正直になる薬
ショートショートです。
「主任、ついに飲むと副作用もなく、本音がダダ漏れとなる理想の自白剤が完成しました」
俺の報告に、わが研究所の誇る美貌の女主任は肩をすくめた。
「なにかやっていると思ったら、なんだそれは。あれか? それを飲むとわたしがおまえを好きだとか口走っちゃう薬だとでもいうのか? ハッ、ばかばかし……!」
そこまで言ったところで、主任が自分の口を押さえた。
……えーと、主任。いまさらっと変なことをおっしゃいませんでしたか?
「いや、その。これはちがう。ちがうんだ。本音じゃなくて、たしかに嘘でもないけどって、あわわ」
「まだ、薬のんでないですよね?」
ニヤニヤ笑いながらツッコミを入れると、主任が渋い顔をした。
「お、女に薬をのませて愛の告白させるなんて卑劣すぎる」
ぷいと顔をそむけた。
「わたしはおまえがそんな卑怯なことをしないですむようにしてやったんだ」
「それはそれは。ありがとうござます」
いましがた机のうえに置いたばかりの薬瓶を、俺は手にとり直した。
「しかし、飲むまえから効果を発揮するなんてすばらしい薬ですね。まさに理想の自白剤だ」
そういって、ショートショートにふさわしい軽いオチをつけようとすると、主任はむーと唇をとがらせた。
「だれがうまいことを言えといった。そういうセリフをはくのはおまえの正直な気持ちを打ち明けてからにしろ。じゃないと効果が完全かどうか」
「好きです、主任」
とたんにわが麗しの女主任あらため相思相愛の俺の新恋人は真っ赤になってうつむいたのだった。
このあと滅茶苦茶なにかをするふたりでした。




