ランチ会②
勇者様が何やらまた作ったらしい。
「それぞれみんなの分を作ったぞ。けんかするなよ」
「子供じゃないんだから、けんかなんかしないわよ」
「出会ったばかりの頃ならまだしも、私たちには関係性ができていると思います」
「僕ちゃんも平和主義者だからにゃ」
「最後のは信憑性に欠けるな」
「にゃんでだにゃ!」
反抗するトリストちゃんを知り絵に勇者様が、アイテムを配る。
「レスティには今回ブレスレットだ。魔力の向上が得られるはずだ。そして、リア。リアにはネックレスを用意した。これは魔力の自動回復を助長するものだ。最後にトリスト。トリストには短剣を作ったぞ。トリストの稽古を見ていて、動きやすくなるように工夫した」
「ちょっと勇者様、すごいじゃない。武器屋とか防具屋とか開業できるんじゃない?」
「そうですね、びっくりしました。ただの能力向上アイテムなら、ここまで装飾しなくてもいいのではないでしょうか。工芸品のようです」
「か、かっこいいにゃ。この短剣、すごくかっこいいにゃ!」
三人が驚くほど細部にこだわった品だった。たとえ付術がなくても、装飾品としてそれなりの値が付きそうなものだった。
「いやぁそうか? 素材そのものはそんなに高いものじゃないし、実用性を重視して作ったつもりなんだけど」
「そんな風には見えないわよ」
レスティさんが早速装着し、窓に映る自分を見ている。
「これ、すごくうれしいわ」
「こんなにきれいなものも作れるのですね」
レスティさんのようにネックレスをつけた自分を見たいと思ったけれど、普段からネックレスをつけないため、装着するのに苦戦した。
それを見かねてか、レスティさんが手伝ってくれた。
「レスティさんありがとうございます」
「いいえ。リア、すごく似合っているわ」
「ほんとだにゃ。きれいだにゃ」
レスティさんとトリストちゃんが褒めてくれた。
うれしいと思うと同時に、ライバルであるということを二人は忘れたのではないと疑ってしまう。
仲良くしてくれる分には構わないけれど、結局は勇者様を取り合う中であるということを、逆に意識してしまう。
しかしそんなことは口には出さない。
「ありがとうございます。レスティさんも、トリストちゃんもすごく素敵です」
「ありがとにゃ。持っただけで強くにゃった気がするにゃ」
「うれしいわ。聖槍は没収されちゃったけれど、それより良い物を手に入れた気分よ」
みんなで勇者様にお礼を言う。
「喜んでもらえてうれしいよ。作った甲斐があったよ」
勇者様が鞄をテーブルから片付ける。