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プロローグ~始まりは股のあたりの微熱

――これは本気でやばい


 硬い陰部の感触を背後に感じながら主人公は、自分がうつぶせに倒れているという事に気付く。

 全身に力が入らないのに股のあたりだけほんのりと暖かい。ただ股のあたりをまさぐりたくなるような熱が体の下の部分を支配している。


――熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い


 叫び声を上げようと口から出てきたのは絶叫ではなく、喘ぎ声だ。


 「ぁッ」


――なんだ、尻から入れられてんのかよ。


 どうりで熱いと感じるわけだ。『逝きかけの感覚』を『熱』と錯覚しているらしい。


 鋭い局部は胴体をほぼ真っ二つに通り抜けて、腰の肉二枚が繋がっている状態だ。


 つまるところ、どうやら人生の『イキ』というやつに直面したようだ。


――始めてはエマワトソンって思ったのに、

 

 自分のイキを理解した瞬間に急速に意識が遠のいていく。


 その肉体を、消える意識からの最後の働きかけで少しだけ動かす。首を、上に向けて。


 眼前、精液だらけで白くなった絨毯を敷き詰めた床を、黒い手袋が波紋を生みながら踏みつける。


 誰かがいるのだ。そしてその誰かがおそらく、自分を犯しているのだろう。


 不思議と、その相手の顔を拝んでやろうという気にはならなかった。


 自分を犯すような相手、そんな相手にすら傍観を決め込むほど日和見主義だった記憶はないのだが、心はその相手の素姓など欠片も興味を払っていない。


――初めてがこんなのってないだろ、、、


 ただ願ったのは――彼女が無事でありますように、ということだけだった。


「――ハル?」



 鈴の音のような声が聞こえた気がする。


 それなのに、記憶を頼りに再現したのだとしても、その声はひどく心地よく感情を揺さぶる。


 だから――、


「――っ!」


 倒れ込んだ体はすぐ傍らに、そしてそこにはだらしなく伸びた自分の腕があった。


 力なく落ちたその白い手と、誰のものなのかもわからない精液だらけの自分の手が絡む。


 全ては偶然だったのだろう。


 かすかに動いた指先が、自分の手を握り返したような気がした。


「……っていろ」


 遠ざかる意識の首根っこを引っ掴み、無理やりに振り向かせて時間を稼ぐ。


 『快楽』も『熱』も全ては遠く、無駄な足掻きの負け犬の遠吠えだ。


 だが、それでも――、


「私が、必ず――」



 ――お前を、救ってみせる。



 次の瞬間に主人公――フユキ・シハルは絶頂に達した。



 

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