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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第四章 6番目の勇者
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ごめんね

「シノ」


もう一度、彼女の名前を呼ぶ。


恐る恐る俺を見上げてくる彼女に、先程俺に謝罪した彼女に、言わなくてはいけないことがある。


「ごめん」


俺の口から出たのは、謝罪の言葉だった。


少しの言い訳も、なんに対しての謝罪なのかの説明もない、ただの『ごめん』。


この謝罪には、様々な意味が込められている。


そのすべてをシノが理解してくれるとは思わない。だけど俺は、謝りたかった。


謝ることで自分だけスッキリしたいだとか、そんな事は少しも考えちゃいない。


ただ俺は……俺は……


「どうしてそんな……泣きそうな顔をして謝るんだ?」


シノの顔もまた、悲しそうで、今にも泣きだしてしまいそうで……


「サクラは何も悪くない。悪いのは……ボクだ」


「………シノ」


呼びかけるが、彼女の言葉は止まらない。


「サクラの気持ちも考えないで、勝手に押し付けて、勝手に期待して……。ボクがサクラに助けてもらったから、『サクラは皆をたすける人』なんだって……勝手な理想を作って……。ーーーサクラ!ごめっ……」


「シノ」


彼女の名前を呼び、彼女の手を取り、その謝罪を止める。


「ーーーっ!」


急に手を取られた為、シノはビクッと、肩を震わせる。だけど、すぐに落ち着いてくれた。


俺にだけ恐怖を覚えないシノが、たまらなく可愛らしい。


そしてそんなシノに、伝えなくてはいけない事がある。


「俺、アイラを助けに行くよ」


「………え?」


シノから漏れたのは、困惑の声と表情。


嬉しそうな。だけど、どこか悲しそうな。


「俺は俺の意志で、俺の為にアイラを救いにいく。俺はシノが言うような人じゃない。だけど……アイラを救いに行くよ」


そうだ。アイルが教えてくれた。


誰かの為じゃなく、自分の為に行くんだ。


「………サクラは、本当にそれでいいのか?」


「あぁ」


俺がアイラを救うことを望んでいたくせに、シノは問うてくる。


そして、俺の答えを聞くと……


『ぽふっ』っと体重を預け、俺の胸に顔を埋めてきた。


その行動に驚きはしたが、黙って受け入れる。


「………本当に行っちゃうのか?」


尚もシノが問うてくる。


シノは俺に、アイラを救ってほしいのでは無いのか?


「……いくよ」


「本当に本当に、本当に行っちゃうのか?」


「もう決めたんだ」


シノは埋めていた顔を上げ、力強く頷く俺を見た。


「全部全部、サクラが初めてだったんだ」


俺を見上げるその瞳が、わずかに潤んでいく。


「触れていて怖くない人も、もっと一緒にいたいと思えた人も、ーーーボクに優しくしてくれた人も」


だが、その涙が流れることはない。シノは片手でゴシゴシと涙を拭い、必死に何かをこらえる。


「名前のないボクに『シノ』って名前をつけてくれた。何度も何度も呼んでくれた。危ないときは守ってくれたし、辛い事は『はんぶんこ』してくれた。ボクはそんなサクラが……大好きだ」


わずかに頬を赤らめるシノ。


第四勇者(あいつ)に攻撃を当てるのは大変な事だ。それに、失敗したらサクラは死んじゃう。……サクラが死んじゃうのは絶対に嫌だ。だけど……」


そこでシノは俯いてしまう。そして、もう一度力強く俺の体を抱きしめた。


数秒の後、震える声を吐き出す。


「ボクに優しくしてくれたその手で、他の誰かを救ってほしい。他の誰かを笑顔にしてほしい。サクラは、それが出来る人だから……いっぱいいっぱい、誰かを助けられる人だから……」


段々と声の震えが大きくなっていく。


泣かないように、俺を不安にさせないように頑張ってきたシノであったが、とうとう限界が来てしまう。


「だけど……サクラが危ない目に合うのは……イヤだ。…………サクラが死んじゃうのは………イヤだよぉ……」

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