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兄妹戦争  作者: 音吉
プロローグ
2/5

1話

PVが予想以上に多かったので、連載に踏み切りました。

 さて、状況を整理しようか。俺の名前は、木山春基きやまはるき。今年、高校二年にあがった青春を謳歌するはずの男である。

 現在、その俺はというと――自宅のリビングで絶賛正座中である。なぜ? とりあえず前のページを見てください。


 そして、先刻まで俺と熱いバトルを繰りひろげていた女。

 この女こそ、何を隠そう、我が妹――木山千秋きやまちあきである。

 目を惹く端正に整った顔立ちと、長い黒髪を束ねたポニーテールが印象的な少女だ。「可愛い。可憐すぎる。彼女にしたい、いや、むしろ妹にしたい」の3K揃った完璧美少女、とは友人の談。それ、何か違わないか?

「――で、お兄ちゃん」

 そもそも何故、妹である千秋と戦いをしていたかというと……

「先ほど、逢い引きされていた女性はどなたですか?」

「合挽き?」

 ハンバーグの話?

 ジャキッ。またしても喉元に突きつけられる刃先。先ほどから何度も突きつけられているこの冷たい感触のする剣は、我が家に代々伝わるという宝剣エクスカリバー……


 ……という設定にしておいたほうが唯の台所包丁でもカッコいいだろうと、祖父である木山天特きやまてんとくが言っていた。さすがじいちゃん! わかってるぜ!

 まあ、冗談はこれくらいにして……えっ、冗談なの?


「ク、クラスメイトの氷室さんです……」

 阿修羅……ではなく、千秋さまの睨み方か尋常じゃなくなっていたので俺は素早く答えた。

「氷室?」

「ほら、ミス閣条の」

「ああ――氷室さんって、もしかして『銀氷の白姫 (クーラルフ)』のことですか?」

「そうそう、その氷室さん」

 こくこくっ、と目にもとまらぬスピードで素早く相槌を打つ。

 俺と千秋の通う高校は、私立 閣条かくじょう高校。

 全国有数、トップクラスの偏差値を誇り、各運動部の成績は他の高校の追随を許さないほどの超エリート校である。なお、俺の家からは徒歩一五分の位置にあります。

 そして――なぜ、俺がこの高校に入ったかと言うと。

 閣条。

 名前、カッコよくないですか?

 えっ、それだけかって?

 それだけです!


 まあ、それは置いといて。

 説明しよう!


 ミス閣条とは!

 心・技・体。全てにおいて閣条に通う女子の頂点。ミスター閣条と並ぶものである。

 毎年行われる秋の閣条祭という学園祭のメインイベントである「全学年一斉投票」。そこで全校生徒男女構わず一票ずつ投票し、投票数で一番になった男女をそれぞれミスター閣条、ミス閣条と敬意をこめて呼ばれるのだ。


 そして、氷室冬華とは!

 その「全学年一斉投票」で見事一位を獲得し、栄えある第九九代ミス閣条になった女子生徒のことである。彼女には敬意と称賛をこめて「銀氷の白姫」の通り名があるのだ! そこっ、中二病とか言わない!


 以上、説明終わり!


「で、その『銀氷の白姫』さんと、どうしてお兄ちゃんが一緒に逢い引きなんかしていたんですかね……!」

 千秋の額に角が見えるのは気のせいだろうか。俺は浮気が妻にばれた夫のように粛々と正座をしながら答える。

「そ、それはですね。わたくしめと氷室さんの帰る方向が偶然同じだったとかでは……」

「ダメです」

「……ダメですか」


「委員会が同じで、とかでは……」

「ダメです」

「……ダメ、デスヨネ」


 だんだん苦しくなっていく俺。というか、自分で自分の首を絞めていく俺。

 言い訳を一瞬で切り返されるこの状況でもう下手な嘘はつけない。さっきから軽い嘘をつくたび、千秋の眼光が徐々に鋭くなっている。

 その先に待ちうける、暗黒の未来予想図を悟った俺は正直に話すことに決心した。

「その、実は……な」

「……実は?」

 額から一筋の汗を流す千秋。

「氷室さんに……」

「氷室さんに……!?」

 ごくり、と口の中の唾液を呑み込む千秋。

「告白されましたぁ!」

「お兄ちゃんの、バカあああああああああああああああああああ」

 グッと親指を立てる俺。

 拳を固めて、勢いよく俺に殴りかかる千秋。

「ァジャポッ」

 顔に拳がめり込んでノックアウト、一発KOな俺。

 うわぁーん、と泣きながら二階の自分の部屋へと駆け上がる千秋。


 

