表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第三章(前半)
123/141

夜の魔物③

「リア、呪文を」

 幸助は冷静にリアに指示をする。


「わ、わかりました」

 リアも言われたことを理解したようで、すぐに呪文を唱えた。

「リジェネレーション!」



 リアの蘇生魔法は確実に作動し、トリストに届いているはずだ。しかしトリストはピクリとも動かない。



「なぜだリア。なぜ蘇生しない」



 幸助は自分の声が少し荒くなっているのがわかった。



「おそらく、絶命してから時間が経っているのでしょう……」



 リアも座り込み、トリストに泣き崩れる。



「レスティ! リア! しっかりしろ! 俺の察知には反応はない。だからこの辺りに魔物はいない。しかし俺の察知スキルを上回る敵かもしれない。油断するな」

 幸助は打ちひしがれている二人を再起させる。


「いいか、今からすぐに誰かに知らせないといけない。レスティ、お願いできるか。衛兵に伝えてくれ。俺とリアはここに残る。その後で仇を討とう」


「わ、わかったわ」

 涙を拭き、立ち上がるレスティ。

「そうね、トリストのためにできることをするわ」

 レスティの目に光が戻った。


 剣をいつでも抜けるように構えながら、レスティは大通りへ向かう。


 そんなに離れていないから、すぐに衛兵が駆けつけてくるだろう。



「リア、バリアを張れ」

 リアに言うと、幸助も同じバリアを張る。


「二重にしておけばとりあえず安心できるだろう」


「そうですね。レスティさんが戻ってきたら、魔物について調べましょう」



 リアもさっきの仇討ちという言葉に反応したようだ。


 レスティと衛兵が駆けつけてくるまで、トリストの手を握っていた。


 いつもだったらリアはずるいですと言うだろう。


 しかし今は言わない。それはトリストの最期だからだろう。


 隣でリアが震えている。



「リア、大丈夫か。俺がいてやるからな」


「勇者様……。よかったです」



 約五分。レスティが衛兵を呼びに行って戻ってくるまで、距離的に約五分で済むはずだ。


 しかしそれが何十時間にも感じた。


 今まで一緒に過ごしていた日々を思い出していた。最初の出会い、現地調査の報告、シーフの稽古、チラシ配り、クルミカフェでのこと、二人きりで過ごした思い出、クラトゥ村でのこと、全てが楽しかったと言える。


 その思い出を過ごしたトリストが死んだ。それが現実だった。


 戻ってきたレスティは冷静に衛兵に事情を説明していた。


 今朝俺がトリストにお願いしたこと、それから行方不明になって捜索をしたこと、見つけた時のこと。


 その後の事情聴取にしてもレスティは冷静だった。


 だから衛兵から解放されたとき、いとがきれたように泣き崩れた。それを見たリアもさらに泣いた。


 俺は二人を見て泣けなくなった。


 どうするか心に決めたからだ。


 今後のプランは決まった。それを実行するだけ。


 そのあと、トリストのために泣けばいい。


 ドライかもしれないけれど、そう決めた。


 すまない、トリスト。お前の死は無駄にしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