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説教 その1

「・・・ってなわけで、おっちゃん達、いったん向こうの世界に帰るんだ」


そう子供達を集めて話をする、俺とカミサン。


山に戻ってからカミサンを拾って、お母さんの家に行き、そこらへんで遊んでる子供達を呼んで庭先でこれからの事を話しているんだけど、子供達はポカーンとしてるのよ。


そりゃそうだよね。

俺ら、子供達保護していただけで、俺らの事なんにも言ってなかったもんね・・・


ちょこちょこ子供達と遊んだり、風呂入ったりしたけど、俺らの事異世界人って言ったこともなかったから、かなりショックなのかな?なんて思ったらさ、


小さい子が「また戻ってきてくれる?」と泣きべそかいていってくるので「大丈夫、おっちゃんちょこちょこ来るから」と言うと、しがみついてきて泣いてるの・・・


そうだよね・・・いろいろなところで危険な目にあって、助けてもらって、助けられたと思ったら助けた人も今はいないし、そのあと見つけた俺らもいなくなる・・・本当に不安な思いをさせてしまって申し訳ない・・・ごめんね・・・と泣きついてくる子供達一人ひとりを抱きしめていると、コンコンと戸を叩く音。


はい、と返事をすると、お母さんと村の女性陣数人が入ってきて「心配ないよ、みんなの事はアタシラにまかせなよ」と言ってくれたんだ・・・落ち着くまではアデルのお母さんや村の女性陣が交代で見てくれるということだったので、言葉に甘えさせていただく。


村長にも話をんだけど、協会のシスターを斡旋してもらい、孤児院の建築までスムーズに行ってくれればよいんですけど・・・なんて話をしたところ、どうせ料理の関係でいろいろな村に行くんだから、周りの村にもいろいろ聞いてみるよ、と言ってくれたので、お願いしますと頭を下げる。


なんでそこまでしてくれるんですか?なんて今更聞いてみたら・・・


「あ~た、それ私たちが言いたいくらいだよ!」「綺麗な洋服も美味しい料理もくれた。あんなに大きな場所で綺麗な湯に入れて、綺麗にもなれた」「男どももなんだか張り切ってるし・・・村全体が明るくなってきたのはあんたたちのおかげなんだよ!」なんて言ってくれたので嬉しくなっちゃう。


だけどね・・・元はしっかり取るつもりですし、もしかしたら・・・俺悪い事考えているかもしれないですよーなんて言うと「んじゃ~せいぜい楽しませてもらうから、もっと頑張んな!」って言われちゃった・・・こりゃ・・・お母さんには一生頭が上がらなそうだよ。


ついでに、企画倒れになりかけてる、スパリゾート風の施設で着てもらおうとしていた水着について、来てくれた女性陣に話を聞いてみたところ、肌が極端に露出するビキニには難色を示していたんだけど、肌があまり露出しないタイプの水着だったら大丈夫かな?もしかしたら、雰囲気次第で肌を出しても平気になるのかな?なんてことを話していたので、参考までに覚えておく。


もしかしたら着てくれるかもよ?と、これをネタに男性陣を焚きつけたことを謝ると、ま、いいんじゃない?とあっけらかんと言ってくれたので、もう本当に感謝感謝ですよー


そんな事を言っていたら、子供達が退屈しはじめたので、外で遊ぼう!と言ってみんなを連れ出す。


だるまさんがころんだ や おにごっこ のルールを教えて、俺が鬼役になって走り回ったりしていたら、村の子も興味を持ってきてくれたので、再度一緒に遊んだりしていたら、子供同士仲良く遊んでくれていたので、そんな様子をカミサンと村の女性陣と一緒に見ながら「うちの子は昔はこんなんだったよ~」なんて話をしていたら、いつの間にか夕方になってしまっていた。


あまりに子供達が楽しくはしゃぎまわっているので、もう少し・・・とも思ったんだけど、俺らの世界と違って夜は本当に真っ暗になっちゃうんだよね・・・


家の明かりだけじゃ危なくて遊ばせられないから、子供達に「おうちに帰るよー」と言いながら、すっかり疲れ切ってしまった小さい子を両手に抱え、女性陣にも手伝ってもらいながらお母さんの家に帰る。


帰りの夕日がとってもきれいだったので、なんとなく、夕焼け小焼けで日が暮れて~♪なんて口ずさみながら歩いていると、女性陣が「聞いたことない歌だけど、この景色によく合う歌ね・・・」なんて言ってくれた。


昔勇気と一緒に遊んだあと、家に帰るまで知ってる童謡なんかを歌ったりしながら帰ってたんだけど、こっちにも似たような歌はあるのかな?なんて聞いてみたら、特にそういった歌はないということ・・・今度来るときは童謡のCDでも持ってこようかな?歌詞付きのやつ。


で、こっちの生活に合わせて歌詞を変えて、みんなで歌って勉強なんてのもいいかな?

・・・こっちに来てからいろいろなアイディアが浮かんでくるのが本当に不思議なんだけど、それだけ自分たちがいた環境が恵まれていたんだなぁ~とも思い、出来る事なら、日常で必要なものはどんどんこちらに持ってきたいなぁ~って思ったらさ、お母さんの家の前で、一人の少女が立ってるのよ。


銀色の髪の毛から出ている耳。


お尻のあたりから出ている銀色のしっぽ。


フード付きのパーカーに短パン。


ご丁寧にボストンバックも持ってるよ・・・





・・・・良かった・・・・


生きてくれてて本当に良かった・・・・



子供達が「あ!お姉ちゃん!」って言って駆けだしたのを目で追って、すこしづつ近づいていくと、子供達に囲まれて「大丈夫だった?大丈夫だった?」なんて小さい子や大きい子達を心配する銀色の人の姿がはっきりわかってきてね。


気が付いたら、俺もカミサンもその場で泣いてたんだ・・・


「良かった・・・生きてたよ、良かったよ・・・」と何度も繰り返すカミサンにうんうん頷きながら、俺も涙が止まらないまま近づいていく。


銀色の人も、ようやく俺らに気が付いて「なんで?・・・・なんでここにいるの?」なんて立ち尽くしていたんだけどね、子供達にごめんね、って言いながら、ゆっくりゆっくりこっちに来てくれたんだよね。


・・・・


・・


こちらに歩いてくる銀色の少女の目には大粒の涙が見えてるんだ・・・


ごめん、俺も涙で半分くらいしか見えないんだけど・・・



そんな少女は、こっちに向かって話してくれたんだ・・・


「お・・・おとう・・・さん?」


うんうん。そうだよ、お父さんだよ。マサキだよ。


「おかあさん?」


そうだよ、お母さんだよ。ユキだよ。




・・・頑張ったんだね。いっぱい頑張ったんだね・・・おいで・・・・イデア・・・


俺もカミサンどちらからともなく出た言葉に、少女が走って抱きついて来る。


「おとうさん・・・おかあさん・・・」と泣きながら抱き着く娘を胸に、ほっとしすぎて涙が止まらない俺ら3人・・・


子供達ごめんね・・・


もう少しこのままでいさせてくれよ・・・


今度は俺が泣き止むまでな・・・

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