだけど、元殺し屋で、現世でも何百、何千と人を殺した悪人との噂がある。実際、帝国からも、こっちの世界でも懸賞金がかかっている殺人鬼」


 フィナはその言葉を聞いても動かない。


 アカリに関する非常に悪い噂。

 そして、そのアカリを殺すと宣言した目の前の女。


 フィナは冷静さを保てているだろうか……。


 俺は今、彼女の背中しか見えないからわからないが、プルプルと震えているように見える。


 この震えは怯えの震えではなさそうで、おそらく感情の昂りからくるもの。


「これは警告。私たちは忠犬の魔法使いだけを狙う。忠犬の魔法使いと取引をしているようなら、あなたたちも私たちが成敗する。けど、邪魔をしなければ、罪のないあなたたちを襲うことはしない」


 アナはそう言うと、目の前の片手鎌の魔法使いは背を向けて立ち去ろうとする、


 その瞬間、ちらりと背後を見ると、アナも視線を切ってどこかへ歩き出したらしい。

 どうやら、本当にその忠告だけが目的だった、とのことだが。


「フィナ。言いたいことはあるだろうけど、今はーー」


 俺は相手の様子を見て、フィナの方は身体を向けて、宥めるように言おうとした。


 その時だった。


「待って」


 アナは歩きながらこちらを振り返る。

 まずい、止めないと。


「……何?」


「ちょっとフィーー」


 俺は後ろから両手でフィナの肩を掴んで止めようとするがーー。


「さっきの噂は何? アカリちゃんを殺すって、どういうこと!?」


 俺の制止を振り切り、フィナは忠告をしたアナの方を一心に見て、単刀直入に言う。


 まるで、俺のことは眼中に入っていないようだ。

 アナは、フィナに向き合っている俺の背後から、淡々とした声音で答える。

 

「言葉の通りだけど。これは忠告、貴方の部隊じゃ、絶対に私たちには勝てなーー」


「殺すって、本気で言ってるの?」


「おい、フィナ。今の状況を考えーー」


 俺はもう一度フィナの肩を掴んで揺らしながら言う。


 しかし、フィナは俺の目を全く見ず、アナのことを睨み続けている。


「私は隊長の言葉を伝えに来ただけ。でも、隊長は本気だと思うわ」


 そんなフィナに対し、容赦のない一言。

 やはり、言葉の節々からも、フィナは完全に舐められているように感じる。


「……なんでそれを止めないの」


 フィナは迷わずそう言う。

 どうやら手遅れらしい。俺はフィナの両肩を持った状態のまま、周囲を眺め打開策を考え始める。


 上空の小石の魔法使いと、目の前の片手鎌の魔法使いを交互に見る。


 まずは囲まれている状況の打開。

 上空は俺が飛べないからフィナの機動力も落ちる。

 包囲の穴は、やはり片手鎌の魔法使いの方か。


「……止める? ふふっ。なんで?」


 軽く笑ってあしらうように言うアナへ対し、フィナはカチンときたように大きな声で訴えるように叫ぶ。


「本当に殺そうとしているんなら止めないとまずいでしょ!? 人を殺すってことが、どれほど重たくて、痛くて、辛いことか!」


 暗がりの静かな夜道に、フィナの切り裂くような声が響いた。

 一歩、アナの声音は冷静だった。


「だから、忠犬の魔法使いはこの世界からも、帝国からも指名手配を受けてる大罪人だってーー」


「あなた、アカリちゃんと話したことがあるの……?」


 先ほどの叫び声とは打って変わって、静かに憤りを露わにするような、フィナの深く、静かで、真剣な言葉。


 ……暗い夜道に、沈黙。


 一秒、二秒、と、3人の他の魔法使いは誰も何も言わない。


 俺はアナの表情こそ見えなかったが、フィナの背後に立っていた片手鎌の魔法使いは鬱陶しそうにフィナの背中を睨んでいる。


 そこに、梅雨の夜の生温い夜の風が吹くと、続けてフィナが声のボリュームを上げて言った。


「話したことがないからそんな酷いことを言えるんじゃん! あなた達だって、自分の友達が殺されるって聞いたら、止めるでしょ!?」


 正論を振りかざすフィナに、俺の後ろから片手鎌の魔法使いの声が響く。


「ねえ、悪党の肩を持つなら、こいつも隊長に首を突き出さない?」


次回の投稿予定日は5/9(土)です。

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