ダンジョン攻略②
「トリスト、察知には引っかかっていないのよね?」
レスティさんも不安になっているようだ。
「引っかかってにゃいにゃ」
きっぱり答えるトリストちゃん。
トリストちゃんはちょっとおバカさんなところもあるけれど、シーフとしてはかなり腕がたつ。本当のことなんだろう。
「だけど、痕跡は残っているにゃ。この先に人か、それを倒した魔物がいるにゃ」
「わかったわ。それじゃあさらに気を引き締めていくわよ」
勇者様からの発言はなかった。
緊張しているのだろうかと思ったけれど、前を歩く勇者様の雰囲気はいつもと変わらず、飄々とどこ吹く風。
気が引き締まっているのか緩んでいるのかもわからない。
さらに進むと目の前を歩く勇者様が反応した。それと同時にトリストちゃんが両手を広げ進行を止めた。
「反応ありだにゃ」
トリストちゃんが小さい声で言うと、勇者様もうなずいた。
ぞれぞれが武器を構える。
相手は人なのだろうか、魔物なのだろうか。空気が張り詰める。
「相手に動きはにゃいにゃ。こちらから向かうしかにゃいようだにゃ」
察知されることは織り込み済みということだろうか。待ち構える戦法ということか。
陣形を崩さず、警戒心を解かず進む。
薄暗い洞窟を進んでいると、奥に明かりが見えた。
「影が見えたわ」
戦闘を歩くレスティさんが何かに気が付いたようだ。
「人影のようね。残念。先を越されたようだわ」
「残念だにゃ。まあでも魔物はいにゃいようだにゃ」
緊張がほぐれ力が抜ける。
安全だとわかると、武器をそれぞれ鞘に納める。
「まあ最初ですからね。楽しい経験になりました」
ふうと息を吐いて力の入っていた肩をほぐす。
「おーい、聖槍は見つかった?」
レスティさんが先客に声をかけながら進む。
トリストちゃんも勇者様もそちらに向かうのでついて行く。
レスティさんが話しかけても、相手からの反応はない。
聞こえないということはないと思うけれど。
近くまで行くと軽装をした男性だった。ぼーっと立ち尽くしている様子だ。
手には聖槍と思われるきれいな槍を持っている。