第2話 悲劇の後
「お花畑でお花摘み」のクエストで予期せぬ敵、魔王軍に遭遇した俺らは5周年記念の花火を見た後、馬車で安全地帯である中心都市「ラミナ」へ向かっていた。
馬車は(ゲームなので)3分ほどで目的地に到着した。
クロミナは現実世界の時間と同じ時間が流れているため、あたりはもうすっかり暗くなっていた。
「ガイア」などのバトルフィールドではフィールドによっては夜中でもずっと太陽が昇っていたりと、特殊な例もある。
「ガイア」はそれだ。
「ラミナ」に着いた俺らはもう0時30分をまわっていたことから共通ギルドに向かう前に馬車降り場で解散となった。
流石にみんな眠そうだった。
ツカサに関してはプレイ中寝ていた。
寝落ちってやつだ。
その隣にいたショタコンお姉さんはツカサの寝ているところを見てある意味堕ちていた。
快……いや、やめておこうか。
解散し、クロミナホーム画面に戻る。
そして今度は携帯のホーム画面に戻る。
そのまま電源を落とす。
流石に眠いな。
色々とあった一日だった。
分かり始めてはいたが、俺はクロミナの世界にどっぷりハマっていた。
翌日、といっても既に4月8日(金)だが。
高校に登校する。
俺が席に着いて眠たい目をこすっていると黒川さんが登校してきた。
俺と同じく眠そうだ。
俺は聞いてみた。
「黒川さんも寝不足?」
黒川さんは席に座りながら答えた。
「ええ、昨日のクロミナの5周年アニバーサリーをやってたので…」
へぇー!
結構みんなその時間のために待機とかしてるのかな?
俺はたまたまだったけどな。
「そうなんだ…実は俺も。」
俺と黒川さんはお互いテンションが低かった。
眠気との戦いになりそうだ。
そういえば今日から授業が始まる。
高校の授業、とても楽しみである。
と、思っていたが。
今日は先生と生徒の自己紹介で全授業が終わった。
まだ入学したてというのもあるのか、午後3時には終わった。
まぁこういう日もあるわな。
放課後になり、俺はそそくさと帰ろうと準備をしていた。
隣では黒川さんがスヤスヤと眠っていた。
相当昨日寝てないみたいだな。
そっとしておいてあげようと思い、帰ろうとした。
ふと黒川さんの声が聞こえてきた。
寝言か?
「うん…むにゃ…え…ばー…ト…わたし…の…」
私の?
幸せそうな顔して何言ってんだか。
俺は鞄を持ち上げ下駄箱へと向かった。
帰宅後。
時計の針は3時30分を指していた。
そういえば、あいつらとの今日の集合時間の約束してなかったな。
どうするんだろ?
俺はクロミナを起動させる。
「カイト2027」でログインすると青空の下に立っていた。
すぐ後ろが馬車降り場だ。
すると画面にはアップデートのお知らせが。
どうやら5周年記念ということもあり、新たな機能も追加されるようだ。
俺はアップデート内容を確認した。
だいたいバグや、機能面の向上だったが、1つだけ有益な情報があった。
《一度ホーム画面に戻らなくてもログインした状態で他のアカウントにアクセスするアカウント共有ができるようになりました。》
これは有り難いな。
面倒な作業であるとともに一度シャットダウンしなきゃいけなかったからな。
アップデートを完了させた俺はグループチャットで収集をかける。
[いるか?いたら返事くれ]
5分ほど待っただろうか。
通知が届いた。
[ごめん、遅れて。今からできるよ]
ミズキからだった。
するとすぐにミズキの姿が見えてきた。
俺は依然無表情のミズキに話しかける。
「早いな。大学は無いのか?」
するとすぐ返ってくる。
[大学は今まだ春休みよ。]
そういえばミズキは大学1年生だったよな。
ということは今年度から1年生か。
俺はミズキにまた話しかける。
「話変わるけどな、ミズキ。ツカサ見て堕ちるのやめろよ…ツカサも困ってたぞ?」
チャットは返ってくる。
[分かってる…でもつい可愛くて。ああもう、あんな弟が欲しい!]
だめだこのショタコン。
「どこがいいんだ?」
俺は問いかける。
[どこがいいって、全てよ。あのもじもじとした仕草、くりっとした目、柔らかそうな白い肌!]
うわぁ。
「でもさ、ミズキ。それはゲーム内のスキンだろ?現実世界だったら全然違うかもしれないぞ?」
[それはないわ。]
即答だった。
「なんで?」
普通に聞く。
随分と長いチャットを書いているみたいだ。
そして届く。
[ツカサ君のアカウントから色々なツカサ君らしき人のソーシャルネットワーキングサービスに飛んだわ。そしたらトプ画の写真とか発言とかが全部幼かったし、目の色は違うけど顔は似てたの。それで私が思うにツカサ君の年齢は推定だけど10歳くらいね。]
こっわ。
何このショタコンお姉さん。
普通に特定しててまじ怖いんですけど。
こんな人近くにいるって思うだけで寒気が凄いんですけど。
「そんなことしてるんなら俺がツカサに言っとくわ。」
[やめてぇ?!]
急に平常心を乱すお姉さん。
「ツカサにこのことを知られたらツカサはどんな顔でどんな事を言うんでしょうねぇ?」
俺は煽った。
全力で。
ショタコンお姉さんはたくさん弁明してきた。
その時。
「僕の話ですか?」
ツカサが微笑みながら入ってきた。
びくんとミズキが数センチ飛び上がった。
俺はミズキの方を見てニヤリと笑ってみせた。
ミズキは俺を力ずくで止めに入った。
[ごめんごめんごめん、もうしませんもうしません。]
という個人チャットを打ちながら。
はぁ。
やれやれ。
まだ3人しか集まってないんだぞ。
もう疲れてきた。
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まだまだ長そうです…。
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