討伐②
「な、何をしているのですか勇者様!」
「ちょ、ちょっと! おかしくなっちゃったの?」
「にゃー! 大変だにゃー!」
三人は幸助の行動に理解ができていないようで、三者三様に動揺を隠せていない。
教会に投げ込まれた松明の赤い炎が、教会の白い壁を勢いよく黒く染める。
「熱いっ! 何が起きているっ!」
教会の中から炎に悶え苦しむ声が聞こえる。
その声を聞いてリアは頭を抱え、トリストはあたふたし、レスティは幸助を睨んでいる。
当の幸助は無表情のまま燃える教会をただ眺めている。
「助けれくれっ!」
苦しむ声。悲鳴。悶絶。怒号。
叫ぶ年寄り、泣きじゃくる子供。
「ちょっと勇者様! どういうことよ!」
レスティが幸助に詰め寄る。
「いいから静かにしていろ」
「……」
いつもより低い声で、いつもと違う態度の幸助の言葉にレスティは何も言い返さなかった。
大きくなる炎とは裏腹に、中から聞こえてくる声は小さくなる。
「くそっ! なぜだっ! なぜわかったんだっ!」
リュジーアの怒りの声が聞こえた。
そして村人たちの断末魔の声が魔物の声に変わってくる。
「がるるるるるるるるううううう」
「ぎゃああああああああああああ」
「ぐおおおおおおおおおおおおお」
レスティもリアもトリストにも聞こえただのだろう。三人で顔を合わせている。
その間も幸助は表情を変えずにただ燃える教会を見ていた。
やがて中から声が聞こえなくなった。
「勇者様……何が起きているのでしょうか……」
「どういうことにゃんだ?」
「意味がわからないわ」
三人は幸助に意見を求めている。
教会の炎が燃え尽きるまで時間がかかるだろう。その間に三人には説明をしよう。
教会の庭に置いてあったガーデンチェアに腰をかける。
幸助は燃える教会を見ながら話をする。




