馬車の中
□◇■◆(レスティ)
「冷静に考えれば、勇者様と馬車の中で話は出来なかったですね」
馬車で眠る勇者様を見てリアが言った。
「そうだったにゃ。これは失念していたにゃ」
頭を手で押さえ、トリストが言う。
「ほんとよく寝るわよね。幸せそうだから責めにくいわね」
馬車酔いのひどい勇者様は移動中は基本睡眠だった。
ダンジョン攻略を賛成させることに集中していたせいで、そのことを忘れていた。
まあそんな勇者様は放っておこう。というよりそれ以外の方法はないのだけれど。
トリストも眠たそうだし、リアは本を読んでいる。各々自由に過ごしている。
そんな中、レスティは流れる景色を見ながら一人考えていた。
なんか少し違和感がある。たぶん勇者様についてのことだと思う。
三人の作戦により、こうしてダンジョン向かうことになったけれど、果たして成功したのだろうか。
勇者様は抜けているようで、なかなか頭の切れる人だと認識している。
二人がどう思っているかは知らないけれど、おそらく評価はそう変わらないだろう。
それにリアが馬車の中でも話はできると言ったとき、三人は馬車酔いを失念していたけれど、勇者様は自分のことだし考えが及んでいたのではないだろうか。
まあどうであれ、目的は果たされ、ダンジョンに向かうことにはなったから、レアアイテム奪取のために頑張るしかない。
ただ、考えの及ばないところで、とんでもないことをしてきたのが勇者様だ。
ついてきたのには企みがあるのだろうか。
少し観察しながら行動しよう。




