真実④
盗賊の品ではなく、勇者様が盗んだ品だというのか?
「汚染水問題を解決した俺らは王様からクラトゥ村をもらった。それで王様のことを調べたら、結構めんどくさがりな性格だということを知った。普通に考えて、報酬で村を差し出すか? つまり余ったり不要になったものを報酬として差し出すことで、面倒なことから手を投げる癖があるようなんだ」
「それがどうしたの?」
話の流れがわからない。
「だから、俺はトリストからシーフのスキルを習い、盗みを行った。チラシ配りの最中とかにな。それで、盗賊討伐を行った後、出どころのわからない宝石を報酬として正式に俺のものにしようと企てたんだ。まあ、結果としてレスティに没収されてしまったけどな」
「盗賊の仕業と見せかけて、マッチポンプを働いていたということ?」
「まあ言ってしまえばそうだな。まあしかし、トリストが宝石を見つけたときはヒヤッとしたよ。だってトラップをレスティの前で解除してから宝石を見つけたからな。危なかったよ」
そういうことか! なぜあのときに気が付かなかったのだろう。
トリストがトラップを解除してから宝石を見つけたということは、宝石は盗賊のものではない。
なぜなら、盗賊にはトラップを解除する技術がなかった。あの地獄絵図が出来上がったのはそれが理由だ。
だから、解除されていないトラップの向こう側に盗賊の盗品があるわけがない。
あるとしたら、トラップを仕掛けた人物による盗品だ。
つまり、勇者様による盗品ということだ。
「その顔は、今気が付いたという表情か? よかった。今までバレていなかったのか」
勇者様がレスティの顔を見ていった。
よかったではない。全くもってよくはない。
「勇者様のせいで悲しんだ人がいるのよ!」
「そうかもしれないが、その人にとっての事実は、盗賊に宝石を盗まれ勇者が成敗した、ということだ。討伐した時点でその人たちの気は晴れているはずだ。問題ない」
「問題だらけよ……」
私が没収したからよかった。勇者様には悪気というものがないのだろうか。
「この際、全部はなそう。ロンギヌスの槍についてもな」
「それにも何か隠し事があるの?」
「まあそうだな。あの槍は俺が作ったものだ」
勇者様の口から出てくる言葉は今まで見てきた景色を崩壊させる。