第4話 ガチャタイム①
共通ギルドを出た俺たちは「ラミナ」の
中の大通りである「クロス」に来ていた。
ここにはクエストや武器の整備等に使用する道具を売り買いしている道具店や、武器や防具の販売をしている武器屋、武器や防具の整備をすることができるレベル50以上のプレイヤーにのみ使用ができる武器・防具整備店、そして年に2回だけ臨時設置されるガチャ施設がある。
初めて来た俺とツカサは目を輝かせていた。
プレイヤーがたくさんいる。
それぞれ自分のやりたいことをやっていた。
どうりで「自由度が高い」ってみんなが言っているわけだ。
翼、リナ、ミズキは何度か足を踏み入れたことがあるらしく、プレイヤーの数には驚いていない様子だった。
俺らはまずそれぞれ2個ずつ持っているガチャを引くことができる超レアアイテムの"輝石"でガチャを引くことにした。
もしも武器屋で武器を買った後にガチャを引いて被ったら嫌だからな。
ガチャが設置されている場所の前に行くとその施設の前に動物が立っていた。
「なんだこのタヌキは」
翼がその動物を見てタヌキだと瞬時に判断した。
確かにタヌキだ。
よく飲み屋とかの前に置かれてる木製で作られた彫刻みたいなタヌキだ。
「銅像か?」
翼が触ろうとするとタヌキの目がギョロリと動いた。
「うわっ!」
翼が露骨に驚いた。
「気安く触るなだポン!」
ポン…?
それより喋った?
確かにバトルフィールドにはたくさんの大型動物や小動物がいる。
それを狩るクエストもあるくらいだからな。
しかし、この安全地帯である「ラミナ」
には動物は存在しない。
その時点でこのタヌキがここに存在する理由が2つに絞られる。
バグか…それとも…動物ではないか。
前者よりも後者の方が理由としては強いな。
だって喋ったもんこのタヌキ。
「どうやら僕の事で困惑してるみたいだポンね!教えてあげてもいいだポンよ?」
「本当か?じゃあ教えてくれよ!なんでタヌキがここにいるか!」
ヘラヘラしている翼がまた馴れ馴れしく頭を撫でようとする。
しかし、
バシッ。
タヌキが翼の手を払った。
「って!何すんだよ!」
タヌキは依然として笑顔のままこう答えた。
「僕に馴れ馴れしく触ろうとしないでほしいポンね…僕にはこの安全地帯でプレイヤーにダメージを与えることができる権限を持っているNPCAIポンよ?更にはガチャで排出される武器の管理も任されてるから最高の武器を用意することができることを忘れないでほしいポンね…」
静かに、でも俺ら全員に聞こえる声で言った。
なるほどな。
こいつはガチャでの不正行為をしたプレイヤーを見逃さない為に例え安全地帯だとしてもプレイヤーにダメージによるペナルティを与えることができる存在だというわけだ。
いや、ガチャ以外の各店舗でもこいつの目は光ってそうだ。
なかなかクロミナでの不正は見逃してくれなそうだ。
心強い。
翼は何も言い返せなくなり、静かに頷いた。
そのタヌキはよろしい、と大きく少し大袈裟に頷くとポン、と胸に手を当てて自己紹介を始めた。
「僕の名前はガチャ管理人の"ポン太"だ
ポン!知っておいて損は無い名前だと思うポンよ?」
するとポン太は俺らの自己紹介を待たずにガチャのあるブースへと俺らを案内した。
「これが今日限定のガチャ、"5周年記念ガチャ"だポン!今強い道具、武器、防具の排出率が高まってるポン!引くなら今しかないポンね!」
ポン太の言葉に俺らは緊張の色を見せる。
年に3回の勝負だ。
みんな輝石は2個。
ちなみにレベルアップによる輝石の配布はレベルアップした日の次の日に配布されるため、意味がない。
さぁ、誰から引くかという話になり、翼が年齢順にしようぜと提案したため、特に異論はでなかったのでその案でいくことになった。
ミズキ→俺→リナ→翼→ツカサの順だ。
ミズキは特にチャットを打つこともせずガチャを2連続で引いた。
1回目にでたのは防具。
【聖装具・パルティア=ヘッド】LV.1
自身のレベルアップと共にこの防具のレベルも上昇していく。
〔特殊能力〕魔力+500
防御力870/耐久値620
「わあ!いいなぁ!【聖】シリーズ!魔法を使う私とミズキにとってはとても有能な防具じゃない!」
リナが声を上げる。
防具はそれぞれ頭・胴体・脚の3つに分かれている。
1つ装備するだけでも十分力は発揮するが3つ、しかも同じシリーズ、系統のもので揃えるとさらに力が上がる。
まぁ中にはキャラクターがすでにそれ専用のフルセット防具を装備している状態で排出される場合もある。
【聖騎士】シリーズはそれだ。
ミズキは2回目に引いたガチャを確認する。
道具だった。
【生命の聖水】
この道具はプレイヤー1人を気絶状態や特殊な気絶から完全回復させることができる。
使い捨て使い切り。
なにそれ欲しい。
ここで言っている"特殊な気絶"っていうのは石化も含まれているだろう。
これはグループメンバーが持っていてくれるだけで心強い。
翼も素直にその道具の存在を褒めていた。
リナはテンション上がりっぱなしだった。
ツカサは緊張でガチガチだったが、ミズキのガチャリザルトを見てパチパチと拍手を送っていた。
次は俺だ。
ぶっちゃけ言って欲しいものはあまりない。
防具も武器も最高レベルだからな。
でも強いて言うのなら道具が欲しい。
備えあれば憂いなしと言うからな。
もしもの時の為に!
頼むっ!
俺は2回連続でガチャを回す。
ガチャと言っても駄菓子屋とかにありそうなガラガラ回すやつではなく、スクリーンに表示されている「ガチャる!」のボタンを押すだけのいたって簡単な作業。
1回目のガチャリザルトは…防具だった。
それもさっきの…。
【聖装具・パルティア=ボディ】LV.1
自身のレベルアップと共にこの防具のレベルも上昇していく。
〔特殊能力〕魔力+750
防御力1020/耐久値700
まさかのミズキが出したシリーズの今度は体か。
俺は無償でミズキに防具をあげた。
「ミズキ、これやるよ」
すると驚いたように表情を変え、
[いいの?]
とチャットを打ってきた。
「いいよ。俺は魔法は使わないからさ。
魔法使いの人に魔法の能力値はあげてもらわなきゃね。」
俺はその防具を渡した。
クロミナ界では道具、武器、防具のグループ内だけでの交換が可能である。
もちろん無償で受け渡すことも可能だ。
それがまた面白い。
しかしミズキは俺から防具を受け取ると
[ちょっと待って]
というチャットを飛ばしてきた。
なんだ?
考えていると俺に道具が届く。
[ミズキさんから道具が届きました。【生命の聖水】]
え?!
「おい、ミズキ!これ…すごい使える道具だぞ?!それに俺は無償であげるって言ってんのに…」
チャットは返ってくる。
[カイトが持ってた方がいい。カイトが使いたい、使うべきって時に使って。]
らしい。
ならありがたく頂戴しよう。
「ありがとな。」
感謝の言葉を忘れずに。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
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