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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第四章 6番目の勇者
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それだけはダメ

「ちょっとこっちにきて」


とても怒っている様子のシノに腕を掴まれたのは、アイルと二人でルミナの家に帰ってきたときだった。


隣にいるアイルには目もくれず、俺を玄関から連れ出そうとする。


アイルに目配せすると、彼女は小さく頷いた。


なので俺は、抵抗することなくシノに従う。


シノは俺の手を引いたまま黙って寝室へと移動した。


ここには初めて入る。ルミナの…女の子の家の、それも寝室だなんて、普通なら興奮したりするものなのだろうか。だが今は、並々ならぬ様子のシノが気になってしまう。


確認するまでもない。シノはとても()()()()()


理由は……きっと俺にあるのだろう。


この家を飛び出す前、汚い言葉をかけ、彼女を怯えさせてしまったのだから……。


「……(あの子)が悲しんでる」


そう言いながら振り返ったシノの顔は……()()()()()()()()()()()


「とってもとっても悲しんでる」


………いや、今のは少し語弊がある。


可愛らしい目も、頬も、口も、桜色に輝く髪も、全てがシノのもので間違い。


だが、表情……雰囲気とでもいうのだろうか。それがシノのものでは無かった。


「……百歩譲って、『悲しい』ことは別に構わない。それですらも、あの子が持てなかった大切な感情なのだから。だけど今、(あの子)は自分を責めている」


そこでようやく理解する。目の前にいる彼女は、シノであってシノではない。つまり……


「お前……シビラか?」


シビラ・ハーゲン。シノと体を共有するもう一つの人格だ。


「自分を嫌いになっちゃうのだけは絶対にダメ。自分を()()()()()()()()()()()()()()。そうしないとまたあんな事を……」


シビラは俺の質問に答えることもなく続ける。……シビラの言っている言葉の意味がよくわからない。


「シビラ、一体何を……」


「ねぇ、君。何があったのかは知らないけど。もっとちゃんとしてほしいな。……(あの子)に何かあったらーーー()()()()()()()()()


シビラの瞳には、"色"が無かった。広がるのは無限の暗闇だけ。姿形はシノなのに、何もかもが違いすぎる。


思わず、その迫力に気圧されてしまう。全身から汗が吹き出す。


「わかった?」


「……わかった」


シビラの言葉をすべて理解した訳ではない。だが、その"圧"に押され、思わず返事をしてしまう。それほどまでに……怖かった。


「よろ……しい。それじゃあ後はよろしく」


そういうと、いつの日かと同じように、シビラは意識を失ってしまう。


倒れそうになるシビラの体を、俺は慌てて支えベッドに寝かせてやる。


そして、しばらくすると……


「ん………?サク……ラ?」 


今度は、間違いなくシノだった。

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