レアアイテム①
□◇■◆(幸助)
クラトゥ村に移住してしばらく経った。
快適だ。毎日誰かの家に泊まっていた時は自分の家に閉じこもりたいと思っていたが、これほどまでに快適だとは思わなかった。
幸助が自宅に帰る日のお昼は、クルミカフェには集まらない。各自が自由に過ごす日となっている。
だからなのか、レスティ、リア、トリストの三人は久しぶりに会うとすごいテンションだ。実は幸助自身も嬉しいという気持ちはある。
「二日空くだけで本当に久しぶりですね」
「ほんとよね。泊まりに来るのが五日に一回になったのもやっぱり寂しいわ」
「僕ちゃんは村で見かけても一緒に過ごせにゃいのが辛いにゃ」
女性陣が寂しさを共有している。
さすがだ。女性は共感力が高い。
これじゃあこっちが悲しい思いをさせているように見えてしまうではないか。
「まあ平和ってことでいいんじゃないか」
実際、王様からの依頼もない。のんびり暮らせることは悪いことではない。
「そうだけどさ」
レスティが頬杖をついている。
それからしばらく他愛もない話が続いた。トリストが洞窟を見つけたとか、リアが新しく覚えた治癒魔法がいつもの数倍の回復量だとか、レスティの元旦那がなくなった理由だとか。
「聖剣を探しに行ったっきり帰ってこなかったのよ」
懐かしむように話すレスティ。
「私は子供が急に熱を出しちゃったから家で子守をしていたんだけど」
「聖剣なんてあるのか」
そんな話は聞いたことがなかった。
「あるにゃ。ダンジョンに珍しいお宝が眠っていることがあるにゃ。ぜひ手に入れたいにゃ」
シーフのトリストが目を輝かせている
「聖剣に限った話ではないですよ」
リアも参戦してくる。
「魔法の杖だったり、珍しい巻物だったりと、先人が隠した大事なものが眠っているのです」
「なるほどね」
大して興味はない。そんなもの全然欲しくない。
中古のCDや古着を買うことはあった。それは安いのに利用価値が高いからという理由があるから。
聖剣となると話は別だ。
ダンジョンの中にあるのだとしたら無料だろうが、危険極まりない。
つまり安くない。
それに利用価値が不明となると、かなりのギャンブルだ。
よっていらない。
そもそもビンテージものに興味がない。