真実⑤
「ロンギヌスの槍はこの世界のものではないの?」
「当たり前だろう。この世界にロンギヌスの槍があるわけがない」
「どういうこと? あれを持っていた男だって、知っていたじゃない。勇者様のいた世界での聖槍で、転移されてくる勇者たちが言う、アニメやラノベでよく出てくる聖槍なんでしょ?」
「そう。だからあるわけがないんだ」
なぜそうなるのだろう。
「いいか? ロンギヌスの槍というのは俺のいた世界にある、宗教の聖槍、ということは以前話したな。その聖槍は伝説となっていて、いくつもロンギヌスの槍と思われる槍が見つかっている。そのどれもが本物かどうかわからない状況なんだ。さらに、それは俺のいた世界でも、俺のいた国、日本の話ではない。この世界は日本人の転移しかないんだよな? つまり、日本以外からの転移のない世界に、日本に存在しない、どれか本物かわからない聖槍が、この世界にあるわけがないんだ」
筋が通っている。その理由であれば、この世界にロンギヌスの槍がないと証明できていると思う。
「で、でも、あの男は確かにロンギヌスの槍だと信じていたわ」
「そう、それが面白いんだ。アニメやラノベってやつは、とにかくそういう聖なるものが好きらいしいだ。あの男はアニメやラノベが好きだったんだろうね。そういうやつに限って信じてしまうんだろうね」
「じゃ、じゃあ勇者様は他の勇者が飛びつくだろうと思って、わざとロンギヌスの槍としてあれを作ったって言うの?」
「そういうことだ。練習していた黒魔術がどれだけのものになったか試したくなってね。あれを作って、アニオタに飛びつかせる。そして俺が討伐する。そして、王様から報酬として、ロンギヌスの槍を回収する。そういうプランだった」
「そうだ! あの槍には黒魔術が付術されていたんだ」
忘れていたけれど、危険な黒魔術が施されていた。あれも勇者様が付術したというのか。
「リアの家で黒魔術の本を見つけたんだ。それを読み込んで習得していった」
「勇者様も黒魔術を使えるの?」
「ああ、使えるようになった。でも使い道がなくて、それで試したくなって槍を作った。それが失敗だった。いつものように報酬として槍を回収できると思ったんだけど、没収されてしまった。プランを変更せざる得なくなった」
「プ、プランの変更?」
「ああ、あの槍から俺へとたどり着かれては困るからな。そこで、リアに犠牲になってもらった」
「ど、どういう意味?」
リアを犠牲にした?
聞きたくないと思うと同時に、聞かなくてはいけないとも思う。