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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
幕間
129/141

リアのモーニングルーティン②

 そんなことを考えていたら、そろそろじゃがいもと人参に火が通ったようだ。一応串で刺して確認をする。


 よし、オッケー。


 そうしたら次は味付け。お醤油と砂糖と塩。勇者様はお酢が好きだと言っていたので、少し酸っぱめに調整。


 味見は料理の基本。何度も確認する。確認しすぎると、味が分からなくなるので、注意しよう。


 よし、オッケー。


 肉じゃがを作るために、昨日の夕飯は定食屋で肉じゃがを頼んだ。その味に近いと思う。完成だ。


 料理は冷めるときに具材に味が染み込む。帰ってきたらすぐに再加熱すれば今よりもっとおいしくなっているはず。楽しみだ。


 時計を確認するともう九時になるところだった。ちょうどいい。


 そろそろ家の周りの魔法石に結界魔法をかける時間だ。いつもの日課。


 ふつうは一度かければ数週間持つものだが、日課として毎日かけている。


 家を出て魔法石の前で呪文を唱える。全部で十個。


 一つ一分くらいで結界魔法がかけられる。そんなに難しくはない。結界魔法は案外簡単に覚えられた。


 次は弟を起こしにいく。


 部屋に行くと横になっている弟がいた。


 カーテンは閉め切っていて、空気がこもっている。


 この部屋の窓はもう数年開けていない。



「さあ今日も起きて元気に過ごしましょうね」



 慣れた手つきで杖を振り呪文を唱える。



「リヴァイタライズ!」



 胸に耳を当てる。うん、オッケー。心臓が動き出した。



「おはよう」



 返事はない。いつものことなので気にしない。


 特に何をするでもない。ただ弟は立ち上がりのそのそ動いているだけだ。


 それでいい。それだけで幸せ。弟が動いている、という事実が大事なのだ。


 これはただの蘇生魔法ではない。


 いけないことだとはわかっている。黒魔術だということは知っていてやっている。


 だから弟には結界魔法でこの家からは出られないようにしている。


 勇者様はたぶん気が付いていないと思う。弟は病弱だということにしているから。


 でもいつか勇者様には話さなくてはいけないのかもしれない。


 いや、その時は弟と本当にお別れをしたほうがいいのかもしれない。


 勇者様も弟もどちらも失いたくない。葛藤。


 最終的にどうするか、答えはいまだに出ないけれど、もうそろそろクルミカフェに行く時間だ。


 これについてはまた今度じっくり考えよう。


 準備を済ませ、家を出る。



「行ってきます。今日もおとなしく家で待っていてね」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 弟ずっと気になってましたがそういうことですか… 面白い!!
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