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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第三章(後半)
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処刑①

 □◇■◆(幸助)




 リアが処刑される。


 この国ではギロチンによる斬首刑での見せしめだ。


 リアの行いはそれに見合うだけのことではある。


 しかし、苦楽を共にした仲間である。見ていて気持ちのいいものではないだろう。


 ならば見に行かなければいいと思うが、しかしそれは難しい。


 レスティと共にリアを捕まえた張本人として、重要な証人となっている。


 捕まえた際に狼の魔物を使っていたことが証拠になっているが、証人として出廷しなければならない。



「せっかくレスティが落ち着く兆しを見せたのに」



 幸助の独り言は誰にも聞こえない。


 それもそのはず。今いる処刑場は大盛況を見せていた。


 中世ヨーロッパよろしく、斬首刑は毎日を退屈に過ごす市民にとっては、待ちに待った刺激的なイベントとなる。


 街中の人が押し寄せている。



「早く罪人を出せ!」


「街に恐怖をばらまいた奴を殺せ!」



 殺人事件に対してのうっぷんが吐かれている。それに関しては致し方ないところだ。こちらもリアをかばいようがない。


 しかしともに成長してきた仲間。転移一日目に出会い、一番最初に言葉を交わして人でもあった。


 そのリアが、処刑される。


 仕方ないのだ。


 しょうがないのだ。


 かばって隠し通すこともできたかもしれないが、それは自分の意に反する。


 勇者になったつもりはない。勇者云々の前に、譲れないものがある。


 隣に立つレスティは無言だ。俯いている。


 一人で立つのもやっとのため、幸助の腕を掴んでいる。


 精神的な支えにもなっているのだろう。そっとしておく。


 処刑場の門が開き、衛兵が出てくる。


 手に縄を持っており、リアの両手につながっていた。


 リアの顔はいつも通りのように見える。落ち着いているようだ。


 死を目の前にしての焦りや悲しみといった感情はなさそうだ。


 かといって、罪悪感を持っている様子もない。


 それを観衆も感じとったのだろう。



「さっさと首を切れ!」


「態度が気にくわねぇ!」


「謝罪の一言でも言えねぇのか!」



 紙くずや卵などが投げられる。


 裁判長が静粛にと声をあげると、少し観衆もおとなしくなった。


 リアの態度に変化はない。ただまっすぐ前を向いている。何を考えているかはわからなかった。



「それでは、リア・デルニエールの裁判を行う」

 裁判長が宣言する。



 リアのフルネームを初めて聞いた。デルニエールと言われてもピンとこなかった。



「まずは、証人。前に出なさい」



 裁判長に指示され、二人で前に出る。



「この者が魔物を操っていたことに間違いはないか?」


「「間違いありません」」



 二人同時に発言したが、レスティはほとんど声になっていなかった。



「うむ、下がってよい」



 これだけのために呼ばれたのだ。


 しかしやらなくてはいけない儀式のようだ。


 裁判長に促され、幸助は下がる。


 しかしレスティはそばに立ち尽くしたままだった。

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