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異世界初心者  作者: 寿々喜 節句
第三章(前半)
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ダンジョン攻略④

 倒れた男の首元に勇者様が剣を垂直に下ろしとどめを刺す。


 血が飛び散る。


 相手だけでなく三人とも気が付かない間に、勇者様は【隠密】のスキルを使い、男に近づいていた。


 そしてこちらに向かってきた男の足をかけ転倒させ、剣を刺した。


 相手は仲間を殺し、さらにこちらに対して戦意を持っていた。


 だから殺されて当然だけれど、私たちの知っている勇者様のイメージと違った行動だったため、少し怖いと感じてしまった。


 しかしパーティを守ってくれたことは確かだ。



「レスティ、その聖槍は俺が持っていく。一度くらいは勇者らしいことをしないとな」

 勇者様が転がっている槍を手に取る。


「これを機に槍も使えるようになろうかな」


「「「……」」」


「え、アンデット化した?」


「してないわよ!」

 レスティさんが反応する。


「よかった。生きてたか!」


「僕ちゃんも気がつかにゃかったにゃ!」

 トリストちゃんが悔しがっている。


「不意打ち。一番効果的な戦法だろう?」


「せこいわよ。私の覚悟を返してくれる?」

 レスティさんが剣をしまい、ため息をつく。


「私もバリアが張り損になってしまいました」

 リアはバリアを解除する。


「全然気が付きませんでした」



 目の前にいたはずなのに、いなくなっていたことに気が付かなかった。


 すごいと思う前に、恥ずかしいと思ってしまう。



「かなり鍛えたからな。みんなのおかげだ。しっかり稽古してもらったからな」

 勇者様が血を拭いて剣をしまう。


「それじゃあ戻ろうか」



 なぜか持っていた紐で、自分の身体に槍を巻き付けると、勇者様は言った。


 緊張は再び解けたけれど、安心感が得られたわけではなく、心にあるのは寂寥感だ。


 相手を殺したことに関しては誰も触れない。


 相手の自業自得なのだから、殺されて当然だ。


 それにダンジョン攻略は魔物相手だけでなく、このように人間や亜種を相手にすることは間々ある。


 私達が勇者様にそれを望んだのではないか。勇者らしく強くあってほしいと願ったのではないか。


 勇者様は何も間違ったことはしていない。



「私達って、何なんだろうね」

 レスティさんが誰となくつぶやいた。



 その発言に関しては同じように思っている。


 たぶんトリストちゃんもそう思っているに違いない。


 三人をよそ眼に出口に向かう勇者様。


 誰も何も言わない。


 遅れまいとついて行く。

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― 新着の感想 ―
[良い点] だいぶ不穏になってきた…w
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