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助言者たちの事情

『公爵令嬢と励ます者』のノア視点です

「えぇ……何この状況……。勘弁してほしいんだけど……」


相棒が眉を顰めながらぼやく。

私もおおむね同じ意見なので、あえて突っ込みを入れたりはしない。本当に勘弁してほしい。


というのも、団長に用があり四階の団長室に行こうと階段を上っていたら、三階の踊り場で声が聞こえ、この現場だ。フィンがぼやきたくなる気持ちもよくわかる。

不意打ちにも程があるし、何故私たちなのだと思わなくもない。運命の神様に詰め寄りたいくらいだ。


そんな悪態を内心で吐きつつ、目が死んでしまった相棒からそっと現場に視線を戻すと、廊下の中央で副団長とよそ行きの品の良いドレスに身を包んだブルネットの女性が楽しそうに会話をしていた。

よく見れば女性はうちの隊長と瓜二つの顔をしている。


そういえば隊長は双子だと聞いたことがあるな。

なるほど、あの女性が隊長の双子の姉君か。

隊長とは正反対で妖艶な人だなぁ……って、そこではない。


私たちが『勘弁してくれ』と目を覆いたくなったのは、二人を遠くからじっと見つめる一人の少女の姿を認めたからだ。

もっとも、その少女がただの少女であったのなら、こんなに困惑はしていない。けれど非常に残念なことに、そこにいた少女は副団長と良い仲だった。


だが、談笑している二人は気付かない。

湾曲を描く廊下のため、壁に遮られて見えていないのだろう。


反対に、少女の対角線上にいた私たちには見えてしまった。それで大いに頭を抱えている。

これは絶対に泥沼と化するに違いない。だからこその『勘弁してほしい』だ。

現に少女は顔を曇らせ泣きそうな顔になったあと、それを瞬時に繕って無表情になっている。まずいなんてものではない。即刻手を打たなければ、こちらまで巻き込まれてしまう。


「なあ」

「うん?」


現場を見ながらフィンが私に呼びかけてくる。

それに短く返事をして、彼の言葉を待つ。


「俺さ、こういうことは本人たちでなんとかするべきだと思ってる。誰かに助けてもらってくっついたとしても、そんな関係じゃ何かあったらすぐに別れてしまうだろう?」


まあ、言っている意味はよくわかる。フィンは自分たちで乗り越えろと言いたいのだろう。

それは私も思う。……とばっちりを食っても困るし。


「そうだね」

「でもさ、俺考えたんだわ。ティナちゃんが泣いたら、副団長は別として誰が一番悲しむかって。そう考えたらすぐに答えが出た。俺、あの子の悲しむ顔は見たくない」

「あー」


少女を慕う、我が第三部隊の部隊長。彼女は大好きな少女が泣いていたら、烈火の如く怒り、そして悲しむだろう。私もその様子が想像できた。


「だから俺、自分自身のためにティナちゃんをフォローしてくるわ」

「フィン、君本当に隊長のこと……」

「さあな。だが、周りの奴らよりははるかに気に入っている。ノア、お前は副団長の方に行ってくれないか? お前の小言を嫌という程副団長に聞かせてやってくれ」

「はいはい、わかりました。あとで君にも、私を巻き込んだことについてたくさん小言を言わせてもらうから、覚悟しておいて」

「うげっ!? お前のは強烈なんだよなぁ……。まあいい。行ってくる!」


言うが早いか、フィンが物凄い速さで階段を駆け下りていく。

その足音も聞こえなくなった頃、私は気合を入れて副団長たちのもとに足を向けた。

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