真実②
「そういうことか。あれはしょうがなかったんだ」
勇者様はテーブルに両肘をつき、指を組む。
「あの時は、それぞれの調査で時間がかかってしまったんだ。リュジーアだったっけ? そいつが村の水をその日のうちに持ってきてくれたら、そのままリアの家に泊まった流れで水質調査ができたんだけど、リュジーアが昼過ぎに城を出たから、間に合わなかったんだ。だから水質調査が謁見から四日後になってしまった」
勇者様はあの時は今と違って、毎日ローテーションで誰かの家に泊まっていた。
だからそれぞれの調査をするには担当の家に泊まった時にしていた。
「そして現地調査だけど」
勇者様が続ける。
「トリストには水質調査の結果がわかった後に現地を見てもらうことになっていた。水質調査が謁見から四日後になってしまったのでその翌日にと思っていたけれど、汚染水を飲んだ俺が気分を悪くしてしまってね……ローテーションで次の三日後、謁見から七日後になったんだ」
クラトゥ村の汚染水を勇者様が飲んだということは聞いていた。そして一度死んで、リアが蘇生させたとも聞いていた。
「そして資料調査は現地調査の翌日に行った。つまり謁見から八日目。それはレスティとやったことだからわかるよな。これに関しては時間はかからなかったな。資料調査は一日で終わって、翌日には出発できた。それで結局謁見から九日になってしまったんだ」
「それにしてもかかり過ぎていると思うのよ。どうにかならなかったのかってずっと悩んでて……」
勇者様は真剣な顔をしている。何かを考えているようだ。
しばらく沈黙が続いたけれど、何かを決したように話し出した。
「レスティ。君だから全てを話そう」
いつになく真面目な表情をしている。
何を話すのか、何を言い出すのか、期待と不安がレスティを包む。
「このクラトゥ村の討伐だけど、前にも言ったけど、リュジーアは魔物かもしれないという疑惑を謁見のときに持った。その疑惑をが晴れないまますぐに討伐に向かった場合、村の人間が魔物なのか、そうじゃないのかと見極めて戦うことになる。それではかなり苦戦することになるだろう。だから時間をかけたんだ」
言いたいことはわかる。戦うべき相手がわからない状況は困る。
だけどどうして時間をかける必要があるのだろうか?
「時間をかけると村人が魔物かを見極められるの? そのための調査だったって事?」
「ある意味正解だな。時間をかければ予想される結果は二つだ。わかるか?」
考えることが今はできない。首を振る。
「一つは村人は汚染水に苦しみながらも生き残っているという結果。これはリュジーアが魔物ではないということだ。つまり村を苦しめている魔物は村人に化けられない。【変身】を使えないということだ。二つ目は、村人が全滅させられ、魔物が村人に化けているということ。これはリュジーアが魔物だったということだ。結果は俺の予想が当たっていて、村人は魔物の【変身】した姿だった。まあトリストの現地調査の報告で、魔物が化けていると十中八九当たっていると思っていたけどな」
理由はわかった。だけど何かが違うと思う。