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世界の為に死んでくれ  作者: ソラ子
第三章 スティグマ
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少女誘拐事件の犯人

「ガスパーさん………なんで……?」


少女誘拐事件の犯人と思われる人物は……俺達が泊まっている宿の管理人だった。


「貴方たちは…フィーア様のご友人の……」


そこでガスパーさんも俺達に気がついたようだ。


「貴方は何をしにここに来たんですか」


訪ねたのはアイル。先程のスタークと全く同じ質問をする。


アイルは……疑っている。ガスパーさんが犯人なのではないかと。


だが俺は……まだわからない。親しいとは言えないが、知っている顔がそんなことをするなんて……


「先程も行ったとおり……ここには花を……」


「あの宿はあなた一人で切り盛りをしていると言っていたはずです。そんな貴方が宿を離れてこんな場所に?──答えてください。何でここに来たんですか?」


アイルの視線は、アイルの紡いだ言葉は、なんとも言えない迫力があった。ウソは許さない。そんな力が込められている。


「…………」

 

ガスパーさんは言葉に詰まる。これ以上何を言っても意味などないと悟ったのだろう。


「……何でもクソもねェよ。こいつが犯人で決まりだ」


そう言ったスタークの視線の先には、ガスパーさんが持っているロープと麻袋。


……ロープで自由を奪ってから、あの麻袋に入れて……。


「答えろ。連れ去ったガキ共をどこへやった」


狩られる側のガスパーさんには……逃げることなど出来なかった。


少しの沈黙のあと、ガスパーさんは意を決したように口を開く。


「………確かに女の子をさらっていたのは私です」


その瞬間にすべてが決まった。彼は自分の口で、犯人だといったのだ。


信じたくは……無かった。知っている奴が、ニーナをさらった犯人だなんて。


「だが………聞いてくれ!私は()()()()に命令されて!!」


ガスパーさん……いや、ガスパーはそう言ってスタークに縋りつく。


……あるお方?命令?


それが真実なら、実行犯であるガスパー以外に、本当の()()がいるということか?


だとすると、ここでこいつを捕まえただけじゃニーナを救えない。


「……質問にだけ答えろよクソ野郎。()()()()()()()()()()()()ッ!!」


スタークは縋りつく手を振りほどき、その胸を思いっきり突き飛ばす。


「ひっ……」


ガスパーはだらしなく尻餅をつき、恐怖に彩られた瞳でスタークを見上げる。まさに、上下関係は明白だ。


「私の娘が人質に取られて……助けてほしければ小さな女の子をさらって来いと脅されて……」


「はァ………。わッかんねェやつだなァ、呆れを通り越して可愛く見えちまうぜ」


スタークはめんどくさそうにため息を吐きながら、腰を下ろし、ガスパーと視線の高さを合わせた。


そして、ガスパーの右手をそっと握り、自らの顔の高さまで持ってくる。


「…………?」


ガスパーの顔にはてなが浮かぶ。見ている俺も、スタークが何をするつもりなのかわからない。


するとスタークは、ふいに。


ガスパーさんの人差し指を……その関節を………


()()()()()()()()()()()()


グキィ!と、嫌な音が響き渡る。


「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」


ガスパーさんの悲痛な叫び声が木々の間を駆け巡り、その様子を見たアイルとシノは思わず目をそらす。


もちろん俺も、正直見ていられなかった。そこまでする必要があるのか、そう思ってしまう。


……人間の指は、あんな方向には曲がらない。確実に……折れている。


「おい、スターク!手荒な真似はよせ。話を聞くだけでも……」


あのお方。命令されて。


ガスパーは気になることをいくつか言っていた。話を聞く価値は十二分にあるはずだ。


ガスパー以外に、黒幕のような人物がいるというのなら、ニーナはそいつのもとに送られたばかりだというのなら……まだ生きている可能性は……。


いや、可能性じゃない。ニーナは絶対に生きている。そして……救うんだ。俺達で


「おい、なりそこない。今までどれだけのガキが誘拐されたか知ってるかァ?」


「………詳しくは知らない」


「10や20はとっくに超えてんだよ。戻ってきたやつどころか、死体一つ見つかってねぇんだ」


スタークが提示した情報に、電撃が走る。


20を………こえてる?


小さな小学校なら、一クラス分に匹敵する人数じゃないのか?


これが本当だとしたら……俺が思っている以上にこの事件は凶悪だ。


「『手荒な真似はよせ』だとか『話を聞こう』なんて状況はとっくに終わってんだよ」


スタークの言葉に、俺は何も言えなくなってしまう。


彼の言ってることは間違いではない。


誘拐した少女をどこに連れて行っているのか。その答えで、ニーナの居場所と、黒幕の情報も知ることができる。


手荒とはいえ、スタークは一番早い手段を取っているに過ぎない。


「なァ、早く答えろよ。『連れ去ったガキ共をどこへやった?』………早く答えてくれねェとよォ…………。()()()()()()()()()()()()()()?」


スタークはガスパーに向き直りってからニヤリと笑い、次の指に手をかける。


ガスパーは全身から汗を吹き出し、体も小刻みに震わせた。今彼の目に映るスタークの姿は……鬼か、はたまた悪魔か。


「私が連れ去った少女は……」


そして、今度こそスタークの質問に対して、的を得た回答をする。


だが、その回答は、彼がここに来た時よりも俺達を驚かせた。


第三勇者(ドライ)様のお屋敷に連れていきました……。私に女の子を攫うように命令したのも……第三勇者(ドライ)様です」

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