ランチ会①
□◇■◆(リア)
「今日は勇者様と会える日です」
リアは自宅で一人だが、うれしくて独り言を言ってしまった。
聖槍事件の帰りは、途中で勇者様とトリストちゃんは下車しクラトゥ村へ。私とレスティさんはそのままキュオブルクへ、と分かれた。
トリストちゃんが少しうらやましかったけれど、仕方がないことだ。自分でキュオブルクに残ると決めたのだから、文句は言えない。
帰りがけの勇者様は元気がなかった。
聖槍をせっかく手に入れたのに没収されてしまったのだ。落ち込むのも無理はない。
俺はレアアイテムはいらないとか言っていたけれど、一度手にしたら手放したくなってしまったのだろう。
まあこれをきっかけに、ダンジョンへの攻略を積極的に取り組んでくれたらうれしい。
弟に出発を伝えると同時に、自分が留守中に必要な準備を行う。しっかりと抜かりなく。
準備が完了すると、クルミカフェに向かう。通い慣れた道だ。
たぶんクルミカフェのメニューは制覇しただろう。
店を変えようか、という意見も出たことはあるけれど、結局なんだかんだであの店に落ち着いてしまう。
勇者様たちと会わない日もたまに利用する。
そういえばレスティさんとお鉢合わせたことがあった。そのときはプライベートを優先して、お互い離れた席に着いたけれど、今なら一緒の席でもいいかなと思わなくもない。
クルミカフェに到着するとすでに三人が座っていた。
時間には遅れてはいないはず。時計を確認すると、約束の十五分前だった。三人が早すぎるだけだ。
「遅いにゃ。勇者様と僕ちゃんは四十分前から待っていたにゃ」
トリストちゃんがテーブルに突っ伏している。
「しょうがないだろう。時間的にちょうどいい馬車がなかったんだから」
勇者様は頬杖をついている。
「私は今来たところよ。さあリアも座って」
レスティさんが着席を促す。
「田舎暮らしも大変よね」
レスティさんに相槌を打ちながら席に着くと、勇者様がおもむろに鞄からいろいろとアイテムを出した。
「ほら見てみろ。俺の力作だ」