レアアイテム②
「勇者様はそういったレア武器は欲しくないの?」
レスティがムキになっている。
「私は欲しいわ。魔力を秘めた剣が」
「それは前の旦那さんの夢を果たすということでしょうか」
リアの目が悪い目になっている。
「勇者様がいてもなお、前の旦那さんに未練があるのですね」
「レス姉、それにゃらいってらっしゃい」
トリストはお見送りをするように、頭を下げる。
「ちょ、ちょっと違うわよ! 剣士としてそういった武器が欲しいって話よ」
焦りが伝わる否定だ。
「勇者様はどう思う?」
「未練があるかどうかか?」
「違うわよ! 聖剣とかそういうレアアイテムが欲しいかどうかって話よ!」
「ああ、そっちか。それなら俺はいらない。欲しいって言ったらお前ら、ダンジョンに行くかどうかって話になるだろ」
話しは読めている。
「た、例えばの話よ」
「例えばでいいんだな?」
幸助はコーヒーを一口飲んでから、考えを伝える。
「例えば、ダンジョンに俺が行ったとして、一番奥までたどり着き、強い魔物を倒して聖剣を手に入れたとする。そうしたら俺が聖剣を持つ意味ってあるのか?」
「にゃに言ってるにゃ。勇者様が手に入れたんだから、勇者様が持つべきにゃ」
「どうしてだ? 聖剣を持たずとも強い魔物を倒せるのであれば、その聖剣は聖剣を持たなければ強い魔物を倒せない奴に渡すべきだろう」
「どういう意味でしょうか?」
リアが首をかしげる。
「結局は平和のために魔物を倒すってことだから、勇者は強くならなくてはいけない。だとしたら、強い魔物を倒せる勇者が一人しかいない状況はよくない。一強より二強、二強より三強といったように強い勇者を量産したほうが平和の維持が容易になる。それに武力、権力は分散させた方が問題も起きにくい」
「た、たぶん正論だけど、なんか思っているのと違うのよね……。なんだろう。夢が無いわ」
「それで、話しは聖剣が欲しいかどうかだったよな。つまるところ、俺の答えは、俺が自力でダンジョンに行ってまで手に入れようとは思わないが、今話した理由で誰かがくれるというのであれば、それはありがたくいただく、ってところだな」
「にゃんだそれ! にゃっとくできにゃい!」
「別にいいよ、納得させるつもりはないから。欲しい奴が取りに行けよって話だから」
「なんか醒めるわね」
「ええ、レスティさんに同意です」
三人が目を細めてこちらを見てくる。