 BAD END

 注・この物語はフィクションではありません。実際に妹に彼女を紹介するときは妹、そして自分の安全を確認してから行いましょう。



「――終わりじゃないよ!?」

 すぐさまダメージを回復し、立ち上がる。

 しかし、辺りに千秋の姿が見当たらない。すでに自陣(自分の部屋)へ帰ったとみた。

「前フリが長かったのかなあ……」

 と、わけのわからないことを考える。

 まあ、とりあえず……千秋に謝ろう。傷つけたのなら、真摯に謝るしかない。

 そう考え、俺は立ち上がる。

 ゆっくりと階段を上って二階へ上がり、千秋の部屋の前でノックをする。コンコン。

「…………」

 返事がない。

「返事がない。ただの……」

「屍のようだとか言ったら殺す」

「美少女のようだなっ!!」

 ふぅ……ナイス判断、俺!

 自分の見事な判断に酔いしれていると、不意にドアが少し開いた。すかさず俺はドアをつかむ。ここは屍ネタで……

「ぐぉぉ、がっっ、ごごごぁぁあ」

「きゃああああああああああああ」

 バタンッ。グキッ。

「ぎゃああああああああああああ」

 勢いよくドアに挟まれて俺の手がホントにゾンビ状態になりそうになった。痛い。

 俺だ、と言うと千秋はドアを開けてくれた。

「……何の用ですか」

 枕をギュッと抱きしめながら涙声で睨む千秋に俺は、

「上目遣いでお願いします」

「やらないよ!?」

 紳士的にお願いしたのに断られた。

「ていうかホント、何しに来たのよ!」

「お前とENJOYしに来たんだYO」

「よし、歯を食い縛ってください。ENJOYという名目で地獄を見せます」

「冗談だよ……」

 にっこりと笑ってみせる千秋。

 地獄を見せる、という辺り目が本気だったので俺はふざけるのはやめた。

「さっきのことなんだけど……」

 おちゃらけた態度から一変して俺の真面目な様子に、千秋も押し黙る。

「本当に、氷室さんとは何でもないから」

 優しく千秋に笑いかける。でも、それが千秋は気に入らないらしい。

「付き合えばいいじゃないですか! そりゃ、氷室さんは美人だし、頭もいいし! お兄ちゃんにはもったいないくらいの人ですけどね!?」

「でも、俺は……」

「よかったですね! 明日からお兄ちゃんはうちの学校の男子全員からの敵ですけど、美人の彼女ができますね!」

「千秋っ!!」

「っつ!」

 よく聞いているならわかる。千秋の声は涙で震えていた。

 よく見ればわかる。千秋の身体は不安と恐怖で震えていた。

「千秋、俺も確かに氷室さんは素敵な女性だと思う。それこそ、俺にもったいないくらいだ」

「…………」

「でも、俺が一番大切なのは家族――お前だ。千秋」

「……グスッ」

 だんだんと涙のこらえきれなくなった千秋が嗚咽を漏らす。

 構わず、俺は続ける。

「俺たちの家族は、俺とお前の二人だけだ。これからもずっとそれは変わらない」

「グスッ、ズビッ」

「俺だけは何があってもおまえの味方だ。だから、一生そばにいてやる」

「…………ごめんなさい、お兄ちゃん」

「いいってことよ!」

「私……お兄ちゃんとは結婚できません」

「――って、そっちかよ!」

 いい話を横殴りでへし折られた。

「だって、近親相姦だし……」

「そういう意味で言ってねぇよっ!」




 時と場所変わって自宅のリビング。

「でも、どうして告白されたんですか?」

 誤解は解けたものの、告白されたという事実は変わらない。

 しかも、学校一の美少女である氷室さんからの告白なら、なおさらおかしいという話だ。

 顔を訝しくする千秋に問われ、少し原因を考えてみると、

「そりゃ、俺がカッコいいから……だろ?」

「(ひんやりとした視線)」

「……すんません。自分、調子こいてました」

 妹、即否定でした。

 しかし、先の言葉に反して千秋はまんざらでもない表情で頬を赤らめ、

「まあ、お兄ちゃんはカッコイイですけど?」

「ツンデレかっ!」

 アビリティ《TSUNDERE》。妹に新たな属性を見出しました。

「冗談はこれくらいにして……」

「冗談だったの!?」

「まあ、お兄ちゃんはカッコイイですけど?」

「二度目のツンデレっ!」

 本日二度目のツンデレが観測されました。

 間は五秒です。

 このままいったら会話が進まないことはわかったので、俺はこれからの方向性を伝えることにした。

「とりあえず、このことを氷室さん「殺ります」に話すということで」

「…………」 

「…………」

 完全に話の流れを無視する千秋。

 まあ、幾らブラコンでもそこまではしないだろう。さすがに冗談だと思い千秋のほうを見ると、

「…………」

 台所で包丁を研いでいました。

 冗談だと、

 思いたいなあ。


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