真実③
「でも、そんなことをする必要はなかったんじゃない? 苦戦してでもすぐに助けに行くべきだったのよ」
「それも一つの手だな。しかし俺は無鉄砲な戦いはしたくない」
勇者様は姿勢を崩さず話している。
「そもそも水質調査の結果、汚染度合いは即死するほどの強力なものだった。助かる見込みはなかった。しかし、万が一のことを考えて、時間はかけておいたんだ」
「そんなこと、時間をかけるためだけに私は調査をしていたってことなの?」
ただ時間を稼ぐために調査をしていたということなのか。
「おかしい……。おかしいわよそんなの。間違っているわ」
「何が間違っているんだ? 結果として魔物を討伐できたんだ。まあ確かに犠牲はあったかもしれないけどな」
「その犠牲がおかしいのよ!」
勇者様の考えと理由がわかった。でも全然納得できない。
最初からこれを話されていたら絶対に賛成しなかった。
「レスティ、君だから話したんだ。包み隠さずにお互いを知るために」
「そんなこと言われても……受け入れられないわ……」
「今すぐじゃなくていい。ゆっくりわかってくれればいい」
「ゆっくりって……私だってもう勇者様しかいないのよ」
信用することができない相手と一緒にいるわけにはいかない。
「俺だってレスティ。君しかいない。ここで過去のことを言い合ったってしょうがない」
確かに過ぎたことを言い合ってもどうしようもない。過去には戻れないのだから。
勇者様の言葉を聞くと、そうなのかもしれないと思えてしまう。
「ほ、他には隠していることはないの?」
レスティの言葉に勇者者様が目をつむり沈黙する。
何か考えているようだ。
しばらくすると、意を決したのか、話し出した。
「盗賊討伐の件だけど……。盗賊討伐の後、レスティ、君と残党がいないか探していたのを覚えているか?」
「ええ、覚えているわ」
盗賊討伐に何か隠し事があったというのだろうか?
「あのとき、俺の察知に反応して、家を調べたらトリストがいたよな?」
「ええ。勇者さまのトラップの技量を見ていたわね。ああ、そう、そのとき、宝石を見つけたわね」
「そうだ。その宝石についてだけど、あれは俺が盗んだものだ。盗賊の盗品ではない」
「え? どういうこと?」




