レアアイテム④
「これはリアに、これはトリストに。レスティには悪いんだけど、今度な。剣を作ってみたから、それをあげる。今日は重たかったから持ってきていない」
「勇者様が剣を作ったの? 楽しみに待っているわ」
レスティが驚いている。
「ありがとうございます。なんか疑ってしまって申し訳ありません」
リアが謝る。
「勇者様! 嬉しいにゃ!」
トリストは言葉は少ないが、涙は多く出ている。
「ちなみにリアのサークレットには魔力アップで、トリストのブレスレットは素早さアップ。レスティの件には攻撃力アップの付術をしている」
「「「ありがとう」」」
三人は声を揃えてお礼を言う。
「勇者様、一つ疑問なんだけど、さっき聖剣の話では強さは分散したほうがいいって言ってたけど、この付術は得意分野をさらに伸ばすことになるんじゃない? これって分散にならないんじゃない?」
「ああ、そういうことか。さっきの話は、俺が聖剣を持ちたいかって聞かれたから勇者って表現したけど、厳密にはパーティでの話だよな。俺一人で強い魔物を倒せるわけないんだから。つまり聖剣を持たずに強い魔物を倒せるパーティには聖剣は必要なくて、聖剣がないと強い魔物を倒せないパーティが聖剣を持つべきだということだな。個々で考えるか、全体で考えるかだな」
「個々と全体?」
「そう。個々は、レスティ、リア、トリスト、俺、をそれぞれを一と考える。そうした場合は各自が好きにやったらいい。そうじゃなくて、全体、パーティを一と考えたら、それぞれに役割を持つ部分を伸ばした方が、全体のバランスが良くなる。どちらが正しいというわけではない。俺はパーティを一と考えた、というだけだ」
「勇者様……」
リアは口元を手で覆いながら言う。
レスティもトリストも同様だ。
「私たち、四人で一つのパーティって考えてくれているの?」
「え、そうだったよね?」
「全然そんにゃ素振りじゃにゃかったにゃ」
「四人で一つのパーティ素振りって何? どうやるの?」
「なんか私嬉しいわ。多分だけど、勇者様に余裕ができたのかな? 最初は嫌だったけど、自宅の日数を二日にしてよかったかもしれない」
「それはありますね。それからなんか丸くなったというか……。あ、全然前はとがっていたとかそういうことではないんですけど」
「わかるにゃ。ああ、信じていてよかったにゃ」
「あ、うん、そうそう。よかったよね」
なんかみんな良いように解釈しているので、何も言わないようにする。
「まあそうなると益々この中から一人が勇者様を射止めるってことが難しくなったけど」
「一夫多妻制にするにゃ? 僕ちゃんが第一婦人だにゃ」
「あ、トリスト! それは私よ!」
「レスティさんでもトリストちゃんでもありません。それは私です」
今まではギスギスした言い合いだったけれど、今日はなんだか楽しそうだな。うん、放っておこう。