打ち上げ③
「おいおい、それじゃあ移住の意味がないだろう。俺だってプライベートは欲しいよ」
「うーん……じゃあ妥協案で、リア、トリスト、私、自宅、の順番にしましょう」
「それが一番打倒ですね」
「その条件だったら飲めるにゃ」
「全然飲めない。嚥下障害を起こす」
「三人の意見が一致したので決定よ」
レスティがこぶしを作っている。
「俺の意見を反映させましょう」
「「「……」」」
黙り込む三人。
「レスティの案だと、四日に一度しか自宅に戻れない。それじゃあ村までの片道四時間を入れたらほとんどプライベートはない。だから少なくとも自宅とトリストは連続してもらわないと困る。だから、リア、トリスト、自宅、自宅、レスティ、でどうだ?」
「自宅が多い気がします」
リアがむすっとっしている。
「そうよね。自宅が多いわね」
眉間にしわを寄せるレスティ。
「僕ちゃんは別にかまわにゃいにゃ」
思いのほか同意をするトリスト。
「ちょっとトリスト。あなたクラトゥ村に住むからって、勇者様の自宅が増えても気にしてないんでしょ」
「それにゃら二人も移住したらいいにゃ」
幸助のプライベートに入ります宣言のようなことを、平然と言ってのけるトリストに幸助はくぎを刺す。
「いやいや、俺の話も聞いてくれ。クラトゥ村に住んだら、一人の時間を過ごすつもりだから、トリストがクラトゥ村にいたとしても自宅の時は相手にはできないからな」
「にゃぬ!? にゃにをするつもりだにゃ!?」
「なんだっていいだろう。それに割合としては自宅の方が外泊より少ないんだからな。かなりこちらも妥協しているぞ」
「説明を受けても納得しかねます」
リアは不満があるようだ。
「そうね」
「そうだにゃ」
二人も同様に納得いっていない様子。
「なんでだよ。まあいいじゃないか。とりあえず俺の案でやってみよう。やってから判断すればいい。もしかしたら俺だってやっぱりみんなの家に泊まる方が楽しかったなぁって思うかもしれない」
幸助はまくしたてる。
「言いくるめられているような気がするわ」
「そうですよね。勇者様は口が上手いですから」
「そうにゃんだよにゃ」
「物は試しだ。こちらも譲って、今日はレスティの家に泊まるところからスタートでいい。レスティ、リア、トリスト、自宅、自宅って流れだな。俺だってすぐに自宅に行きたいんだけど、最後にしてやるよ」
納得いっていない様子だが、幸助は続ける。
「得をしているわけではないのよね」
「ええ。実質何も変わりはありません」
「もやもやするにゃ」
「ってことで決定」
三人は不満たらたらな表情をしているが、これ以上反論は出なかった。
言いくるめたぞ。俺の勝ちだ。
お酒の追加注文をする。
今日はおいしくお酒が飲めそうだ。