ダンジョン帰り①
□◇■◆(レスティ)
帰りの洞窟の道のりではやはり会話はなかった。話しかけたかったけれど、何て切り出せばいいかわからなかった。
聖槍を手に入れられて、誰一人としてけがもしなかった。
完璧なダンジョン攻略だったけれど、敗北感がレスティにはあった。
勇者様に対し、素直に強いと感じた。
もともとのステータスは高い方だと感じていた。
本人の努力も知っている。
もし勇者様が何もせずに、あの男がこちらに突っ込んできたらどうなっていただろう。
激しい戦闘になっていたかもしれない。
最初の槍の一振りで、それなりのパワーを感じていたので、私一人ではなく、トリストとの共闘、リアのサポートが必要だろうと予想していた。
それなのに勇者様が不意打ちで、しまも一撃で相手を戦闘不能にしたのだ。
そしてとどめを刺した。
勇者様のよく言う、省エネの戦闘だ。
しかし私も活躍したかったというのが本音だ。
少しくらいは怪我をしたっていい。戦ったという達成感が欲しかった。
そんなことを考えていたら、勇者様に話しかけることができなかった。
もしかしたらリアもトリストも同じように思っているから無言なのかもしれない。
勇者様が話さないのはいつものことだ。
先に光が見えてきた。出口だ。まだ外は明るいようだ。
洞窟の中での滞在時間は一時間くらいだろうか。まだ夕方にもなっていない。
洞窟から出る。一時間とは言え、洞窟から出たばかりの太陽光は刺激が強い。
四人は目の前を手で覆う。
「戻られましたか」
声に気が付き、手を除けると王国の兵隊が並んでいた。
「もしや勇者様、その槍はうわさの聖槍でしょうか?」
「え、あ、ああ。たぶんな。本物の聖槍を見たことがないから真贋はわからない」
「お見せください」
兵隊の奥にいた魔法使いと思われるご老人が歩み寄る。
「私は王国魔法使いのライネンと申します。私に鑑定をさせていただけますでしょうか」
「これはどういうことかな? レスティわかるか?」
急に聞かれても困るけれど、勇者様も困った様子だ。
「おそらく、王国もうわさを聞いてダンジョン攻略に乗り出したということじゃないかしら。私達の方が若干早かったというところね」
「なるほど」
納得したのか、勇者様はライネンへ向きなおす。
「わかりました。ただ、これは私たちの戦利品です。差し上げることはできません」
「もちろんです。鑑定だけさせていただければと思っております」
ライネンが丁寧に頭を下げる。
「それじゃあどうぞ」
勇者様がライネンに槍を渡す。
そして兵隊に声をかける。
「洞窟の一番奥に四人の死体がある。洞窟には魔物はいないから安心して進入して大丈夫だ」
付け加えて勇者様が私達より先にいた男の話を兵隊にした。
それを聞いた兵隊は驚いていたが、数名を洞窟に入れ、確認することにしたようだ。
「おお、これは……」
ライネンが槍を視て驚いている。
「これはまずいことになりました……」
私達勇者一行は顔を合わす。
「この槍には黒魔術が施されております」