発見
そんなふうに過ごしていると、見張り台から叫ぶ声が聞こえた。
「島だ。島があるぞ」
僕らも見張りが指し示す方の舷側によって、そちらを眺めやる。
その辺りは、靄が晴れていた。
それは一見カリフラワァのように見えた。白い石灰岩でできた岩だけの島のような。
ヘルトリンク教授は双眼鏡を構えて、島を貪るように見る。
「むむ? あれは植物の一種。菌糸だろうか。葉緑素がなく緑色をしていないと言うことは、暗くはないがここには太陽の光はないらしい」
鉱石でモコモコして見えるのではなく、林冠から緑の色を抜いた景色らしい。
グラッドストン教授も自分の双眼鏡を目に押し当てて、唸る。
「うーん。動く物の姿は見当たらないなぁ」
もちろんまだ希望は失っていない。
船長も筒型の遠眼鏡を目に当てながら、
「潮は島に向かっているな。船を付けられそうな、浜か湾を探せ。測量の用意。付けられそうになければ、先生方だけ先に下ろして差し上げろ」
指示を出し、落とさないようにと言う注意を与えたうえで、僕とジョゼに遠眼鏡を貸してくれた。
僕は片目を閉じて、レンズに目を近づける。
拡大された白い島が、視界一杯に広がる。
大きく見えてもカリフラワァみたいだ。でなければ白雲母。
僕はジョゼに、眼鏡を回す。
島には、クインセイレン号が入れそうな湾があった。僕らを運んでくれた潮は、湾の中には入っていなかった。
帆を回して具合よく風を受け、湾に入るよう向きを調節する。測量して海底まで何尋あるか探りつつ、ゆっくりと船を進める。
僕らが船出した岸辺と同じように島の近くまで、深みが続いていた。こちらでは絶壁の先に八メェトルぐらい、棚になった海底があった。深さは二百五十センチほど。
干満の差がどれだけあるか分からないので、クインセイレン号は深みに置いて棚の海底に錨を下ろした。
ヘルトリンク教授はすっかり島の植物に心奪われている。
僕らのGLR号が最初に巻き上げ機で、海面へと下ろされるのに、最初から乗り込んだままになる気のようだ。さすがに揺れる梯子を下りるのは、疲れるらしい。
「次はうちのボォトだ。当番以外の奴は、上陸してもいい。最初のボォトには俺も乗るからな」
船長まで、そんなことを言う。
島を見つけた興奮に、誰もが勢いのまま乗り込もうとしている。僕は慌てて、
「すぐに上陸する気ですか? 島にはあの魚みたいな見たこともない生き物の猛獣が、いるかも知れないんですよ」
「海にだって、壮大な猛獣がいるさ。大海蛇に化け鯨、クラァケン、勿論セイレェンも」
船長は平然と嘯く。
いやいや。海の男だけに、様々な海の怪物とも渡り合っているのかも知れない。
そもそも大海蛇だって、中生代からの生き残りの魚竜かも知れないじゃないか。




