もう一度会いたい人々
この夢は終わらせない。………たとえ何を犠牲にしても。
この願いは奪わせない。………たとえ誰を犠牲にしても。
この想いは消させない。たとえ世界を……犠牲にしても。
縋っても、騙しても、奪っても、犯しても、蝕んでも、這いずってでも叶えてみせる。………たとえ貴方に嫌われようとも
そう、たとえ……魔女と呼ばれようとも。
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「王都にとうちゃ〜く!略しておうちゃ〜く!」
馬車を降りた瞬間、ルミナは両手を伸ばしてはしゃぎ始めた。
それを呆れ顔で見ているシノとここまで運んでくれたお馬さんの頭を撫でるアイル。
そして俺は……
「…………」
あたりを見回していた。
グランツよりもさらに、人が多い。それもそうだ、ここは王都なのだから。
ペンダントを軽く握る。この街のどこかに城があって、その別邸にアイラがいる。
この世界に召喚され、無能の烙印を押されるまでの日々が、遠い昔のように感じられた。
リープはただの猫耳メイドで、アイルはとても無愛想で。何気ない日々で、だけどそれが大切で。
俺の周りは変わった。人も、状況も何もかも。
だけど……『彼女』だけは変わらなかった。
自分と世界の罪に苦しみながらも、ずっと俺に笑顔を向けてくれた。
本当にずっと……。
アイラにもう一度会いたい。いや……
無意識のうちに、すでに完治している肩に触れる。
アイラだけではない。リープにだって会いたい。
あんな事をされたのに、そう思うのはおかしいのだろうか。
「サクラくん?どうかしましたか?」
アイルが顔をのぞき込んでくる。思いの外長い時間黙ってしまっていたようだ。
「いや、なんでもないよ」
彼女も、すごく変わった。
城にいた頃のアイルはもがいて、苦しんで。
『才能ある勇者』を呼ぶために『無能な勇者』を処分する世界に対して疑問を持ちながらも、それを見てみぬふりをする自分に罪悪感を………。ってあれ?
「…………」
アイルの顔をジッとみる。
「ど、どうしたんですか?」
するとアイルは、頬を赤らめながらうつむいてしまった。
まだきっと、彼女の罪悪感は消えていない。彼女が明るく振る舞うものだから、そんな簡単な事を忘れていた。
いつか……いや、近いうちに彼女の罪悪感も、『はんぶんこ』できたらいいな。
「なんでもないよ。………これからどうしようか」
「そういえば何も決めていませんでしたね」
馬車の中で今後の予定を話すつもりでいたのだが、ルミナのせいで話し合えませんでした。許すまじ。
ニーナの兄……カイトを探そうにも、この街にいるという以外の情報がない。
とりあえずは宿を探すべきだろう。
「アルマー!なんかいい宿しらないかー!」
シノとじゃれあっている(?)ルミナに声をかける。
「ルミナだってばー!………うーん、とりあえずうちにくる?」
「いいのか?」
「うん、独り暮らしだし」
宿を利用するよりも、彼女の家にお邪魔したほうが何かと都合はいいだろう。
グランツを出る前日に、『この街で逃亡中の第六勇者をみた』………という情報をルミナが流してくれたらしく、随分と王都で動きやすくなっているが、リスクは減らすべきだ。
「それじゃあ、お邪魔しましょうか」
「ん」
シノとアイルも同意する。
そんな二人をみてルミナは……
「ぐふ………ぐふふっ。だぁいじょうぶ。何もしないから」
ルミナの両手の指が、まるで別々の生き物のように蠢いていた。
それを見たシノが、『ひッ』っと呻いた。




